飲食店DX

実は、儲かっているのは売れているメニューではありません

こんにちは、ハワードジョイマンです。

先日、関東で居酒屋を4店舗経営されているオーナーからこんな相談をいただきました。

「売上は順調に伸びているのに、毎月の利益が薄くて……。何が原因なのか、自分ではよくわからないんです」

この方、月商はしっかり上がっている。にもかかわらず、通帳の残高がなかなか増えない。そこで一緒に数字を見てみると、ある事実が浮かんできました。

一番のヒット商品——お客さんからも「看板メニュー」と言われるあの一品——が、実は原価率40%を超えていたんです。注文数は多い。でも粗利は薄い。そのメニューが売れれば売れるほど、利益が吸い取られていく構造になっていました。

「売れている=儲かっている」は思い込みです。飲食店の利益を本当に支えているのは、出数ではなく粗利の構造です。

この記事では、メニューの収益性を正しく把握するための考え方とステップを、順を追って解説します。

📋 この記事でわかること

  1. 「売れているメニュー」と「儲かっているメニュー」の違いとその見分け方
  2. メニューを4軸(出数・売上・粗利・リピート率)で評価するABC分析の手順
  3. 分析結果を使って、値上げせずに客単価を上げる具体的なアクション
  4. データを日次で動かすための仕組みの作り方

こんな方におすすめ

  • ✅ 売上は上がっているのに利益が残らないと感じている飲食店オーナーの方
  • ✅ 原価率が上がっているが、どのメニューが原因かわからない方
  • ✅ 「看板メニュー」の正しい採算を確認したことがない方
  • ✅ 値上げをせずに客単価と粗利を改善したい方
  • ✅ 多店舗展開に向けて、メニュー構成を整理したい方
実は、儲かっているのは売れているメニューではありません | 有限会社繁盛店研究所(Dinii正規代理店:モバイルオーダーシステム)

「売れているメニュー」と「儲かっているメニュー」は別物です

飲食店の経営者にとって、注文が多いメニューはどうしても「優秀な商品」に見えてしまいます。スタッフも喜んで提供するし、お客さんの反応もいい。でも、数字で確認したときに「あれ?」となるケースが非常に多い。

ざっくりした例を挙げます。

月100皿出るメニューA(販売価格1,000円・原価400円)の粗利は、1皿600円×100皿=60,000円。
月50皿しか出ないメニューB(販売価格1,200円・原価240円)の粗利は、1皿960円×50皿=48,000円。

注文数ではAがBの2倍。しかし粗利でも差は縮まります。そしてメニューBを月80皿に増やせたら、粗利は76,800円となり、Aを大きく上回る。

重要なのは「何皿出たか」ではなく「1皿あたりいくら残るか」と「それが何皿出るか」の掛け算です。これを無視したまま「売れているから大丈夫」と思い込んでいると、忙しいのに儲からないループにはまり続けます。

「私がコンサルに入るとき、必ず最初に聞くのは『再来店率は何%ですか』という質問です。次に確認するのが、売れているメニューの粗利です。多くの場合、そこに利益が消えている理由があります」

ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所)

STEP 1:メニューを「4軸」で棚卸しする

メニューの収益性を正確に把握するためには、1つの軸だけで判断しないことが大切です。私がクライアントに使っているのは、次の4軸による分析です。

メニュー分析 STEP 1

4軸(出数・売上・粗利・リピート率)でメニューを並べ直す

まず既存のメニュー全品について、以下の4つの数値を出します。

  • ① 月間出数(何皿/杯/品 出ているか)
  • ② 売上金額(出数 × 販売価格)
  • ③ 粗利金額(出数 × (販売価格 − 原価))
  • ④ そのメニューを注文したお客さんの再来店率(後述)

①②だけで判断しているお店がほとんどですが、③と④を加えることで初めて「本当に稼いでいる品目」が見えてきます。

⚠️ よくある失敗:売上金額(②)だけでランキングを作り、「うちの看板は○○だから」と思考停止になること。粗利(③)を出してみると、順位が大きく変わることが少なくありません。

メニュー分析 STEP 2

粗利でABC分類する

4軸のデータが揃ったら、粗利金額の大きい順に並べ替えます。上位20%のメニューが全体粗利の70〜80%を担っていることがほとんど。これがAランク品です。

  • Aランク:粗利上位20%。徹底して守り、磨く対象
  • Bランク:中位。育てるか、価格・原価を見直す対象
  • Cランク:粗利の低い品目。廃番・置き換え・原価改善を検討

⚠️ よくある失敗:「お客さんに人気があるから廃番にできない」と感情論で判断すること。人気(出数)と収益性(粗利)を切り分けた上で、どう扱うかを議論することが先決です。

✓ ここまでのポイント

  • 売れているメニューと儲かっているメニューは異なる。粗利ベースで見ると順位が逆転することがある
  • 分析は「出数・売上・粗利・リピート率」の4軸で行うことで初めて意思決定に使えるデータになる
  • まず粗利でABC分類し、守るべきAランク品を明確にするところから始める

STEP 2:「売れているけど儲かっていない品目」を特定し、手を打つ

分析が終わると、多くのお店で次のような品目が出てきます。

❌ よくあるパターン:出数は多いが粗利が低い「見かけの人気メニュー」

  • 注文数トップなのに原価率が高く、粗利はCランク
  • セットメニュー・飲み放題に含まれていて、単品売上には貢献していない
  • 食材ロスが出やすい品で、仕込み人件費も含めると赤字に近い

✅ 推奨アプローチ:粗利を改善するための「3つの打ち手」を選択する

  • 価格設定の見直し(値上げではなく、付加価値のある見せ方で単価アップ)
  • 原価構成の組み替え(食材仕入れ先・ロス削減・仕込みの効率化)
  • 代替品への誘導(モバイルオーダーの「おすすめ表示」でAランク品の注文を増やす)

ここで有効なのが、モバイルオーダーシステムの商品分析機能です。どの品目がどの時間帯に何皿出て、再注文された率が何%か——こうしたデータを日次で自動集計できる環境があると、経営判断のスピードが根本的に変わります。増益繁盛クラブの会員さんの中には、この分析をきっかけにメニューを絞り込んだことで、原価率を8ポイント改善した方もいます。

「モバイルオーダーを導入してから、注文点数がアップしました。スタッフがおすすめを声がけしなくても、画面上の見せ方だけで客単価が変わるのには正直驚きました」

飲食店オーナー(40代・男性)

STEP 3:「リピート率」を加えると、本当に守るべき品目が見えてくる

4軸の中で最も見落とされているのが、④のリピート率です。

あるメニューを注文したお客さんが、翌月また来店した割合。これを「メニュー別再来店率」と呼ぶことにしますが、この数値が高い品目には特別な意味があります。

つまりそのメニューが「また来たい」と思わせる理由になっているということです。粗利がBランクであっても、再来店率が高い品目は「客を呼ぶ装置」として機能しています。逆に、粗利がAランクでも再来店に寄与していない品は、割引販促の対象として使い勝手が良い程度の位置づけになります。

この軸を持つことで、「削っていい品目」と「削ってはいけない品目」の議論が感情論でなくデータに基づいたものになります。

チェックポイント①:原価率だけで管理していないか

原価率30%を維持することに注力するあまり、絶対粗利額(1皿あたり何円残るか)を見ていないケースがあります。原価率30%でも販売単価が低ければ粗利額は小さい。

✅ ポイント:原価率と粗利額の両方を並べて管理することで、値付けの最適化が可能になります。

チェックポイント②:月次集計でしか数字を確認していないか

翌月中旬に前月の原価が確定する——という運用では、問題が起きてから2週間以上後に気づくことになります。

✅ ポイント:日次で売上・出数・仕込み量を把握できる仕組みに移行することで、異常値を早期に検知できます。

チェックポイント③:店舗間でメニュー分析の粒度が揃っているか

多店舗展開しているお店で、「A店は粗利を管理しているが、B店は出数しか見ていない」という状態が続くと、店長会議の議論がかみ合いません。

✅ ポイント:分析の基準と集計フォーマットを全店統一することが、店舗間比較と底上げの前提になります。

「LINE友だちが増えてから、再来店客数を含めた来店者総数が伸びました。メニューを絞り込んで、再来店率の高い品をLINEで特集したことで、常連さんが増えていった感じです」

居酒屋経営者(50代・男性)

STEP 4:分析結果をメニューと価格に反映させる

メニュー改善 STEP 1

Aランク品の「見え方」を強化する

最も利益に貢献している品を、お客さんが自然と注文しやすい位置・表現に置き直します。モバイルオーダーであれば、おすすめバナー・写真・動画メニューを設定するだけで注文率が変わります。スタッフへの声がけ指示も合わせて整備します。

⚠️ よくある失敗:「おすすめ」を全品につける。全部がおすすめでは、どれもおすすめではありません。Aランク品3〜5品に絞ることで効果が出ます。

メニュー改善 STEP 2

Cランク品を廃番・統合・価格改定のいずれかで処理する

粗利が低く再来店にも寄与していない品目は、廃番にするか、類似品と統合するか、原価を見直して価格改定するかの3択です。一度に全品手を打つ必要はありません。月2〜3品ずつ改善していくだけで、半年後のメニュー全体の収益構造は大きく変わります。

⚠️ よくある失敗:廃番を告知せずに突然消す。常連客が「あれ、なくなったの?」と感じると来店理由を失います。「季節限定に変更」「リニューアル中」などの言い換えで印象を変える工夫を。

メニュー改善 STEP 3

改善前後のデータを比較し、PDCAを回す

改善を実施した月の翌月に、同じ4軸で再集計します。出数・粗利・再来店率がどう変化したかを確認し、次のアクションを決めます。これを月次で繰り返すことで、メニューが「利益を生む資産」へと育っていきます。

⚠️ よくある失敗:1回やって終わりにすること。メニュー分析は一度きりの作業ではなく、経営の定例業務として組み込むことが大切です。

まとめ:「何が売れているか」より「何で儲かっているか」を問い続ける

飲食店の利益改善に取り組むとき、多くの経営者は集客や値上げから入ります。でも実際には、今あるメニューの収益構造を整えるだけで、売上を変えずに手元に残る利益を増やせるケースは珍しくありません。

支援実績610件以上の現場で繰り返し見てきた事実として、「売れているメニューが利益を食っている」という構造は、業態・規模を問わず頻繁に起きています。この問題は、数字を正しく並べ直すだけで見えてきます。あとはその数字に基づいて、一歩ずつ手を打つだけです。

中小企業診断士として21年この業界に関わってきた経験から言うと、難しい理論より「自分の店の数字を一度ちゃんと見る」ことの方が、よほど経営を変えます。まずは今月の粗利ランキングを出してみることから始めてみてください。

メニューの収益性分析や、日次での利益可視化に向けたシステム活用について詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。導入の前に「今の状態で効果が見込めるかどうか」を一緒に確認するところから始めますので、ご安心ください。

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