飲食店DX

なぜ私は「売上を上げましょう」と言わないのか

こんにちは、ハワードジョイマンです。

突然ですが、少し衝撃的な数字をお伝えします。

私がこれまで相談を受けた飲食店経営者のうち、約7割が「売上は前年比でプラスなのに、通帳の残高が増えていない」という状態でした。610件を超える支援実績の中で、この問いかけに「うちは違う」と即答できたオーナーは、正直なところほとんどいません。

私はコンサルタントとして21年間、飲食店の経営に寄り添ってきましたが、クライアントに対して「売上を上げましょう」とは言いません。これは意地やこだわりではなく、実体験から学んだ、私なりの結論です。今日はその話をさせてください。

📋 この記事でわかること

  1. 「売上アップ」を目標にすると、なぜ手元にお金が残らないのか
  2. 利益が見えない経営が生む、静かな危機
  3. 「がんばらない経営」という発想の転換が、なぜ現場を救うのか
  4. 売上より先に見るべき、たった1つの数字

こんな方におすすめ

  • ✅ 売上は上がっているのに、利益が残らないと感じている方
  • ✅ 「もっと売れ」という指示に限界を感じている飲食店オーナー
  • ✅ 事業承継して数字の読み方を改めて見直したい2代目経営者
  • ✅ 多店舗展開を進めているが、各店の利益が見えにくくなっている方
  • ✅ 経営の本質的な考え方を、現場目線でつかみたい方
なぜ私は「売上を上げましょう」と言わないのか | 有限会社繁盛店研究所(Dinii正規代理店:モバイルオーダーシステム)

独立初日に感じた「売上信仰」の恐ろしさ

私が市役所を退職して独立したのは、中小企業診断士の資格を取得してから7年目のことです。独立前の6年間、昼は市役所で働きながら、夜は受験勉強、週末は無給でイタリアンレストランに修行に入るという生活を続けていました。

正直、資格さえ取れば仕事が来ると思っていました。甘かった。

独立直後は仕事がまったくなく、食欲を失って受診した医師から「体に問題はありませんが、商売はうまくいっていますか」と言われたとき、思わず帰り道で号泣しました。全財産が底をつく経験をしました。あのとき、「売上がゼロ」という現実は数字で一目瞭然でした。でも同時に、私が一番恐れていたのは、売上ゼロという事実より、「打ち手がない」という感覚だったのです。

この経験が、私の出発点です。資金繰りと集客に悩む店舗経営者の力になりたい——そう誓いながら、私はあえて「売上より利益」を軸に据えたコンサルティングを構築していきました。

売上という「大きな数字」が、本当の問題を隠す

飲食店の経営相談でよくあるパターンをお話しします。

月商が350万円から600万円近くに成長したオーナーが、「先月は過去最高でした!」と連絡してきました。ところがその翌月、「なぜか手元にお金がない」と困惑した様子で再び連絡が来ました。

調べてみると、原価率が静かに上昇していました。売れ筋メニューの仕入れ価格が上がっているのに、メニュー価格は据え置きのまま。人件費も売上に比例して膨らんでいる。売上は増えているのに、FL比率(食材費+人件費の合計が売上に占める割合)が気づけば70%を超えていたのです。

問題はもう1つありました。このオーナーが「利益が分かる」のは翌月の中旬でした。手作業の日報集計、各店からの数字の突合——これだけで2週間かかる。つまり、「先月何を間違えたか」を知るのに、常に2〜3週間のタイムラグがある状態で経営していたのです。

「売上は結果であって、目標ではない。目標は利益であり、経営者が毎日目にすべき数字は、今日の利益がどこに向かっているかという予測値です」

ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所)

✓ ここまでのポイント

  • 売上が増えても、原価率・人件費の変化が見えないと利益は消える
  • 翌月中旬まで数字が出ない経営は、打ち手がいつも後手に回る

「がんばらない経営」という言葉の、本当の意味

私が提唱している「がんばらない経営」という言葉、誤解されることがあります。「努力しなくていい」という意味では、まったくありません。

私がお伝えしたいのは、「人手不足・時間不足・広告費不足という現実を出発点にして、仕組みそのものを儲かる形に設計しましょう」ということです。

たとえば、求人を出してもホールスタッフが集まらない——これは努力の問題ではなく、地方における構造的な問題です。有効求人倍率が高い地域では、同じ求人活動をしても、大手チェーンに人材を持っていかれるだけです。

そのとき「もっと時給を上げましょう」「求人媒体を変えましょう」と言うのは簡単です。でも私はそう言いません。結論から言うと、採用を前提とせず、注文や会計をお客さまのスマートフォンに移管することでオペレーションを再設計する——この発想の転換の方が、根本的な解決に近いからです。

実際、モバイルオーダーを導入したオーナーからこんな声をいただいています。

「モバイルオーダーの導入により、注文点数がアップしました。スタッフが注文取りに追われなくなった分、お客さまとの会話が増えて、結果として客単価も上がっています」

居酒屋オーナー(40代・男性)

接客業なのに、伝票を書く時間の方が長い——これは本末転倒です。仕組みを変えることで、スタッフは本来の接客に集中できるようになります。

私が必ず最初に聞く、たった1つの質問

初めてお会いするオーナーに、私は必ずこう聞きます。

「再来店率は何%ですか?」

ほとんどの方が、即答できません。それ自体が一つの答えです。

グルメポータルに毎月数万円を払って新規客を集め続けているのに、2回目に来たかどうかを測定していない——これは、底が抜けたバケツに水を注いでいるようなものです。新規集客のコストは、リピーターを育てるコストの数倍かかるのが一般的です。

売上を「上げる」前に、まず「漏れを止める」。来店したお客さまを会員化し、再来店率をKPIに置く。この順序を変えるだけで、経営の景色はまったく違って見えてきます。

チェックポイント①:利益の可視化タイミング

あなたの店は、今月の利益をいつ把握できますか?翌月10日以降という場合は、打ち手が常に後手に回っています。

✅ ポイント:POS・原価・勤怠データを一元化し、日次で利益の方向性を把握できる体制を目指しましょう。

チェックポイント②:再来店率の計測

新規客と再来店客の比率を、今すぐ答えられますか?答えられない場合、販促のPDCAは回っていません。

✅ ポイント:来店を会員化する仕組みを作り、再来店率を月次で追うKPI設計を行いましょう。

チェックポイント③:FL比率の現状

食材費と人件費の合計が、売上の何%を占めているか把握していますか?

✅ ポイント:FL比率が60%を超えている場合、メニュー構成か人員配置、あるいはその両方に見直しが必要です。

「効果が見込めない店には、システムの導入を勧めません。ツールを売るのではなく、仕組みを売る——これが私のスタンスです。だからこそ、導入前に必ず現状の数字を確認します」

ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所)

まとめ:「売上より利益」を軸にした経営へ

増益繁盛クラブの会員さんの中には、月商300万円規模から年商2億5,000万円規模へと成長した方がいます。その方が最初に変えたのは、売上の目標ではなく、「何を見て経営するか」という軸でした。

私が「売上を上げましょう」と言わない理由は、売上が悪いと思っていないからではありません。売上は、正しい仕組みの結果として自然についてくるものだと考えているからです。まず利益の構造を直し、リピーターを育て、オペレーションを人に依存しない形にする——この順序で動いたとき、売上は「追いかけなくても伸びるもの」に変わっていきます。

支援実績610件以上、業界経験21年。静岡県清水区から全国の飲食店経営者に伴走し続けてきた私が、今もっとも力を入れているのが、この「利益から逆算する経営」への転換支援です。

もし今、「売上は悪くないのに手元にお金が残らない」という感覚があるなら、一度現状の数字を一緒に整理させてください。難しいことは何も言いません。まず現状を正直に見るところから始めましょう。

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