こんにちは、ハワードジョイマンです。
先日、静岡を拠点に5店舗を展開されている居酒屋チェーンのオーナーさんから、こんな相談をいただきました。
「売上は去年より良いんです。でも、月末に通帳を見るたびにため息が出る。何がいけないのか、正直さっぱりわからなくて……」
この言葉、聞いたことがある方、多いんじゃないでしょうか。売上が伸びているのに利益が残らない。飲食店経営者が抱える悩みの中でも、特に根が深いものの一つです。
今回は、そのオーナーさんと一緒に「原価管理の自動化」に取り組んだ約3ヶ月の記録を、一日の流れに沿って紹介してみます。導入前の現実と、導入後に何が変わったか。包み隠さずお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 原価管理が属人化・手作業のままだと何が起きるか(導入前の実態)
- 自動化導入後、一日の業務フローがどう変わったか
- 原価率悪化の「真犯人」をデータで特定する方法
- 省力化で生まれた時間を、どう経営改善に使うか
こんな方におすすめ
- ✅ 売上は前年比プラスなのに、利益が手元に残らないと感じている方
- ✅ 原価率が上がっている気がするが、どのメニューが原因か特定できていない方
- ✅ 月次の数字が出るのが翌月中旬以降で、打ち手がいつも後手に回っている方
- ✅ 過去にITツールを導入したが、定着せず解約した経験がある方
- ✅ 多店舗展開を進めたいが、店ごとに数字の精度がバラバラで困っている方

導入前の「ある一日」——数字は全部、翌月にわかる
そのオーナーさん、Kさん(40代・男性)の導入前の一日を再現してみます。
朝9時。Kさんはエクセルを開いて、昨日各店から届いた日報メールを転記作業からスタートします。5店舗分の売上・人件費・仕入れ額をひとつひとつコピペ。この作業だけで1時間近くかかります。
「このエクセル、もう7年使ってるんですよ」とKさん。「誰も触れないから、ずっと私がやるしかなくて」
仕入れの原価は、月末に届く請求書を見てはじめて確定します。つまり「今月の原価率が何%か」が判明するのは、翌月の10日〜15日ごろ。何かまずいことが起きていても、気づくのは1ヶ月半後です。
昼の会議では店長たちと数字の話をしますが、根拠となるデータが手元にないまま「もっと原価を意識して」「ロスを減らして」という言葉が飛び交います。店長たちも何を改善すればいいかわからず、会議の空気が重い。
夜、Kさんは売上報告のLINEを眺めながら、「今日は良かったのかな……」とつぶやきます。でも利益が良かったかどうかは、翌月までわかりません。
チェックポイント1:原価の確定タイミングを確認する
あなたの店では、今月の原価率が「いつ」確定しますか?もし答えが「翌月中旬以降」なら、経営の意思決定は常に遅れています。
✅ ポイント:仕入れデータとPOSデータを同じ基盤に乗せることで、日次・週次での原価概算が可能になります。まず「リアルタイムで見られる数字」を一つでも増やすことが出発点です。
チェックポイント2:「売れ筋=儲け筋」になっていないか
Kさんの店では、看板メニューの「特製唐揚げ」が月間出数1位でした。しかし商品別の粗利を計算してみると、実は粗利率が最下位グループに入っていました。仕入れコストが上がっていたにもかかわらず、価格は3年間据え置きのままだったのです。
✅ ポイント:出数・売上・粗利・リピート率の4軸でメニューを評価するABC分析を回すことで、「一番売れているのに一番足を引っ張っているメニュー」が浮き彫りになります。
✓ ここまでのポイント
- 原価の確定が翌月中旬以降では、問題が起きてから1ヶ月半後に気づく構造になっている
- 「売れ筋=儲け筋」ではない。商品別粗利を見ていないと、稼いでいるつもりで損している可能性がある
- 手作業のデータ転記は、経営者の時間を奪いながら精度も低いという二重のロスを生む
導入後の「ある一日」——朝10分で全店の利益が見える
ダイニーの経営管理機能と原価管理の自動集計を導入してから、Kさんの朝は変わりました。
朝9時。スマートフォンを開くと、昨日の全店売上・推定原価・FLコストが一画面に並んでいます。エクセルへの転記作業はゼロ。確認にかかる時間は10分もありません。
「最初は信じられなかったですよ。本当にこれだけで終わるの?って」
仕入れデータはPOSと連携しているため、商品別の原価が自動で更新されます。週次で「原価率が上がっているメニュー」にアラートが立つ設定にしたことで、問題をその週のうちに検知できるようになりました。
昼の店長会議も変わりました。画面には各店のQSCスコアと商品別粗利ランキングが映し出されています。「A店とB店でなぜ原価率が3%違うのか」を、感覚論ではなくデータで話し合えるようになったのです。
「データがないと、経営会議は精神論になる。『もっと頑張れ』しか言えなくなる。それは経営者と店長、両方を消耗させます。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士/有限会社繁盛店研究所)
導入 STEP 1
システム棚卸しと現状の原価管理フローの整理
まず既存のPOS・仕入れ管理・勤怠システムを一覧化し、どのデータがどこに散らばっているかを把握します。Kさんの場合、POSは旧型のレジ、仕入れはExcel、勤怠は別サービスと3点バラバラでした。統合できる領域を特定することが第一歩です。
⚠️ よくある失敗:「既存システムを活かしたい」という気持ちから移行を先延ばしにし、中途半端な二重管理状態が続いてしまうケース。移行コストより、二重管理による機会損失の方が大きいことがほとんどです。
導入 STEP 2
メニュー別原価の初期設定と自動更新ルールの構築
全メニューの仕入れ原価をシステムに登録し、仕入れ価格が変わったときに自動で原価率が更新される仕組みを作ります。ここが一番手間のかかる作業ですが、私たちが設定代行として入るため、現場のオペレーションを止めずに進められます。
⚠️ よくある失敗:登録作業を現場スタッフに任せ、入力が不完全なまま「なんとなく動いている」状態になるケース。初期設定の精度が、その後のデータ品質を決めます。
導入 STEP 3
日次アラート設定と店長会議フォーマットの刷新
原価率が設定値を超えた際に通知が飛ぶアラートを設定し、週次・月次の店長会議で使うダッシュボードのフォーマットを作り直します。「見るべき数字」を絞り込むことで、会議の質が変わります。
⚠️ よくある失敗:データが増えすぎて「どこを見ればいいかわからない」状態になり、結局誰も画面を見なくなるケース。KPIは最初の3ヶ月で5つ以内に絞ることを推奨しています。
「売れ筋の罠」——データが暴いた意外な真実
導入から6週間後。商品別のABC分析を走らせた結果、Kさんのお店でいくつかのことが判明しました。
❌ 導入前の認識(よくあるパターン)
- 看板メニューの唐揚げが売上1位 → 店の稼ぎ頭だと思い込んでいた
- ドリンクは単価が低いから利益への貢献は小さいと思っていた
- 季節限定メニューは「話題づくり」程度の扱いだった
✅ データが示した実態(推奨アプローチ)
- 唐揚げは出数1位だが粗利率は最下位グループ。価格改定か、仕入れ先の見直しが必要
- ハイボールは粗利率68%。追加注文率を上げるだけで月次利益に直結すると判明
- 季節限定の煮込み料理が「リピート率」で1位。この一品が常連客の来店動機になっていた
Kさんはこの分析結果を見て、しばらく黙っていました。「7年間、ずっと唐揚げを守ってきたんですよ。でもデータを見たら、唐揚げに守られていたわけじゃなかった……」
結論から言うと、「数字が見えると、動ける」。これが原価管理自動化の本質的な価値です。
「モバイルオーダーを入れてから、注文点数が明らかに増えました。お客さんが自分のペースで追加注文するようになって、ハイボールやサイドメニューがすごく出るようになったんです」
居酒屋チェーンオーナー(40代・男性)
この方の場合、モバイルオーダーへの切り替えによって追加注文のハードルが下がり、粗利率の高いドリンクとサイドメニューの注文点数が伸びました。原価管理の可視化と、注文動線の改善は、セットで考えると効果が大きくなります。
導入から3ヶ月後——Kさんの「朝」が変わった本当の理由
支援実績610件以上の飲食店に関わってきた中で、原価管理の自動化が成功した店に共通するのは、「ツールを入れたから変わった」のではなく、「数字を見る習慣ができたから変わった」という点です。
Kさんの場合、業界経験21年の視点から見ても、変化のスピードは印象的でした。導入から90日で、月次の原価確定タイミングが「翌月中旬」から「翌営業日」に短縮。FLコストの把握精度が上がり、採算割れしていた1店舗のメニュー構成を大幅に見直すことができました。
「朝が変わったんです」とKさんは言います。「以前は通帳を見るのが怖かった。今は数字を見るのが楽しい。何をすれば良くなるか、ちゃんとわかるから」
この変化は、システムが生み出したものでも、コンサルタントが生み出したものでもありません。Kさん自身が「自分の店の数字を読めるオーナー」になったことで生まれた変化です。
まとめ——「見えない原価」は、経営の最大のリスク
原価管理の自動化は、「便利になる話」ではありません。「経営の判断を、1ヶ月半遅らせる構造から抜け出す話」です。
売上が良くても利益が残らない。原価率が上がっているのに原因がわからない。この状態が続く限り、どれだけ頑張っても「後手の経営」から抜け出せません。
増益繁盛クラブの会員さんの中には、原価管理の仕組みを整えたことで「月商300万円規模から年商2億5,000万円規模」へと成長された方もいます。最初の一歩は、今の数字の流れを「見える形にする」ことでした。
もし「自分の店の原価管理、実際どうなっているんだろう」と気になった方は、まず現状を一緒に整理するところから始めましょう。押し売りは一切しませんので、気軽にご連絡ください。
原価管理の自動化やモバイルオーダー活用の全体像を、まず無料で学んでみたい方はこちらをどうぞ。事例や具体的な活用法をまとめた資料をお届けしています。