こんにちは、ハワードジョイマンです。
結論から言うと、最低賃金が上がっても値上げできない店が利益を守るには、「価格を上げる」以外の3つのルートで原資を作るしかありません。それは、①客単価を上げる、②人件費の構造を変える、③原価の漏れを塞ぐ——この3つです。
「値上げしたら客が離れる」という不安は、業界全体が抱えている本物の悩みです。でも、何もしないでいると、売上は横ばいなのに手元に残るお金がじわじわ減っていく。そのジリ貧から抜け出すための考え方と具体的な行動を、この記事では順番に整理してお伝えします。
厚生労働省の発表によると、2024年度の全国加重平均最低賃金は1,055円となり、前年度比で51円の引き上げとなりました。パートやアルバイトを多く雇う飲食店にとっては、この数字は決して小さくありません。
📋 この記事でわかること
- なぜ価格転嫁だけに頼ると危険なのか
- 値上げせずに客単価を上げる具体的な方法
- 人件費の「総額」ではなく「構造」を見直す考え方
- 原価の漏れを数字で特定する手順
こんな方におすすめ
- ✅ 最低賃金の上昇で人件費負担が増えている飲食店経営者の方
- ✅ 値上げに踏み切れず、利益が目減りしていると感じている方
- ✅ 売上は落ちていないのに、通帳の残高が増えない状況が続いている方
- ✅ コスト削減と利益改善を、現場を混乱させずに進めたい方
- ✅ 人手不足と賃金上昇の二重苦に直面している多店舗経営者の方

なぜ「値上げだけ」では解決しないのか
最低賃金が上がるたびに「価格転嫁を」という声が業界団体からも聞こえてきます。正論です。でも、現場のオーナーさんに話を聞くと、「分かってはいるけど、うちの商圏では難しい」という声が圧倒的に多い。
その理由は大きく2つあります。
ひとつは、競合との価格比較が即座にできてしまう時代になったこと。グルメサイトやSNSで近隣の同業他店の価格がすぐ分かる。先に値上げした店が「割高」に見えてしまうリスクがある。
もうひとつは、値上げの効果より、来客数が減ったときのダメージを過剰に恐れていること。「1割値上げしたら2割お客が減った」という経験談が口コミで広がると、なかなか踏み切れなくなります。
だからこそ、値上げ以外の打ち手を持っておくことが必要なんです。
「価格を上げる前に確認してほしいのは、今の仕組みで取れるはずの売上をちゃんと取れているか、という点です。多くの店は、値上げしなくても改善できる余地がまだ残っています」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所)
打ち手①:値上げせずに客単価を上げる
客単価を上げる手段は、価格改定だけではありません。1組あたりの注文点数を増やすことでも、同じ効果が得られます。
たとえば、来店した10組に対して1品ずつ追加注文が発生するだけで、月間の売上は大きく変わります。問題は、その「もう1品」を引き出す仕組みがあるかどうかです。
よくあるのは、スタッフが忙しくて追加提案の声かけができないパターン。「おすすめはありますか」と聞かれれば答えられるけど、こちらから提案する余裕がない。これは、スタッフの意識の問題ではなく、オペレーションの問題です。
❌ よくあるパターン(仕組みがない状態)
- 追加注文の声かけはスタッフの個人判断に委ねている
- 繁忙時間帯はテーブルを回る余裕がなく、そのまま会計になる
- おすすめメニューが口頭だけで伝えられ、写真や説明がない
✅ 仕組みがある状態(推奨アプローチ)
- モバイルオーダーのトップ画面に「今夜のおすすめ」を自動表示する
- 注文時にオプション・追加メニューが自動で提案される設計にする
- お客さまが自分のペースで追加注文できるので、スタッフを介さず単価が上がる
増益繁盛クラブの会員さんの中には、モバイルオーダーを導入したことで注文点数が上がり、スタッフの手を借りずに客単価が改善したというケースが複数あります。価格は一切変えていません。
「モバイルオーダーの導入により、注文点数がアップしました。値段を変えていないのに、売上が伸びたのは正直驚きでした」
居酒屋オーナー(40代・男性)
打ち手②:人件費の「総額」ではなく「構造」を変える
「人件費を下げる」と聞くと、「シフトを削る」「時給を据え置く」という発想になりがちです。でも、それは最低賃金上昇の時代には逆効果になることがある。時給を抑えればスタッフが来なくなる。シフトを削れば回らなくなる。
見直すべきは総額ではなく、「何に人件費を使っているか」という構造です。
チェックポイント1:オーダーテイクにかかっている時間を計測しているか
ホールスタッフの業務を分解すると、注文を取る・料理を運ぶ・片付ける・会計する、に大別されます。このうち「注文を取る」という業務は、実はお客さまのスマートフォンに移管できます。スタッフがいなくても注文が入る状態をつくれば、1名分の業務をシステムが代替してくれます。
✅ ポイント:ホール1名分の時給×月間稼働時間を試算し、その金額をシステム費用と比較してみてください。多くの場合、差し引きでコストが下がります。
チェックポイント2:欠員が出たまま募集を続けていないか
「ホールが1名足りない状態が3ヶ月続いている」というケースは珍しくありません。その間、既存スタッフに負荷がかかり、疲弊して辞めていく——という悪循環に入ることがあります。採用を前提にしたオペレーション設計そのものを見直す必要があります。
✅ ポイント:「採れたら回せる」ではなく「今の人数で回せる仕組み」を先に作ることが、人件費構造を変える第一歩です。
✓ ここまでのポイント
- 値上げせずに客単価を上げる手段として、注文の仕組みを変えることが有効
- 人件費削減は「カット」ではなく「業務の移管」で考える
- 欠員補充の前に「今の人数で回せるか」を先に設計する
打ち手③:原価の「漏れ」を数字で特定する
人件費と並んで利益を圧迫しているのが、原価率の悪化です。「原価が上がっている気がするけど、どのメニューが原因か分からない」という状態は、実は非常に多くの飲食店で起きています。
原価率を「全体の平均」だけで見ていると、問題のあるメニューが埋もれてしまいます。売れているメニューが実は粗利が薄い——ということが平気で起きているんです。
チェックポイント3:「売れ筋」と「儲け筋」を区別できているか
注文数が多いメニューが、必ずしも利益に貢献しているとは限りません。食材原価が高く、手間もかかるメニューが人気商品になっていると、売れれば売れるほど原価率が上がる構造になります。
✅ ポイント:「出数・売上・粗利・リピート率」の4軸でメニューを評価するABC分析を取り入れると、どのメニューを推すべきかが数字で見えてきます。
チェックポイント4:原価のデータが出るのはいつか
多くの店では、原価が確定するのは翌月中旬以降です。その時点で「先月原価率が上がっていた」と分かっても、もう打ち手が打てない。日次または週次で原価をモニタリングできる体制を作ることが、利益を守る上で重要です。
✅ ポイント:POSと原価管理が別システムで動いている場合は、データの統合から始めることをおすすめします。
「モバイルオーダーを導入してLINE友だちが増えたことで、再来店客数も含めた来店者総数が伸びました。売上だけでなく、お客さまとの関係が変わった感覚があります」
ダイニング経営者(50代・男性)
3つの打ち手を「同時に動かす」ために必要なこと
ここまでお伝えした3つの打ち手——客単価向上、人件費構造の変革、原価の見える化——は、バラバラに取り組むより、同時並行で動かした方が効果が出やすいです。
ただ、「全部やろう」と思うと何から手をつければいいか分からなくなる。そのため、まず自分の店がどの課題の優先度が高いかを診断することが、最初のステップになります。
導入 STEP 1
現状の利益構造を把握する
FL比率(食材費+人件費÷売上)を計算し、どちらが利益を圧迫しているかを確認します。食材費が高いのか、人件費が高いのか、それとも両方なのか。問題の所在を特定することが出発点です。
⚠️ よくある失敗:「なんとなく原価が高い気がする」という感覚だけで動き始め、対策の方向が間違っていることがあります。まず数字で確認することが重要です。
導入 STEP 2
改善インパクトが大きい打ち手から着手する
たとえば原価の漏れが主な問題であれば、メニュー構成の見直しから。人件費構造が問題であれば、オペレーション設計の変更から入ります。優先順位を決めることで、エネルギーが分散せず成果が出やすくなります。
⚠️ よくある失敗:話題のシステムやツールを先に導入してしまい、自店の課題に合っていない機能にお金と時間を使ってしまうケースがあります。
導入 STEP 3
データで検証しながら継続する
打ち手を実行したあとは、客単価・FL比率・再来店率などの数字が動いているかを週次で確認します。感覚ではなく数字で判断することで、次の一手が明確になります。
⚠️ よくある失敗:「やってみたけど効果が分からなかった」という状態は、測定する仕組みがないまま実行した場合に起きやすいです。
まとめ:コストが上がる時代に、利益を守るための思考の順番
最低賃金の上昇は、これからも続く構造的な変化です。「いつか落ち着くだろう」と待っていると、毎年少しずつ利益が削られていきます。
でも、値上げだけが選択肢ではありません。客単価を仕組みで上げる、人件費の使い方を変える、原価の漏れを数字で特定する——この3つを組み合わせることで、価格を変えずに利益の構造を改善することは十分に可能です。
私はこれまで21年間・飲食店610件以上のご支援をしてきましたが、値上げ前に「仕組みで取れるはずの利益が取れているか」を確認するだけで、改善の余地が見つかるケースが非常に多いです。
もし「自分の店はどこから手をつければいいか分からない」という状態であれば、まず現状の利益構造を一緒に確認するところから始めましょう。どの打ち手が最も効果的かは、店舗の規模・業態・現在のシステム環境によって異なります。
モバイルオーダーの活用方法や、利益構造の見直しについて詳しく知りたい方は、以下からお気軽にご確認ください。
具体的な導入のご相談や、自店の状況を踏まえたアドバイスをご希望の方は、こちらからどうぞ。お待ちしております。