こんにちは、ハワードジョイマンです。
「うちの客層、高齢者が多いんですよ。スマホで注文なんて、絶対無理です」
モバイルオーダーの話をすると、このひと言が返ってくることが多い。実際、60代以上が主な来店客層という飲食店は、国内の地域密着型店舗の実に4割超に上ると言われています。地方ほどその傾向は強い。
だから今日は、「うちには向かない」と最初は断言していたオーナーが導入を決め、その後どうなったのかを正直に書きます。良かったことも、想定外だったことも、両方。
こんな方におすすめ
- ✅ 常連客の年齢層が高く、デジタル対応に踏み切れない方
- ✅ モバイルオーダー導入を検討しているが「うちには合わない」と感じている方
- ✅ スタッフの人手不足が慢性化している地方の飲食店経営者の方
- ✅ ITツールを過去に導入したが現場に定着しなかった経験がある方
- ✅ 高齢客に配慮しながら客単価を上げたいと考えている方
📋 この記事でわかること
- 高齢客層が多い店でモバイルオーダーが「使えるか否か」の判断基準
- 導入後に現場で起きた、予想と違う出来事の具体的な中身
- スタッフが感じた変化と、数字に表れた成果
- 「うちには向かない」という思い込みを外すための視点

「デジタルアレルギー」の常連さんが、最初に言ったこと
舞台は静岡県内の某地域で25年続く大衆居酒屋。昼は定食、夜は一品料理と酒を楽しむ地元密着型の店です。常連客の中心は60〜70代。オーナーは2代目で、お父さんから店を引き継いだ40代の男性。
「うちのお客さん、スマホ持ってない人もいますよ」という言葉から始まったこの案件、僕は最初に「ではまず客層の実態を確認しましょう」と提案しました。
実際に1週間、スタッフに来店時の年齢帯をカウントしてもらったところ、60代以上が58%、40〜50代が30%、30代以下が12%という結果でした。オーナーの感覚は正しかった。
ただ、ここで重要なのは「スマホを持っているかどうか」よりも「誰がオーダーを取る必要があるか」という問いです。
この店のホールは当時、60代のベテランパートさん1名と20代のアルバイト1名の2人体制。繁忙時間帯は明らかに人が足りていない。テーブルからの呼び出しに気づけず、常連さんから「最近、注文通りにくいね」と言われ始めていた。
「高齢のお客さまが多い店こそ、スタッフに余白が必要なんです。呼び出しに気づかない、注文を聞き違える——それが続くと、常連さんは静かに来なくなります。スマホで注文できるかどうかの問題ではなく、スタッフが接客に集中できる環境を作れているかどうかの問題です」
ハワードジョイマン(中小企業診断士 / 経営コンサルタント)
導入の前に決めた「3つの大前提」
このオーナーと合意したのは、以下の3点でした。
チェックポイント①:モバイルオーダーをすべての客に強制しない
高齢客に対して「スマホで注文してください」と一方的に変えるのは、むしろ関係を壊します。従来の口頭注文・手書き伝票も残したまま、「使えるお客さまには使っていただく」という並行運用からスタート。
✅ ポイント:二択でなく、「使う人が使える設計」が定着の鍵です。
チェックポイント②:スタッフが「助かる」と感じる使い方から始める
導入の目的を「客の利便性向上」ではなく「スタッフの負荷軽減」に設定しました。これにより、現場の受け入れが格段に変わります。スタッフが拒否感を持ったまま導入しても、定着しない。これは過去に何度も見てきた失敗パターンです。
✅ ポイント:現場スタッフの「これ便利だな」という体験が、接客での自然な案内につながります。
チェックポイント③:60日間は数字を追わず、現場観察を優先する
「入れたら翌月から結果を出す」という期待は、現場を焦らせます。最初の2ヶ月は定着と習慣化に専念し、数字の評価は3ヶ月目以降に設定しました。
✅ ポイント:焦りが現場の雰囲気を硬化させます。「自然に使われるまで待つ」設計が重要です。
✓ ここまでのポイント
- 高齢客層の多い店でも、「全員に強制しない並行運用」でモバイルオーダーは導入できる
- 導入の成否は客層ではなく、スタッフが受け入れる設計になっているかで決まる
- 最初の60日間は定着を最優先にし、数字の評価は3ヶ月目以降に設定することが現実的
3ヶ月後、スタッフが口にした「まさかの一言」
60代のベテランパートさん——仮にAさんとします——は、導入当初こそ「私には難しい」と距離を置いていました。タブレット操作に不慣れで、最初の1週間は僕も現場に入って隣でサポートしました。
ところが2ヶ月が経った頃、Aさんが自分からこう言ったんです。
「最近、お客さんと話す時間が増えました」
これが一番の変化でした。注文を取る、厨房に通す、確認に行く——その往復から解放された分、常連さんのそばにいられる時間が増えた。Aさんが常連さんの「今日は足が痛くてね」という話を受け止め、「それならこっちの席の方が楽ですよ」と誘導できるようになった。
これは数字には出にくい変化ですが、常連さんの「また来たい」に直接つながる部分です。
「モバイルオーダーを導入すると客単価がアップしました。常連のお客さまが、以前は頼まなかったデザートを注文してくれるようになったんです」
40代・居酒屋オーナー(静岡県内)
数字で見えた「想定外」の2つの事実
3ヶ月後に出てきた数字を見て、オーナーが「これは思っていなかった」と言ったのが2点ありました。
❌ 想定していたこと(よくある思い込み)
- 高齢客はモバイルオーダーを使わないので、利用率は低く終わるだろう
- 客単価への影響は限定的だろう
✅ 実際に起きたこと
- モバイルオーダーの利用率は来店客全体の約42%に達した(40〜50代が積極的に使用)
- 追加オーダー数が1テーブルあたり平均0.8品増え、客単価が月次で比較して約12%上昇
高齢の常連さんはほとんどが口頭注文を継続しました。ただ、そのぶんスタッフに余裕ができたことで、「もう一品いかがですか」という声かけが自然に増えた。これが客単価に効いていました。
つまり、モバイルオーダーが高齢客に使われたから単価が上がったわけではなく、スタッフに時間と心の余裕が生まれたことで接客の質が上がり、それが数字になったんです。
増益繁盛クラブの会員さんの中には、「導入後にLINE友だちが増えて、再来店客数も含めた来店者総数が伸びた」という方もいらっしゃいます。CRMとの連携が機能し始めると、常連化のスピードが変わってきます。
「やっぱり向かなかった」という本音も含めて
ここまで読んで、「成功例だけ紹介しているんでしょ」と思った方もいるかもしれません。正直に言います。
この店で、想定どおりいかなかったこともありました。
常連客の中に、スマホをテーブルに出すことそのものへの抵抗感が強い方が数名いらっしゃいました。「食事中にスマホを使わせるのか」という感覚です。このような方には、Aさんが従来どおり丁寧に口頭で注文を取りました。それでいいと思っています。
また、最初の1ヶ月はスタッフ間でオペレーションの共有が不十分で、モバイルと口頭が混在した際の厨房への通し方が混乱しました。これは設計の問題で、2週目に運用フローを修正して解決しました。
ダイニーを導入するときは、僕が初期設定を代行して、90日間の伴走サポートを前提にしています。「入れっぱなし」にしないのはそのためです。現場で起きる小さな混乱を、早い段階でつぶしておくことが定着率に直結します。
まとめ:「客層」より「スタッフの余白」を先に考える
結論から言うと、高齢客が多い店でもモバイルオーダーは機能します。ただし「全員に使ってもらう」ことを目標にすれば失敗します。
大切なのは、スタッフに「接客に集中できる余白」を作ること。その余白が、常連さんとの会話を生み、追加注文を生み、「また来ようかな」という気持ちを育てます。
モバイルオーダーはあくまで道具です。道具の使い方を設計するのは人間で、その設計が合っていれば、客層がどうであれ成果は出ます。
「うちはどうだろう」と思った方は、まず現状を一度整理してみてください。スタッフが伝票に使っている時間、呼び出しに対応できていない頻度、追加注文の声かけができている割合——そのあたりを棚卸しするだけで、何かが見えてくると思います。
もし一緒に考えたいという方は、お気軽にご連絡ください。
Dinii導入相談・問合せはこちらから
どんな客層の店に合うか、どんな使い方から始めるべきかを一緒に確認したい方はこちらもどうぞ。無料でお読みいただけます。
モバイルオーダーシステム活用法はこちら(無料)
支援実績610件以上、業界経験21年の現場感覚をもとに、あなたの店に合った形を一緒に考えます。お待ちしております。