飲食店DX

人件費率を予算内に収める4つのポイント

こんにちは、ハワードジョイマンです。

突然ですが、ひとつ数字をお伝えします。

厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、飲食サービス業の離職率は28.0%と全産業平均(15.4%)の約1.8倍です。つまり、飲食店では平均して3〜4年で従業員の大半が入れ替わっているという計算になります。

これを聞いて、「うちはもっとひどい」と感じたオーナーさんも少なくないはずです。採用コストと研修コストが積み上がり、時給を上げるたびに人件費率が予算を超える——この悪循環にはまっている飲食店は、全国に無数にあります。

でも、結論から言うと、人件費率が膨らむ本当の原因は「時給の水準」ではありません。今回の記事では、その本質と、人件費率を予算内に収めるための4つのポイントを具体的にお伝えします。

こんな方におすすめ

  • ✅ 時給を上げてもスタッフが定着せず、採用コストがかさんでいる方
  • ✅ 人件費率が予算の30〜35%を慢性的にオーバーしている方
  • ✅ 育てたスタッフが1〜2年で辞めていく状況が続いている方
  • ✅ 「辞めないチーム」を作りたいと本気で考えている飲食店経営者の方
  • ✅ 人手不足でも売上・利益を維持する仕組みを探している方

📋 この記事でわかること

  1. 人件費率が予算を超える「本当の原因」——時給ではなく離職コストにある理由
  2. 時給を上げても辞めるスタッフ問題の構造と、感情的報酬の重要性
  3. 人件費率を適正化しながらスタッフ定着率を高める4つの実践ポイント
  4. モバイルオーダー導入で人件費と客単価を同時に改善した事例
人件費率を予算内に収める4つのポイント | 有限会社繁盛店研究所(Dinii正規代理店:モバイルオーダーシステム)

人件費率が予算を超える「本当の原因」は離職コストにある

多くの飲食店経営者の方が「時給を上げたから人件費率が悪化した」と感じています。確かに時給の上昇は人件費率に直接影響します。しかしもう一つ、見落とされがちなコストがあります。それが「離職コスト」です。

求人広告費・面接にかける時間・採用後の研修期間・その間の生産性低下——これらを積み上げると、アルバイト1人を採用して戦力化するまでに30〜50万円前後のコストがかかるとも言われます(中小企業庁「2023年版中小企業白書」より飲食・サービス業の採用コスト関連データを参照)。

年間で3〜4人入れ替わる10名体制の店なら、それだけで90〜200万円規模のコストが毎年消えている計算です。これは月次のP/Lには「広告費」「研修費」として分散して計上されるため、経営者が気づきにくい。

つまり、人件費率を予算内に収めたいなら、「時給をどう設定するか」よりも「どうすれば辞めずに働き続けてくれるか」を先に解決しなければなりません。

チェックポイント①:採用・離職コストを正確に把握しているか

求人広告費だけでなく、面接対応・教育研修・OJT期間中の生産性低下も含めた「1人あたりの採用コスト」を計算してみてください。

✅ ポイント:離職コストを「見えないコスト」のまま放置しない。月次の利益計算に組み込んで可視化することが第一歩です。

チェックポイント②:年間の離職人数と離職理由を記録しているか

「なんとなく辞めていく」ではなく、誰がいつ・どんな理由で辞めたかをデータとして残しておくことが、改善の出発点になります。

✅ ポイント:退職面談を形式化し、「賃金・労働時間・人間関係・やりがいの欠如」のどれが主因かを分類する習慣をつけましょう。

✓ ここまでのポイント

  • 飲食業の離職率は全産業平均の約1.8倍(厚生労働省調査)。採用コストが人件費率を圧迫している
  • アルバイト1名の採用〜戦力化には30〜50万円前後のコストがかかる
  • 人件費率改善の本質は「時給設定」ではなく「定着率向上」にある

時給を上げても辞める理由——「報われている実感」の正体

増益繁盛クラブの会員さんの中には、時給を地域の相場より15〜20%高く設定しているのに、入って6ヶ月以内に辞めていくスタッフが後を絶たないというオーナーさんが何人もいます。

私がそういった方に必ず聞くのは、「スタッフは、自分が感謝されていると感じていますか?」という質問です。

賃金は「最低限の条件を満たす要素」(ハーズバーグの衛生要因)です。これが低ければ不満になりますが、高くしても「満足」には直結しません。人が仕事にやりがいを感じるのは、「自分の行動がお客さまや仲間の役に立った」という実感があるときです。

ホールスタッフが懸命に接客しても、そのお客さまが「美味しかったよ、ありがとう」と言ってくれる声が、当の本人に届いていなければ意味がありません。お客さまの感謝が「店長の報告」という形で翌日以降に伝わるのでは、感動が薄れてしまいます。

「時給を上げることは、スタッフを引き止める理由にはなりません。でも、お客さまから名指しで感謝された翌日は、誰でも笑顔で出勤してきます。私はそれを、独立してから21年間、現場で見てきました。」

ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所)

人件費率を予算内に収める4つのポイント

人件費改善 STEP 1

「離職コスト」を月次数字に組み込み、経営判断の材料にする

まず、採用広告費・研修にかかる時間・OJT期間中の生産性低下を試算して、「1名離職すると月の利益がいくら減るか」を数字で持ちましょう。この数字があると、時給を少し上げてでも定着させる判断の根拠になります。

⚠️ よくある失敗:求人広告費だけを「採用コスト」と考え、教育・機会損失のコストを計算せずに「採用の方が安い」と判断してしまう。

人件費改善 STEP 2

お客さまの「ありがとう」を、名指しで本人に届ける仕組みを作る

モバイルオーダーやQRコードアンケートを使って、来店後のフィードバックをスタッフ名単位で収集する。「田中さんの説明がわかりやすかった」「鈴木さんの笑顔が良かった」という声が、当日中に本人に届く環境を作ることで、承認欲求という感情的報酬を設計できます。ダイニーの「推しエール(投げ銭)」機能は、まさにこの目的に使えます。

⚠️ よくある失敗:アンケートを集めても集計が遅く、スタッフへのフィードバックが1〜2週間後になってしまう。リアルタイム性が命です。

人件費改善 STEP 3

ホールの「作業負荷」を減らし、接客に集中できる時間を増やす

注文を取る・伝票を持って走る・会計をさばく——これらは「接客業なのに接客できない」状況を生み出します。モバイルオーダーでオーダーテイクを自動化すると、スタッフはお客さまとの会話に時間を使えるようになります。仕事の「やりがい」が増えると同時に、1人あたりの対応テーブル数が増えて人件費率が下がるという、一石二鳥の効果があります。

⚠️ よくある失敗:「機械っぽくなる」という懸念で導入をためらい、結果として人手不足とスタッフ疲弊が続く。モバイルオーダーは接客を「なくす」のではなく「質を上げる」ツールです。

人件費改善 STEP 4

スタッフ評価の基準を「見える化」して、納得感のある報酬設計にする

「なぜAさんは時給が高くてBさんは低いのか」が説明できない店では、不満が生まれやすい。QSCスコアやお客さまアンケートの評価点数を時給・昇給の判断基準に組み込むことで、「頑張れば報われる」という納得感を設計できます。

⚠️ よくある失敗:評価制度を作っても「店長の主観」で運用され、数字の裏付けがないまま昇給が決まる。スタッフは不公平感を敏感に察知します。

❌ よくあるパターン:時給アップ → 人件費率悪化 → 採用絞る → 既存スタッフ疲弊 → 離職増加 → また採用コスト発生

  • コストが増え続けるのに、定着率は改善しない
  • 「お金で解決しようとする」ループから抜け出せない

✅ 推奨アプローチ:感情的報酬の設計 → スタッフの定着 → 採用コスト削減 → その原資を時給・評価制度に還元

  • 人件費率は下がりながら、スタッフの満足度は上がる
  • お客さまへの接客品質が上がり、客単価・リピート率も改善する

「モバイルオーダーの導入により客単価がアップした」

増益繁盛クラブ会員(40代・飲食店オーナー)

この声は、単純に「注文しやすくなった」だけではありません。スタッフが注文取りから解放されたことで、おすすめメニューの説明やお客さまとの会話に時間を使えるようになった——その結果として客単価が上がったケースが多いのです。人件費率の最適化と売上改善が、同時に起きている構造です。

数字で見る「定着率改善」の効果

私が支援した居酒屋チェーン(5店舗・月商約2,200万円)では、スタッフへのフィードバック仕組み化とモバイルオーダー導入を組み合わせた結果、導入から12ヶ月で以下の変化が生まれました。

  • アルバイトの年間離職率:62% → 34%(28ポイント改善)
  • 採用広告費(年間):約180万円 → 約70万円
  • 人件費率:34.2% → 30.8%(予算の32%以内に収まる状態に)
  • 客単価(1組あたり):約3,200円 → 約3,850円

人件費率の改善幅(3.4ポイント)は、一見地味に見えるかもしれません。しかし月商2,200万円に対して3.4%は月74.8万円・年間約900万円のコスト削減です。これを時給の引き上げ原資として既存スタッフに還元したところ、さらに定着率が改善するという好循環が生まれました。

飲食店の支援実績610件以上、業界歴21年の経験から言えることは、人件費率の問題は「採用と離職の構造」を変えなければ、根本的には解決しないということです。

まとめ:「辞めないチーム」が、最強のコスト削減策

人件費率を予算内に収める4つのポイントを振り返ります。

  1. 離職コストを月次数字に組み込み、「採用より定着」の判断基準を持つ
  2. お客さまの「ありがとう」を名指しで本人に届ける仕組みを作る
  3. モバイルオーダーでホールの作業負荷を下げ、接客に集中できる環境を作る
  4. QSCスコアとアンケート評価を人事評価の基準に組み込む

時給を上げることは「入口」でしかありません。定着するかどうかは、「この店で働くことが自分の成長と承認につながっている」という実感があるかどうかで決まります。

育てた人に長く働き続けてもらいたいなら、まず「お客さまの声を、スタッフ本人に届ける仕組み」を作るところから始めてみてください。それが人件費率を予算内に収める、最も持続可能なアプローチです。

モバイルオーダーの導入や、スタッフ定着・人件費率改善についてご相談がある方は、以下からお気軽にご連絡ください。現状の数字をお聞きした上で、どこから手をつけるべきかを一緒に整理します。

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