
原価率が「上がった」と気づいたとき、すでに手遅れになっている店がある
こんにちは、ハワードジョイマンです。
突然ですが、ひとつ意外な数字をお伝えします。私がこれまで相談を受けてきた飲食店経営者の方のうち、原価率の悪化に気づいた時点で、すでに2〜3ヶ月前から問題が始まっていたケースが、体感で7割を超えています。
月次の数字が出るのが翌月中旬。その数字を見て「あれ、原価が上がってる」と気づいても、もう1ヶ月以上が経過している。この「発見の遅さ」が、原価率を下げられる店と下げられない店の、最初の分岐点です。
でも今回お伝えしたいのは、それだけじゃありません。原価率の問題を「コスト削減」だけで考えようとするから、行き詰まるんです。値上げしたら客が離れる。仕入れを絞ったらクオリティが落ちる。そのジレンマから抜け出せない店が、実に多い。
原価率を改善した店が実際にやっていたのは、「コストを削る」ではなく、「売上の構造を変える」ことでした。この記事では、その具体的な違いを比較しながらお伝えします。
こんな方におすすめ
- ✅ 原価率が上がっているが、どのメニューが原因か特定できていない方
- ✅ 値上げを検討しているが、客離れが怖くて踏み切れない飲食店経営者の方
- ✅ 売上は落ちていないのに、手元に利益が残らないと感じている方
- ✅ モバイルオーダーを導入したが、客単価への効果を実感できていない方
- ✅ 仕入れコストや人件費の上昇に、打ち手が見つからないと悩んでいる方
📋 この記事でわかること
- 原価率を下げた店と、下げられなかった店の構造的な違い
- 値上げに頼らずに客単価を上げる3つの具体的アプローチ
- モバイルオーダーが「注文点数アップ」に直結する理由とその仕組み
- 原価率改善を「仕組み化」するための次の一手
「下げられなかった店」がやっていたこと——価格という一本足打法
原価率が改善できなかった店に共通しているのは、打ち手が「値上げか、仕入れ削減か」の二択しかなかったことです。
❌ よくあるパターン:価格と仕入れだけを動かそうとする
- 食材を安い仕入れ先に切り替えたが、料理の質が落ちてリピーターが減った
- メニュー価格を100〜200円上げたら、来客数が明らかに減った
- 「高コストメニューを売れるだけ売る」という方針で、原価率の計算をしていなかった
- 月末に原価を集計して「今月も高かった」と確認するだけで、何も変わらなかった
この状態に陥る根本的な原因は、「売上を変えられる変数が、価格しかない」構造にあります。客単価を上げようとすれば価格を上げるしかない。でも価格を上げると客が来なくなる。このループから出られないわけです。
✅ 原価率を改善した店がやっていたこと:客単価の変数を増やす
- 価格はそのままで、1組あたりの注文点数を増やす仕組みを作った
- 粗利の高いメニューが「自然と目に入る」導線を設計した
- 追加注文の声かけを、スタッフの感覚任せから仕組みに置き換えた
- オプション・トッピングの訴求を強化して、一品あたりの単価を引き上げた
「値上げしないと原価率が改善できないと思っている経営者は多いですが、実際には価格を一円も上げずに客単価が上がるケースがほとんどです。問題は価格ではなく、お客さまに何を・どの順番で・どう見せるか、という設計にあります」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・飲食店経営コンサルタント)
「下げられた店」がやっていた3つのアプローチ
具体的に何をしたか。私が実際に支援した店舗の事例を交えながら、3つのアプローチを紹介します。
アプローチ STEP 1
「見えるメニュー」を粗利の高い商品に変える
紙メニューで「売れていたメニュー」と「粗利の高いメニュー」が一致していないケースは珍しくありません。お客さまは見えているものを頼む傾向があるので、写真・動画つきのデジタルメニューで粗利の高い商品をトップに配置するだけで、注文の傾向が変わります。「見た目がきれいな料理は写真があると頼みやすい」という心理を、設計として使う発想です。
⚠️ よくある失敗:メニューの並び替えを「センス」で決めてしまい、実際の粗利データと照合しないまま終わる。
アプローチ STEP 2
オプション訴求を「仕組み」に組み込む
「大盛りにしますか?」「チーズトッピングはいかがですか?」という声かけは、スタッフの意識と経験に依存していると、日によってバラつきます。これをモバイルオーダーの注文画面内に「このメニューによく合うオプション」として表示させると、スタッフの声かけゼロでもオプション注文が入るようになります。
⚠️ よくある失敗:オプションをメニューに設定したが、表示位置が悪くて誰も気づかず、効果が出なかった。
アプローチ STEP 3
追加注文のタイミングを自動化する
食事の途中でスタッフがテーブルを回って「追加はいかがですか?」と声をかけるのは、人手が少ない今の現場では現実的でないことが多い。モバイルオーダーであれば、最初の注文から一定時間が経過したタイミングで「追加注文はこちらから」という通知をテーブルに表示させる設定もできます。お客さまが自分のペースで追加を選べる環境を作ることで、注文点数が増えます。
⚠️ よくある失敗:追加注文の導線を作ったが、メニュー画面が複雑すぎてお客さまが途中で諦めてしまった。
✓ ここまでのポイント
- 原価率が改善できなかった店は「価格と仕入れ」の二択しか持っていなかった
- 改善できた店は「注文点数・オプション・追加注文」で客単価の変数を増やした
- 変数を増やすためには、スタッフの感覚任せではなく「設計と仕組み」が必要
モバイルオーダーが「注文点数アップ」に直結する理由
先ほどのアプローチをすべて支えるインフラとして機能するのが、モバイルオーダーです。
実際に私が支援した飲食店経営者の方から、こんな声をいただいています。
「モバイルオーダーの導入により注文点数がアップした」
モバイルオーダー導入店オーナー
これはなぜ起きるのか。スタッフが注文を取りに来るのを待つ、という場面が消えるからです。お客さまが「もう一品頼もうかな」と思ったとき、スタッフを探す手間なく、その場でスマホから注文できる。この「注文までの摩擦ゼロ」が、注文点数に直接影響します。
また、モバイルオーダーの画面では「よく一緒に注文されているメニュー」や「このお料理に合うドリンク」といったレコメンド表示ができます。スタッフが声をかけなくても、お客さまが自然と追加注文を検討する流れを作れるわけです。
ただし重要なのは、導入すれば自動的に効果が出るわけではないという点です。メニューの表示順、写真のクオリティ、オプションの設計、画面の導線——これらを正しく設計しなければ、「便利なだけで単価は変わらなかった」という結果になります。私が支援する際に最も時間をかけるのが、この初期設定と導線設計です。
「モバイルオーダーを入れたのに客単価が上がらない、という相談をよく受けます。ほぼ例外なく、メニューの設計と表示の優先順位に問題があります。ツールではなく、そのツールをどう使うかで結果が変わります」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・Dinii正規代理店)
「売れ筋=儲け筋」という思い込みが原価率を悪化させる
もうひとつ、見落とされがちな視点をお伝えします。
「よく出るメニュー」が必ずしも「利益に貢献しているメニュー」とは限りません。注文数は多くても原価率が高く、実は粗利が薄いメニューが「売れ筋」になっているケースは珍しくありません。
❌ よくあるパターン:出数の多さで「このメニューは稼いでいる」と判断する
- 人気メニューの原価を確認していない
- 粗利ではなく売上金額で商品の貢献度を評価している
- 原価率が上がった原因を「仕入れ価格の上昇」だけに帰属させている
✅ 原価率を改善した店がやっていたこと:4軸での商品評価
- 「出数・売上・粗利・リピート率」の4軸でメニューを評価する
- 粗利の低い人気メニューを、粗利の高いメニューへ自然に誘導する設計をする
- 月次ではなく日次・週次でメニュー別の粗利を確認できる仕組みを持つ
私が支援した店舗では、この分析をした結果「実は看板メニューが原価率を押し上げていた」という事実が判明し、そのメニューの訴求順位を下げて粗利の高い別商品を前面に出したところ、値上げなしで原価率が2〜3ポイント改善したケースもあります。
飲食店経営者の方にとって、原価率の改善は「削る」のではなく「再設計する」問題です。その再設計を支えるデータを、日次で見られる環境を持っているかどうかが、結局のところ最大の差になります。
まとめ:原価率を変えた店が持っていた「3つの武器」
原価率を改善できた店と、できなかった店の違いを整理すると、シンプルに3点に集約されます。
- 客単価の変数を複数持っていた——価格だけに頼らず、注文点数・オプション・追加注文の仕組みで単価を動かせた
- メニューを「出数」ではなく「粗利」で評価していた——売れ筋と儲け筋を切り分け、粗利の高い商品を優先的に見せる設計をしていた
- 数字をリアルタイムで見ていた——月末の集計を待たず、日次・週次で原価の動きをつかんでいた
この3つを「仕組み」として回している店が、値上げをしなくても原価率を改善しています。逆に言えば、この3つのどれかが欠けている限り、値上げも仕入れ削減も対症療法にしかなりません。
私が21年間、飲食店610件以上の支援を通じて確信していることは、「儲からない構造」は気合いで変わるものではなく、設計で変わるものだということです。
もし「自分の店の原価率が、どこから悪化しているのか特定できていない」「モバイルオーダーを検討しているが、どう設計すれば客単価に効くのか知りたい」という方は、お気軽にご相談ください。現状のメニュー構成や数字の管理方法をヒアリングした上で、具体的な改善の方向性をお伝えします。