飲食店DX

なぜ私は、資金繰りの前に原価を見るのか

こんにちは、ハワードジョイマンです。

突然ですが、飲食店経営者の約7割が「先月の原価率が何%だったかを、月末に集計するまで把握していない」という状態だと言われています。つまり、打つべき手は後手に回り、気づいたときには利益がごっそり消えている——これが多くの店舗の現実です。

私がコンサルタントとして独立してから21年。最初の数年間、私自身も同じ罠にはまっていました。今日はその話をしようと思います。

📋 この記事でわかること

  1. なぜ「資金繰り」より先に「原価」を見るべきなのか、その理由と経緯
  2. 翌月中旬まで数字がわからない経営が招く「慢性的な後手の打ち方」
  3. 日次で利益を可視化し、月末着地を予測する具体的なアプローチ
  4. モバイルオーダー導入がどう原価管理・利益把握と連動するか

こんな方におすすめ

  • ✅ 売上は落ちていないのに、通帳の残高が増えていないと感じている方
  • ✅ 原価率が上がっているのに、どのメニューが原因かわからない方
  • ✅ 月次の数字が出るのが翌月中旬で、いつも打ち手が遅れていると感じる方
  • ✅ 「数字が読める経営者」になりたいと思っている飲食店経営者の方
  • ✅ 来月の着地をある程度予測してから動けるようになりたい方
なぜ私は、資金繰りの前に原価を見るのか | 有限会社繁盛店研究所(Dinii正規代理店:モバイルオーダーシステム)

独立直後、私が最初に見ていたのは「通帳の残高」だった

独立した当初、私は毎日のように通帳を開いていました。今日いくら入っているか。来月の家賃は払えるか。食欲を失い、医師から「商売はうまくいっていますか」と逆に心配されたあの頃の話は、以前にも書いたことがあります。

でも今振り返ると、当時の私が見ていたのは「結果」でしかなかった。通帳の残高は、すでに起きたことの記録です。船で言えば、後ろの波を見ながら舵を切ろうとしていたようなものです。

転機は、ある居酒屋オーナーとの出会いでした。静岡県内で3店舗を経営していた彼は、「売上は前年より10%増えているのに、なぜか毎月苦しい」と言っていた。私はすぐに通帳ではなく、原価の記録を見せてもらいました。

そこに答えがありました。

「売れている」と「儲かっている」は、まったく別の話だった

そのオーナーの店では、看板メニューの売れ行きが好調でした。来客数も増えている。なのに利益が残らない。なぜか。

原価を分解してみると、一番出数の多かったメニューの原価率が実に58%に達していました。売れれば売れるほど赤字に近づいていたわけです。しかも彼はそれを、翌月の中旬まで知らなかった。

「売れ筋=儲け筋」という思い込みは、飲食店経営における最も根深い誤解のひとつです。出数が多いということは、高原価のメニューほど被害が大きくなるということでもある。そのことを、リアルタイムで知る手段がなければ、打ち手は常に後手に回ります。

「資金繰りに悩んでいるオーナーの多くは、お金の問題を抱えているのではなく、情報の遅れを抱えています。先月のことを今月の中旬に知って、来月の手を打つ——これでは、どんな優秀な経営者でも手遅れになる」

ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所)

その日から私は、相談に来たオーナーに対して必ず最初に原価の記録を確認するようになりました。資金繰りの話は、その後です。

翌月中旬まで数字が出ない——この「情報の遅延」が経営を壊す

支援してきた610件以上の飲食店を見ていて、共通して感じることがあります。数字が遅い店は、判断も遅い。これは能力の問題ではなく、仕組みの問題です。

多くの店舗では、売上・原価・人件費がそれぞれ別のシステムや紙の日報で管理されています。それを月末にスタッフが手作業で集計し、オーナーの手元に届くのが翌月の中旬前後。「先月、何を間違えたか」を知るのに、まるまる2週間かかっている。

増益繁盛クラブの会員さんの中には、「数字が出たときには、もう状況が変わっていて、対策の意味がなかった」と話してくださる方が少なくありません。

✓ ここまでのポイント

  • 通帳残高(資金繰り)は「結果」の数字。原価こそ「原因」を映す鏡である
  • 「売れ筋=儲け筋」は誤解。出数の多いメニューの原価率が高いほど、損失は拡大する
  • 翌月中旬に先月のミスを知る「情報の遅延」が、打ち手を慢性的に後手にする

日次で利益を見ると、経営の「景色」が変わる

では、どうすればいいか。結論から言うと、売上・原価・人件費の3つを日次で一元把握できる状態を作ることです。

今まで月末に「そういえば先月の着地はどうだったか」と振り返っていたのを、毎日「今日の時点で今月の利益はどこにいるか、月末の着地はどうなりそうか」を見る習慣に切り替える。これだけで、経営判断のスピードと精度が大きく変わります。

チェックポイント①:あなたは今日の原価率を言えるか

「今日の原価率は何%ですか?」と聞かれて即答できるオーナーは、実際にはほとんどいません。「来月の中旬にわかります」という答えが返ってくるなら、今の仕組みを見直すタイミングです。

✅ ポイント:POS・原価・勤怠のデータを1か所に集約し、日次で自動集計される環境を整えることから始める。

チェックポイント②:「月末着地」を予測してから動いているか

月が始まってから「今月はどのくらいになりそうか」を予測せずに動いているのは、目的地を決めずに車を走らせているようなものです。着地予測があれば、今週に何を変えるかの判断が変わります。

✅ ポイント:過去の売上トレンドと現在の日次データを掛け合わせれば、月末の着地を週次で更新しながら把握できる。AI機能を持つシステムならこれが自動化される。

チェックポイント③:メニュー別の粗利構成を見ているか

「よく出るメニュー」ではなく、「出るたびに粗利を生むメニュー」を把握しているかどうか。この視点があるかないかで、メニュー改訂・仕入れ交渉・販促の打ち手がまったく変わります。

✅ ポイント:売上・出数だけでなく、「粗利額」でメニューをランキングするABC分析を定期的に実施する。

「数字が読める経営者と読めない経営者の差は、頭の良し悪しではありません。見えている情報の量と鮮度の差です。昨日の数字を今日見られる人と、先月の数字を今月の中旬に見る人では、打てる手が根本的に違う」

ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所)

仕組みを変えると、現場の行動も変わる——ある会員の話

モバイルオーダーシステムを導入した会員のオーナーから、こんな報告をいただきました。

「モバイルオーダーの導入により注文点数がアップした。スタッフが注文を取りに行く手間がなくなった分、お客さまへの声かけに集中できるようになって、追加注文が自然に増えた感じがします」

居酒屋経営者(40代・男性)

この変化が面白いのは、単純に「システムが売ってくれた」ということではない点です。注文という作業から解放されたスタッフが、接客という本来の仕事に戻ることで、客単価と注文点数が同時に上がった。

そしてもうひとつ。モバイルオーダーのデータはリアルタイムでPOSに蓄積されます。「今日の時点でどのメニューが何皿出ているか」「今月の粗利はどこに向かっているか」が、手作業ゼロで見えるようになる。これが私の言う「日次で利益を見る」仕組みの実態です。

❌ これまでのやり方

  • 日報を手書き→本社スタッフが手入力→翌月中旬に集計完了
  • 数字が判明したころには、問題のある週はとっくに終わっている
  • 「あの週に手を打てばよかった」という後悔が繰り返される

✅ 仕組みを変えた後のやり方

  • 注文データが自動でPOSに蓄積→翌朝には前日の原価・粗利が見える
  • 月末着地の予測が週次で更新され、打ち手の判断が早くなる
  • メニュー別の粗利構成を定期確認し、高収益メニューを重点的に推せる

まとめ:原価を先に見るのは、未来を先に見るためだ

私が資金繰りより先に原価を見る理由は、シンプルです。通帳の残高は過去の結果であり、原価は未来の利益を決める変数だからです。

「先月何を間違えたか」を翌月中旬に知る仕組みのまま経営していると、どんなに頑張っても打ち手は後手に回り続けます。それは経営者の問題ではなく、情報の流れの問題です。

日次で原価と利益を見て、月末着地を予測してから動く——この順番を手に入れるだけで、経営の景色はかなり変わります。支援実績610件以上、業界経験21年の現場から、これだけは断言できます。

「うちの店の数字の流れ、一度診てもらえませんか」というご相談を、静岡県内はもちろん全国からお受けしています。まずは気軽に話しかけてみてください。

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