
「売上は上がってるのに、なんでお金がないんでしょう」
こんにちは、ハワードジョイマンです。
先日、関東で5店舗を運営する居酒屋チェーンのオーナーさんから、こんな連絡をいただきました。
「売上は前年比で106%なんです。でも、なぜか通帳の残高が3ヶ月前より減っている。何かがおかしいとは思うんですが、何がおかしいのかが分からなくて……」
正直に言うと、このご相談は珍しくもなんともありません。私がこの21年で関わってきた飲食店経営者の方の中で、似たことを口にした人の数は、両手では足りません。売上が「上がっている」のに、手元に残らない。この矛盾に気づいた時点で、すでに問題は相当深いところまで進行していることが多い。
今回は、そのオーナーさんと過ごした一日の流れをたどりながら、「月中に異変を察知して、月末前に手を打った店」の舞台裏をお伝えします。
こんな方におすすめ
- ✅ 売上は悪くないのに利益が残らないと感じている飲食店経営者の方
- ✅ 月次の数字が出るのが翌月中旬以降になっている方
- ✅ POS・原価・勤怠をそれぞれ別のシステムで管理している方
- ✅ 複数店舗を運営していて、店長ごとに数字のブレがある方
- ✅ 過去にITツールを導入したが現場に定着しなかった経験がある方
📋 この記事でわかること
- 「売上は良いのに利益が残らない」構造的な原因
- 月中に異変を察知するための日次管理の具体的な方法
- データを1つに統合することで経営判断がどう変わるか
- 実際の飲食店で起きた「月末マイナスを月中に埋めた」事例の流れ
朝8時:「昨日どうだった?」が答えられない経営の怖さ
その日、私は午前8時にオーナーさんの事務所に入りました。まず最初にお願いしたのは、「昨日の売上・原価・人件費を今すぐ教えてください」という一言です。
オーナーさんは少し困った顔をしました。「売上はPOSで見られます。でも原価は……月末に棚卸しをしてからじゃないと。人件費も、勤怠の締めが月末なので」
ここが問題の核心でした。売上・原価・人件費が、それぞれ別のシステム、別のタイミングで管理されている。つまり「今日の利益」が、誰にも分からない状態なのです。
月商が数百万円規模の店舗であれば、1日の利益のブレは数万〜十数万円になります。それが30日積み重なる。月末にやっと数字を合わせてみたら「あれ、思ったより全然残っていない」という事態が起きる。これは経営者の油断ではなく、仕組みの問題です。
「月末に赤字を知るのは、もう手遅れです。月中に察知して、まだ動ける時間があるうちに打ち手を決めることが大事。そのための武器が日次の利益可視化なんです」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・経営コンサルタント)
午前10時:1ヶ月分のデータを並べて見えてきた「本当の敵」
事務所のデスクに、3つの画面を並べました。POSの売上データ、仕入れ伝票をまとめたエクセル、そして勤怠管理ソフトの集計画面。これを突き合わせながら、過去1ヶ月分を手作業で整理する作業を始めました。
2時間かかりました。5店舗で、たった1ヶ月分を手作業で突き合わせるのに、2時間。オーナーさんは途中で「毎月これやってたら、経営者は何もできないですね」とつぶやきました。その通りです。
作業を終えて見えてきたのは、次のことでした。
- 売上は確かに前年比106%だった
- しかし人件費が前年比で112%になっていた(採用強化と時給改定の影響)
- 原価率も2ポイント上がっていた(仕入れ値の上昇を価格に転嫁できていなかった)
- この2つが重なった結果、営業利益は実質マイナスになる月が2ヶ月続いていた
「売上が上がれば利益も上がる」は、FLコスト(Food+Labor)が変わらない場合の話です。原価率と人件費率が同時に悪化すると、売上が増えても利益は薄くなる。それどころか、売上増に引っ張られて仕入れと人員が増え、逆に利益が圧縮される。これが今回起きていたことでした。
✓ ここまでのポイント
- 「売上が良い=利益が残る」ではない。FLコストが同時に悪化すると、売上増でも利益は減る
- POS・原価・勤怠が別システムだと、月末まで本当の利益が見えない
- 手作業の突き合わせには時間がかかり、問題を「知るのが遅すぎる」構造になっている
午後2時:「仕組みを変えれば、月中に気づける」という話
昼食をはさんで、午後は打ち手の整理に入りました。ここで私がオーナーさんに提案したのは、3つのシステムをひとつのデータ基盤に統合することでした。
切り替え STEP 1
まず「日次で利益が見える状態」をゴールに設定する
多くの経営者が「月次の管理」を前提にしていますが、5店舗以上になるとそれでは遅すぎます。売上・原価・人件費を1つのダッシュボードで日次確認できる状態にすることを、最初のゴールに置きます。
⚠️ よくある失敗:「月次で十分だろう」とゴール設定を甘くすると、月中の異変に気づけず、翌月も同じ損失を繰り返します。
切り替え STEP 2
POS・原価・勤怠を連携できるシステムに移行する
手作業の突き合わせをなくすためには、データの発生源を統合する必要があります。注文が入ると同時に売上と原価が記録され、スタッフの出退勤が勤怠に自動反映される。この連携が取れていれば、翌朝には前日の利益概算が手元に届きます。
⚠️ よくある失敗:ツールを入れても現場に使われなければ意味がありません。「誰が何を入力するか」のオペレーション設計を先に固めることが必須です。
切り替え STEP 3
着地予測を月の前半から立て、後半の打ち手を決める
日次データが揃うと、月の前半の実績から月末の着地を予測できるようになります。「このペースだと今月のFLコストは予算比で+8%になる」と分かれば、後半2週間でシフトを調整したり、高粗利メニューの訴求を強化するといった具体的な打ち手が取れます。
⚠️ よくある失敗:予測を出して安心してしまい、アクションに落とし込まないケース。数字は見るためではなく、動くために使います。
今回のオーナーさんのケースでは、ダイニーの経営管理機能を活用してPOS・原価・勤怠のデータを統合し、日次の利益ダッシュボードを構築しました。導入と初期設定の代行、そして現場への定着支援を90日間伴走する形で進めることにしました。
夕方5時:「リピーターが増えると、利益の土台が変わる」という発見
その日の夕方、オーナーさんとデータを整理していて、もう一つ気になる数字が浮かび上がりました。新規客の来店数は増えているのに、2回目以降の来店率が計測されていなかったのです。
グルメサイトへの掲載費用が月に相当な額出ていました。新規を呼び続けることにコストをかけているが、その人たちがリピーターになっているかどうかを誰も追っていない。これは、底の抜けたバケツに水を注ぎ続けているようなものです。
ここで私が紹介したのが、来店客を会員化してLINEでつながる仕組みです。来店するとLINE友だちになれる導線を作り、次回来店を促すメッセージを自動で配信する。シンプルな仕掛けですが、これが定着すると数字が変わります。
「LINE友だちが増えて、再来店客数も含めた来店者総数が伸びました」
増益繁盛クラブ会員(居酒屋オーナー)
リピーターが増えると、集客コストをかけずに来てくれるお客さまの比率が上がります。その分、グルメサイトへの掲載費用を絞っても売上が維持できる。つまり「収益構造」そのものが変わるのです。利益を増やすには、売上を上げるだけでなく、コストのかからない売上の比率を増やすことが大切だと、私はいつも伝えています。
❌ よくあるパターン:新規集客だけに予算を集中する
- グルメサイトへの掲載料が固定費化する
- 来店客が誰かを把握していないため、2回目以降の来店率を測定できない
- 売上が横ばいでも掲載費用だけが積み上がり、利益が削られる
✅ 推奨アプローチ:来店を会員化し、再来店率をKPIに置く
- 来店=LINE友だち化の動線を設計する
- 自動配信で来店を促し、効果を開封率・来店数で追跡する
- リピーター売上比率が高まると、広告費依存から脱却できる
夜9時:「今月は間に合った」——月中に手を打てた店の結末
あの日から約3週間後、オーナーさんから連絡が来ました。
「今月、FLコストが予算内で着地しそうです。前半のデータを見て、後半のシフトを絞ったのと、週末に原価の低い推しメニューをモバイルオーダーのトップに出したのが効いたと思います。月中にやれることがこんなにあるとは思っていませんでした」
これが、日次で利益を可視化することの意味です。月末に「今月もダメだった」を知るのではなく、月中に「このままだとマズい」と察知して、動く。その2〜3週間が、経営の命綱になります。
増益繁盛クラブの会員さんの中には、同じように経営管理の仕組みを整えた後、月商350万円から620万円に伸びた方や、リピート率が38%から71%まで改善したオーナーさんもいます。劇的な数字の裏側には、必ず「仕組みの整備」があります。
売上より利益を重視する。がんばるより、仕組みで稼ぐ。私がコンサルティングを通じていつも伝えていることは、この一点に尽きます。
まとめ:「月末に知る」から「月中に動く」へ
今回お伝えしたことを整理します。
- 「売上が上がっているのに利益が残らない」の原因は、FLコストの悪化と、それを月末まで把握できない仕組みの問題
- POS・原価・勤怠を1つのデータ基盤に統合することで、日次での利益確認が可能になる
- 月中に着地予測を立てれば、後半2週間で打ち手が取れる
- リピーターを増やすことで、広告費をかけずに来てくれるお客さまの比率が上がり、利益構造が変わる
「うちの店も似たような状況かもしれない」と感じた飲食店経営者の方、まずは現状の数字の流れを一緒に見るところから始めましょう。今どんな仕組みを使っているか、どこでデータが止まっているかを整理するだけで、次の打ち手が見えてきます。
お気軽にご相談ください。お待ちしています。