
「売れてるから大丈夫」が、実は一番危ない
こんにちは、ハワードジョイマンです。
飲食店経営者の方とお話ししていると、こんな声をよく聞きます。
- 「一番出数が多いメニューに問題があるとは思えない」
- 「売れているのに原価率が上がっていく理由が分からない」
- 「どのメニューが足を引っ張っているのか、感覚ではなんとなくわかるけど、数字で説明できない」
感覚は大事です。でも、感覚だけで動いていると、「売れている」と「儲かっている」を混同したまま月末を迎えることになります。
今回お話しするのは、ABC分析にリピート率という軸を加えると何が見えてくるか、という話です。実際にこの4軸分析を導入したクライアントの事例をもとに、できるだけ具体的に解説します。
📋 この記事でわかること
- 従来のABC分析だけでは見えない「利益を削るメニュー」の正体
- 出数・売上・粗利・リピート率の4軸で分析するとどう変わるか
- 実際のクライアント事例(課題→施策→結果の変化)
- この分析を自店舗に活かすための再現性あるポイント
こんな方におすすめ
- ✅ 原価率が上がっているが、どのメニューが原因か特定できていない方
- ✅ 売上は悪くないのに、手元に利益が残らないと感じている飲食店経営者の方
- ✅ 「売れ筋=儲け筋」という前提で今までメニューを管理してきた方
- ✅ 3〜30店舗を運営していて、店舗間のメニュー構成を見直したいオーナーの方
- ✅ データを経営判断に使いたいが、何から始めればいいか迷っている方
ABC分析だけで見えていたもの、見えていなかったもの
ABC分析は、商品を「出数(または売上)の多い順に並べて、上位70%をAランク、次の20%をBランク、残りをCランク」に分類する手法です。多くの飲食店で使われていますし、使い方としては間違っていません。
ただ、問題はここです。
出数が多い=お店の売上を作っているメニュー、という事実は正しい。でも、そのメニューが利益を作っているかどうかは、出数だけでは判断できません。
たとえばこんなケースがあります。出数ランキング1位のメニューが、原価率42%だったとします。お客さんはそれを目当てに来ていて、よく注文してくれる。でもそのメニューが出るたびに粗利の薄い取引が積み重なっていく。一方、ランキングの中位にいる別のメニューは原価率が22%で、粗利も高い。しかもリピートのお客さんがよく注文している。
出数だけ見ていると、前者が「主力商品」で後者が「中堅商品」に見えます。でも利益の観点から見れば、完全に逆です。
チェックポイント1:あなたの「売れ筋」は儲け筋ですか?
月次の売上ランキングを出したとき、上位5品の原価率を把握していますか? それぞれの1品あたり粗利を計算したことはありますか?
✅ ポイント:出数ランキングと粗利ランキングを別々に作成し、上位に乖離があるメニューがないかを確認する。乖離が大きいメニューこそ、原価率悪化の根本原因になっていることが多い。
チェックポイント2:「なぜ来ているか」をメニューで追えていますか?
新規のお客さんが注文するメニューと、リピーターが注文するメニューは、実は異なることが多い。でも多くの店では、その違いを把握していません。
✅ ポイント:リピート率の高い顧客層がどのメニューを注文しているかを追跡できる仕組みを作る。CRMと連動した分析が有効。
4軸分析で何が変わったか——居酒屋チェーン(8店舗)の事例
少し前に支援した、地方でロードサイドを中心に8店舗を展開する居酒屋チェーンの話をします。
このオーナーが最初に相談してきたのは「原価率が上がっているのに、どこで上がっているか分からない」という悩みでした。月商はおおよそ各店400〜500万円規模。売上は落ちていないのに、利益がじわじわ減っている状態が続いていました。
【初期の課題】
このチェーンでは、月次のPOSデータから出数ランキングを出して、上位商品を「主力」と定義していました。仕入れも、その主力商品に合わせて組んでいた。合理的に見える。でも実際に数字を掘り下げてみると、出数1位のメニューの粗利は1品あたり280円、一方で出数7位のメニューは粗利が680円でした。そして出数7位の商品を頼んでいるお客さんのリピート率は、1位の商品を頼んでいるお客さんより約20ポイント高かった。
つまり、最も注力していた商品が、最も利益を薄くしていて、しかもリピーターを作りにくい構造になっていたんです。
【実施した施策】
まず取り組んだのは、4軸での商品評価でした。「出数」「売上」「粗利」「リピート顧客の注文率(リピート率)」の4つのデータを組み合わせて、全メニューを再評価しました。
この分析で浮かび上がったのが3つのカテゴリです。
- Aゾーン:出数も粗利もリピート率も高い「本当の主力」
- Bゾーン:出数は多いが粗利が薄く、リピーターには刺さっていない「集客用消耗品」
- Cゾーン:出数は中位だが粗利が高く、リピーターがよく頼む「隠れた優良商品」
次に、モバイルオーダーのトップ画面に表示するメニューをBゾーンからAゾーン・Cゾーンに切り替えました。写真・説明文も刷新し、スタッフが口頭で勧める際の声かけの文言もCゾーン商品に集中させました。
Bゾーン商品はメニューから外したわけではありません。ただ、トップに置くのをやめた。それだけで注文の流れが変わり始めました。
✓ ここまでのポイント
- 出数が多い=儲かっているではない。粗利を軸に見ると景色が変わる
- リピート率を加えると「お客さんが戻ってくる理由になっているメニュー」が見えてくる
- 分析から見えた「隠れた優良商品」を前面に出すだけで、オペレーションを変えなくても構成が変わる
「売れているメニューを疑うのは勇気がいる。でも、そこを疑えるかどうかが、経営者と現場の違いだと思っています。数字を見ると、ほぼ必ずといっていいほど『見ていなかった構造』が出てきます」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所)
結果として何が変わったか
施策を導入してから3ヶ月後のデータです。
- 全体の平均原価率:38.4%→32.1%(6.3ポイント改善)
- 1組あたりの客単価:約820円アップ
- リピート率:3ヶ月比較で約14ポイント向上
- 月商ベースでは大きく変わらないが、利益額は約1.8倍になった
売上を無理に伸ばしたわけではありません。出ている商品の構成を変えた。それだけです。
実はこれ、モバイルオーダーを活用しているからこそできた改善でもあります。お客さんが自分のスマホから注文する仕組みだと、どのメニューを何回、誰が注文したかのデータがリアルタイムで蓄積されます。それをCRMと連動させると、リピーターの注文傾向が見えてくる。従来の紙やハンディ端末では追えなかった精度のデータです。
「モバイルオーダーを導入してから、お客様一人ひとりが何を注文しているかが見えるようになって、注文点数もアップしました。データが見えると、動かし方が変わりますね」
居酒屋チェーン経営者・40代男性
この分析の再現性——どんな店でも使えるか
「うちにはそんなデータがない」という声があります。正直に言います。手作業の集計では、4軸分析はかなりしんどいです。出数・売上はPOSから出せても、リピーター別の注文傾向は顧客IDと注文履歴が紐づいていないと取れません。
ただ、今すぐ完全な4軸分析ができなくても、出数と粗利の2軸だけでも始める価値はあります。
❌ よくあるやり方(感覚ベースの管理)
- 「よく出るから良いメニュー」という前提でメニュー改訂を行う
- 原価率が上がったとき「仕入れ値が上がったせい」と外部要因で片付ける
- 売れ筋メニューをトップに固定したまま、年単位で見直しをしない
✅ 4軸分析を使ったアプローチ
- 出数・売上・粗利・リピート率の4つを並べて評価する
- 「隠れた優良商品(高粗利×高リピート)」を特定し、意図的に前面に出す
- 月次ではなく週次で構成変化を追い、早期に打ち手を決める
チェックポイント3:あなたの店に「隠れた優良商品」はありますか?
今すぐできることとして、全メニューを「出数」と「1品あたり粗利額」の2軸でプロットしてみてください。出数が中位なのに粗利が高い商品があれば、それがCゾーン=隠れた優良商品の候補です。
✅ ポイント:そのメニューのリピーター注文率を追加で確認できれば、優先度が明確になる。データがなければ、まずPOS×顧客IDを紐づける環境を整えることから始める。
まとめ——「何が売れているか」より「誰がなぜ来ているか」を見る
ABC分析にリピート率を加えると、見えてくるのは単なるメニュー別の売上構成ではありません。「このお店にリピーターを作っているメニューは何か」「売上を作っているようで、実は利益を食っているメニューはどれか」という、経営の根っこの話が数字で見えてくるようになります。
増益繁盛クラブの会員さんの中には、この分析をきっかけにメニューの並び順を変えただけで、3ヶ月以内に客単価が改善したケースが複数あります。大きな改装も、新しい広告も必要ありませんでした。
支援実績610件以上の飲食店経営者と向き合ってきた中で、利益が残らない店に共通しているのは、「何が売れているか」は知っているが「誰がなぜ来ているか」を把握していないという点です。この2つを紐づける分析の仕組みを持てた店から、少しずつ景色が変わっていきます。
もし「自分の店のメニュー構成を4軸で見てみたい」「データの整備から始めたい」とお考えであれば、まずは一度話を聞かせてください。どのデータがどこにあって、何が足りないかを一緒に確認するところから始められます。