「仕入れ先を変えたのに、原価率が一向に下がらない」——そんなご相談を受けることが、ここ数年で本当に増えました。
こんにちは、ハワードジョイマンです。今回は、私のもとでメニュー分析を担当している経営管理アドバイザーの奥田麻里(おくだ まり)にフォーカスしながら、「原価率悪化の本当の原因」についてお伝えしていきます。
奥田は、飲食チェーンの経理部門を10年経験したのち、有限会社繁盛店研究所のコンサルチームに加わりました。彼女が一番よく口にする言葉は、「数字は正直です。でも、見る場所を間違えると全然違うことを言い始めます」というもの。その言葉の意味が、この記事を読むと少し分かっていただけると思います。
📋 この記事でわかること
- 原価率が悪化する「本当の原因」が仕入れではなく販売構成にある理由
- 売れ筋メニューが必ずしも「儲け筋」ではないという事実と、その見分け方
- ABC分析を使ったメニュー収益性の診断ステップ
- 構成比を改善して客単価を上げるための具体的アプローチ
こんな方におすすめ
- ✅ 原価率が上がっているが、どのメニューが原因か特定できていない方
- ✅ 仕入れを見直しても利益が改善しない飲食店経営者の方
- ✅ 売上は前年比プラスなのに手元に利益が残らないと感じている方
- ✅ 多店舗展開中で、店舗ごとの原価率のばらつきが気になる方
- ✅ メニュー構成を根拠ある数字で見直したい方

「仕入れを変えれば原価が下がる」は半分しか正しくない
仕入れ単価を下げることで原価率を改善しようとするアプローチは、間違いではありません。ただ、それで解決する問題は「全体の半分以下」だと、奥田は言います。
たとえば、ある焼肉チェーンのオーナーから相談を受けたときのこと。原価率が2ポイント上昇しており、仕入れ業者の変更を検討しているとのことでした。奥田がPOSデータを確認すると、原価率30%の定番メニューと原価率58%の高コストメニューの出数がほぼ同じ。つまり、仕入れ先の問題ではなく、「高原価メニューが売れすぎている」という構成比の問題だったんです。
仕入れ単価を5%下げても、売れているものの構成が変わらなければ、原価率は数ポイントしか改善しません。でも売れているメニューの構成を変えれば、仕入れに手をつけなくても原価率は動く。これが「販売構成が原因」の意味です。
「売れ筋」と「儲け筋」は、まったく別の話です
「このメニューが一番売れています」と言われたとき、私はいつも「では、そのメニューの粗利はいくらですか?」と聞き返します。ほとんどの場合、即答できるオーナーはいません。
売れているメニューが、必ずしも利益を生んでいるとは限りません。むしろ、客数が多い時期に原価率が高いメニューが売れると、売上は上がるのに利益が増えないという状況が起きやすくなります。
奥田がよく使うのが、「出数・売上・粗利・リピート率」の4軸で商品を評価するABC分析です。単純に「何個売れたか」だけでなく、「それが利益にいくら貢献しているか」「そのメニューを頼んだお客さまは再来店しているか」まで見ます。この視点を持つだけで、メニュー構成の優先順位がガラッと変わります。
「売れているメニューを守ろうとして、儲かるメニューを売り込まない——これが一番もったいない構造です。感情ではなく、数字で判断しましょう」
奥田麻里(経営管理アドバイザー・有限会社繁盛店研究所)
✓ ここまでのポイント
- 原価率悪化の原因は仕入れ単価だけでなく、「何がどれだけ売れているか」という販売構成にある
- 「売れ筋」と「儲け筋」は一致しないことが多く、粗利の軸で商品を評価する必要がある
- ABC分析では出数・売上・粗利・リピート率の4軸を同時に見ることが重要
実際にどう診断するか——販売構成チェックの手順
チェックポイント1:全メニューの原価率と粗利額を並べて確認する
まず、全メニューについて「売価・原価・粗利額・原価率」を一覧化します。月次のPOSデータと原価を紐づけるだけで構いません。意外と「高く売れているが原価も高い」メニューが目立ってきます。
✅ ポイント:原価率だけでなく「粗利額の絶対値」で見ること。原価率50%でも、売価が高ければ粗利額は大きい場合があります。
チェックポイント2:各メニューの出数と粗利総額を掛け合わせる
次に、「1品あたり粗利額 × 月間出数 = 粗利貢献額」を計算します。この数値が高いメニューが、あなたの店の「本当の稼ぎ頭」です。
✅ ポイント:粗利貢献額ランキングの上位3品と、注文数ランキングの上位3品が一致しているか確認する。ズレがあれば、そこに改善余地があります。
チェックポイント3:高原価メニューの「注文経路」を確認する
高原価メニューがよく売れている場合、それがスタッフの口頭推奨なのか、メニュー表の位置なのか、モバイルオーダーの表示順なのかを確認します。意図的に売れているのか、構造的に売れてしまっているのかで、対策が変わります。
✅ ポイント:意図せず売れている場合は、表示位置の変更やオプション訴求の差し替えだけで構成が変わることがあります。
チェックポイント4:店舗間で構成比に差がないか比較する
多店舗展開している場合、同じメニュー構成でも店舗によって原価率が異なるケースがあります。これは仕入れの問題ではなく、売れているメニューが店ごとに違うからです。
✅ ポイント:構成比の差が店長の販売促進行動(おすすめの声かけ・ランチ推奨など)に起因している場合、標準化で解決できます。
❌ よくある対応(問題を悪化させるパターン)
- 仕入れ業者を変えたが、構成が変わらず原価率は横ばい
- 高原価メニューを値上げしたことで注文数が落ち、今度は売上が下がった
- 売れているメニューを守りすぎて、粗利の高いメニューを訴求できなかった
✅ 推奨アプローチ(構成比から攻める)
- 粗利貢献額の高いメニューをモバイルオーダーの画面上部・おすすめ枠に移動する
- 高原価メニューの注文時に、粗利の高いサイドメニューやドリンクを自動で表示させる
- スタッフの声かけルールを、感覚ではなくデータに基づいて設計し直す
モバイルオーダーは「原価率の改善ツール」でもある
「モバイルオーダーは省人化のためのツール」と思われている方が多いのですが、実は販売構成を意図的にコントロールするための仕組みとしても機能します。
奥田が支援した居酒屋グループでは、ダイニーのモバイルオーダーを導入した際に、表示メニューの順序と「おすすめ表示」を粗利軸で再設計しました。その結果、高原価メニューへの集中が分散し、原価率が2.4ポイント改善しました。売上そのものはほとんど変わっていないのに、です。
「モバイルオーダーを入れて終わり、ではなくて、画面設計が販売促進そのもの。誰にどのメニューを見せるかを、ちゃんと設計することが大事なんです」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所)
「モバイルオーダーを導入してから、注文点数が明らかに増えました。スタッフがおすすめを言わなくても、画面が勝手に誘導してくれている感じです」
飲食店経営者・40代男性(居酒屋チェーン・4店舗)
増益繁盛クラブの会員さんの中には、「モバイルオーダー導入後に客単価がアップした」という声が複数届いています。これも、表示設計を通じた販売構成の改善が効いているケースがほとんどです。
まとめ:原価率の問題は「何を買うか」より「何を売るか」から見直す
原価率の悪化に悩んでいる方の多くが、最初に「仕入れの見直し」に手をつけます。でも、それで解決しない場合の大半は、販売構成——つまり「どのメニューがどれだけ売れているか」という内側に原因があります。
結論から言うと、メニューを粗利の軸で再評価して、稼げるメニューが自然と売れる仕組みを設計すること。これが、仕入れ先交渉よりも早く、確実に原価率に影響を与えます。
奥田が診断に入ると、「こんな見方をしたことがなかった」とおっしゃるオーナーが本当に多い。数字は正直です。見る場所を変えるだけで、対策がまったく変わります。
私たち有限会社繁盛店研究所では、飲食店支援実績610件以上の経験をもとに、メニュー収益性の診断とダイニーを使った販売構成の最適化を一体でご支援しています。「自分の店の原価率、どこに問題があるか見てほしい」という方は、まずお気軽にご相談ください。
また、モバイルオーダーを使った販売構成の改善手法について、もう少し詳しく知りたい方はこちらもどうぞ。無料で情報をお届けしています。