こんにちは、ハワードジョイマンです。
突然ですが、こんなデータをご存じでしょうか。飲食業界の1年以内離職率は50〜60%に達するとも言われています。2人採用したら1人は1年以内に辞める計算です。しかも興味深いのは、離職理由の調査において「給与への不満」を挙げた人は全体の3割程度にとどまり、残り7割は「評価されている実感がない」「職場の人間関係・雰囲気」などの非金銭的要因が占めている、という点です。
つまり「時給を100円上げれば解決する」という話ではないわけです。
今日は、この構造的な問題を「投げ銭」という意外な仕組みで改善した飲食店の事例をご紹介します。何が変わり、なぜ変わったのかを、具体的に見ていきましょう。
こんな方におすすめ
- ✅ 時給を上げてもスタッフがすぐ辞めてしまう飲食店経営者の方
- ✅ スタッフのモチベーション管理に悩んでいる方
- ✅ 採用コストをこれ以上増やしたくない多店舗展開中のオーナーの方
- ✅ 「評価制度」を整えたいが何から手をつければいいか分からない方
- ✅ モバイルオーダー導入の副次的な効果を知りたい方
📋 この記事でわかること
- 飲食店の離職率が下がらない本当の原因
- 「推しエール(投げ銭)」機能が実際にどう機能したか
- スタッフ定着率を改善した具体的な事例と変化
- 投げ銭だけに頼らない、定着率向上の仕組みづくりのポイント

時給を1,500円にしても辞めた、その理由
関東近郊で居酒屋を3店舗運営するあるオーナーから相談を受けたのは、2023年の春ごろのことです。
「ジョイマンさん、時給をエリア最高水準の1,500円にしたんです。それでも半年以内に辞めていく。どうすればいいですか」
話を聞いてみると、辞めていくスタッフの多くは「キッチンとホールの連携が悪くてストレスがたまる」「頑張っても誰にも見てもらえていない気がする」と言い残していたそうです。
これは珍しい話ではありません。増益繁盛クラブの会員さんの中にも、同じ悩みを抱えているオーナーは少なくない。特に多店舗展開をしていると、経営者がすべての現場にいられないため、個々のスタッフの頑張りが「見えない」状態になりがちです。
評価されている実感が持てないスタッフは、待遇が良くても辞めます。逆に「自分の仕事が誰かに届いている」と感じられるスタッフは、多少の不便があっても踏みとどまってくれることが多い。
この構造を変えるために導入したのが、ダイニーの「推しエール」機能——いわゆるスタッフへの投げ銭の仕組みです。
「推しエール」とはどんな仕組みか
モバイルオーダーを使って料理を注文したお客さまが、気に入ったスタッフに対してスマートフォンから直接「ありがとう」の気持ちを送れる仕組みです。金額は少額で設定でき、スタッフ個人に紐づく形で累積されていきます。
ポイントは2つあります。
1つ目は、お客さまから「名指しで」感謝が届くという点。「山田さんの接客が良かった」という具体的な評価が、数字として可視化されます。これが曖昧な「いい仕事してるね」とは全然違う。本人にとってはっきりとした「承認」になります。
2つ目は、経営者や店長のフィルターを通さずに届くという点。上司が「頑張ってたね」と言うのと、見ず知らずのお客さまが財布を開いて「ありがとう」を伝えるのとでは、受け取る側の感触がまるで違います。
「賃金を上げることと、報われる実感を作ることは、まったく別の話です。離職を止めたいなら、お客さまの声をスタッフ個人に届ける仕組みを先に作るべきです」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所)
実際に何が起きたか——3店舗での変化
導入から3ヶ月後、先ほどのオーナーから報告が届きました。
まず変わったのは、スタッフ同士の雰囲気でした。推しエールの累積ランキングが店内で共有されるようになると、ホールスタッフが自発的に「もっとお客さまに声をかけよう」と動き始めたのです。上司から言われたわけじゃない。お客さまの評価が「見える」から、自分で動いた。
次に変わったのは、キッチンとホールの連携です。「推しエールをもらいやすい接客」を意識するようになったホールスタッフが、キッチンに料理の提供タイミングを細かく確認するようになりました。「お客さまが待ってるから早めに出して」というやり取りが自然に増えた、とオーナーは話していました。
そして3ヶ月後の数字として出てきたのが、半年以内の離職率が導入前比で約4割減少という結果でした。採用コストに換算すると、相当な額の節約になります。
「モバイルオーダーの導入で、お客さまからLINE友だちが増えて、再来店客数も含めた来店者総数が伸びました。スタッフのモチベーションが上がると、接客の質も上がるんですよね」
飲食店オーナー(40代・男性)
✓ ここまでのポイント
- 離職の主原因は「評価されていない実感」であり、給与だけでは解決しない
- 「推しエール(投げ銭)」はお客さまからの承認をスタッフ個人に直接届ける仕組み
- 導入後、スタッフ間の自発的な行動変容と離職率の低下が起きた事例がある
投げ銭だけに頼らない——定着率を上げる3つの視点
ただし、推しエールは「魔法の道具」ではありません。仕組みとして機能させるには、周辺の設計も大事です。支援先の事例をもとに、定着率改善に効いた3つの視点を整理しておきます。
チェックポイント1:承認の仕組みがあるか
スタッフが「自分の仕事が誰かに届いている」と感じられる機会を、意図的に設計しているか。口頭の褒め言葉だけでなく、数値として残る仕組みがあるかどうかを確認してください。
✅ ポイント:推しエールのような可視化ツールを使い、個人の貢献を「記録が残る形」で承認する仕組みを取り入れる。
チェックポイント2:評価基準がスタッフに共有されているか
「何をすれば評価されるか」が明文化されていない職場では、スタッフは動き方に迷います。QSCスコア(接客・料理品質・提供速度・清潔感の数値化)を活用し、評価の軸を全員が理解している状態にすることが前提になります。
✅ ポイント:感覚的な「頑張れ」を、測定可能なスコアに置き換える。数字に基づいた面談は精神論にならない。
チェックポイント3:業務負担がスタッフに偏っていないか
人手不足のまま営業を続けていると、残っているスタッフへの負担が増え続けます。モバイルオーダーによってオーダーテイクや配膳コールの手間を軽減し、「接客に集中できる時間」をスタッフに返すこと自体が、定着率の改善につながります。
✅ ポイント:業務の「量」を減らしてから「質」を高める順番で考える。
❌ よくある失敗パターン
- 時給を上げることで離職問題を解決しようとし、根本原因(評価・承認・業務負担)に手をつけない
- 投げ銭機能を導入しただけで終わり、スタッフへのフィードバックや評価制度との連動ができていない
- システムを入れたが現場に定着せず、1〜2ヶ月で使われなくなる
✅ 推奨アプローチ
- 推しエールによる承認の可視化 → QSCスコアによる評価基準の明確化 → 業務負担の軽減(モバイルオーダー)を3点セットで設計する
- 90日間の定着支援を前提に、現場スタッフへの説明・運用設計まで含めて進める
まとめ——「報われる実感」が、チームを変える
結論から言うと、離職率を下げたいなら「給与」より先に「承認の仕組み」に手をつけるべきです。
飲食店経営者の方にとって、スタッフを育てて辞められることは、採用コストだけでなく、現場のオペレーション品質にも直撃します。特に多店舗展開を考えているなら、スタッフが定着する仕組みがない状態で出店数を増やしても、足元が崩れるだけです。
今回ご紹介した事例は、モバイルオーダーという「業務効率化のツール」が、実は「スタッフ定着の仕組み」としても機能した、という話でした。ツールを入れて終わりではなく、その先の「どう使うか」の設計が、成果の差を生みます。
弊社では、ダイニーの正規代理店として、システムの導入だけでなく、導入後90日間の定着支援まで一体でサポートしています。「以前にタブレットを入れたが誰も使わなかった」という経験がある方にこそ、一度話を聞いてほしいと思っています。
推しエールの設定方法や、スタッフ定着率改善の具体的な進め方について、お気軽にご相談ください。