先日、静岡から東京に出張した帰りの新幹線の中で、関西で焼肉店を3店舗経営しているオーナーからメッセージが届きました。
「先生、売上は過去最高なのに、手元に全然お金が残らないんです。何かがおかしいとは分かっているんですが……」
こんにちは、ハワードジョイマンです。
このご相談、ここ2〜3年で本当に増えました。コロナ明けで客足は戻り、売上の数字は右肩上がり。なのに経営者の顔が晴れない。その理由を一緒に探っていくと、たいていの場合、答えは「売上の増え方」の中に隠れています。
今回は、飲食店の売上アップを考えるときに見落とされがちな4つの視点について、私がクライアントとの対話の中で実際に使っているフレームをもとに書いていきます。「もっと売上を上げたい」より先に、「今の売上の質を知る」ことが、結果として一番の近道だからです。
こんな方におすすめ
- ✅ 売上は伸びているのに利益が残らないと感じているオーナー
- ✅ グルメサイトへの掲載料・手数料が増え続けていることが気になっている方
- ✅ 2号店・3号店を考えているが、1号店の成功を再現できるか不安な方
- ✅ 広告費を削っても客数を維持できる仕組みをつくりたい方
- ✅ 電話対応やピーク時の人手不足で予約を取りこぼしている方
📋 この記事でわかること
- 売上アップより先に確認すべき「利益の質」の見方
- グルメサイト依存が招く「売上は増えるが利益は減る」構造の正体
- 電話不応答・予約取りこぼしが月間利益に与えるリアルな影響
- 多店舗展開で失敗しないために「今の1店舗」でやるべきこと

視点①:「売上の増加」と「利益の増加」は別物である
先の焼肉店オーナーのケースに戻ります。詳しく話を聞くと、3店舗すべてで食べログとホットペッパーグルメに掲載していて、予約が増えるたびに送客手数料が膨らんでいることが分かりました。
飲食店のグルメサイト手数料は、客1人あたりの変動費として積み上がります。売上が上がれば上がるほど手数料も増える。しかも掲載料という固定費はそのまま残る。この二重構造が、「売上最高更新・利益は横ばい」という状態を生み出すのです。
「私はよく、グルメサイトを『便利な入口』ではなく『使うたびに通行料がかかる橋』と表現しています。橋を渡ること自体が悪いのではなく、自分の橋を持っていないことが問題なんです」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・増益繁盛クラブ主宰)
まず確認してほしいのは、「1予約あたり実質いくら払っているか」という数字です。掲載料 ÷ 月間予約数に、1件あたりの送客手数料を足す。この数字を出したことがないオーナーは、思いのほか多いのです。
視点②:取りこぼしている予約を「金額」で把握する
売上アップを語るとき、多くの経営者は「新規客をどう増やすか」を考えます。でも私が先に確認するのは、「今すでに来ようとしているお客様を、いくら逃しているか」です。
飲食店の電話不応答率は、業界平均で約20%というデータがあります(株式会社エビソル「ebica」予約データ、利用店舗100店平均)。つまり10件に2件は、かかってきた電話に出られていない。ピークタイムはさらに高くなります。
チェックポイント1:電話不応答による月間機会損失額の試算
月間平均入電件数 × 不応答率(20%が目安)× 予約電話の割合 × 平均グループサイズ × 客単価——この計算式で、逃している売上が金額として浮かび上がります。
✅ ポイント:「そんなに電話は来ていない」と感じていても、実際にカウントすると驚くオーナーが多い。まずは1週間だけ着信件数と折り返しができなかった件数を記録してみてください。
チェックポイント2:自社サイトの予約導線は機能しているか
ホームページに予約ボタンはあるのに、グルメサイト経由の予約と比べてほぼ使われていない——このパターンもよく見ます。理由の多くは、在庫の分割問題です。ダブルブッキングを恐れてサイトごとに席の枠を分けていると、自社フォームに割ける席数が少なくなり、「空席なし」「リクエスト予約」という表示になってしまう。構造的に自社導線が負けています。
✅ ポイント:予約在庫を一つのプールに統合し、全媒体と自社フォームで同じ在庫を共有することが解決の起点になります。
✓ ここまでのポイント
- 売上増加と利益増加は別物。グルメサイトの手数料構造を「1予約あたりのコスト」で把握することが先決。
- 取りこぼしている予約を金額で試算すると、広告費をかける前にやるべきことが見えてくる。
- 自社予約フォームが機能していない根本原因は「在庫の分割」にあることが多い。
視点③:リピーターを「グルメサイトの客」にしない
一度来てくれたお客様が次もグルメサイト経由で予約してくる——これが続く限り、手数料は永遠に発生し続けます。1回目はまだしも、何度も来てくれる常連さんの予約にまで手数料を払い続けるのは、正直もったいない。
増益繁盛クラブの会員さんの中には、リピート率を38%から71%まで引き上げながら、同時に自社経由の予約比率を高めることで広告費を大幅に圧縮したオーナーがいます。
「グルメサイト経由で来たお客様は、次も媒体から来ます。それはあなたのお客様ではなく、媒体のお客様です。予約時に連絡先や来店履歴を取得して、次は直接つながれる状態にする——この一手が、数年後の利益の差になります」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・増益繁盛クラブ主宰)
予約時に取得した顧客情報は店舗に帰属します。来店履歴・好み・アレルギー情報を台帳として蓄積し、LINEや自社導線でダイレクトにつながることで、「媒体の客」を「自分の店の客」に転換していくことができます。
「月商300万円で始めた頃は、正直このまま続けられるか不安でした。でも仕組みが整ってからは、広告を追いかけるより、来てくださったお客様を大切にする方が、ずっと効率よく売上が上がるということが実感できました」
飲食店経営者(会員・現在は年商2億5,000万円規模まで成長)
視点④:多店舗展開の「再現性」は今の1店舗にある
2号店、3号店を出したい——でも、1号店と同じ結果が出るか不安。このご相談は、繁盛しているオーナーほど抱えています。
1号店がうまくいっている理由のほとんどは、オーナー自身の判断力・人当たり・目配りです。それは才能です。そして才能はコピーできません。
❌ よくあるパターン:「同じことをやれば同じ結果になる」と思って出店する
- 1号店でオーナー自身がやっていた判断を、スタッフが再現できない
- 「なんとなくうまくいっていた理由」が言語化されていないため、引き継ぎができない
- 2号店が軌道に乗らず、1号店にも手が回らなくなる
✅ 推奨アプローチ:出店前に「勝ちパターン」を仕組みに翻訳する
- 配席の勘を「配席ルール」として文書化し、新人でも同じ動きができる状態にする
- 顧客情報を台帳に蓄積し、スタッフ全員が同じ接客情報にアクセスできるようにする
- 本部から各店の予約・空席状況をリアルタイムで確認できる環境を整える
多店舗展開で失敗するのは、立地より先に「再現性の欠如」であることがほとんどです。出店の意思決定は、今の1店舗の仕組み化が整ってからでも遅くはありません。
まとめ:売上アップより先に「売上の質」を問う
4つの視点を整理します。
①グルメサイトの手数料構造を1予約あたりのコストで把握する。②電話不応答・自社フォームの取りこぼしを金額で可視化する。③リピーターを媒体経由から自社直接つながりに転換する。④多店舗展開の前に今の店舗の勝ちパターンを言語化する。
どれも「もっと集客すれば解決する」という発想とは逆方向です。でも私が21年間、飲食店を中心に610件以上のオーナーと向き合ってきた経験から言うと、この4つを順番に整えていった店は、広告費をかけずに利益が伸び始めます。
「がんばらない繁盛」というのは手を抜くことではなく、がんばる方向を間違えないことです。
もし「自分の店は今どの状態にあるのか」を客観的に確認したい方は、予約・集客の現状診断からスタートするのが一番早いと思います。グルメサイト依存度・電話不応答率・自社集客率・Google予約導線の4つの指標で現状を可視化し、「どこから手をつければ利益が伸びるか」を一緒に整理していきます。
まずはお気軽にご相談ください。お待ちしております。