こんにちは、ハワードジョイマンです。
「2号店を出したのに、手元に金が残らない」
「店舗数は増えたのに、休みが減った」
「スタッフは増えたのに、自分が一番忙しい」
こういう悩みを抱えたまま3号店、4号店と出し続けて、気づいたら朝から晩まで現場を走り回っているオーナーを、私はこの21年で何人も見てきました。
今日お話しするのは、そういう状況から「多店舗展開をいったん止める」という判断をしたオーナーの話です。ただ、この話のタイトルを「やめた」にしたのには理由があります。やめた先に、失ったものではなく、取り戻したものがあったからです。
こんな方におすすめ
- ✅ 店舗数を増やしても利益が残らず、疲弊しているオーナー
- ✅ 2号店・3号店が思うように伸びず、原因が分からない方
- ✅ 売上は伸びているのに手元にお金が残らないと感じている経営者
- ✅ 「このまま拡大してよいのか」と立ち止まって考えたい方
- ✅ 家族との時間や自分の時間を、経営の中に取り戻したいオーナー
📋 この記事でわかること
- 多店舗展開で「売上は伸びたのに利益が消えた」理由の構造
- 展開をやめたオーナーが実施した「1店舗立て直し」の具体的手順
- 取り戻せたもの——数字だけでは測れない経営の質の変化
- 再現性のある「1店舗で多店舗分の利益を出す」考え方

「もっと大きくしなければ」という呪縛
今回ご紹介するのは、関西圏で焼肉店を3店舗展開していたオーナー(以下、Aさん)です。1号店の月商は700万円超。地元では「あの店は繁盛している」と評判でした。
2号店を出したのは1号店開業から3年後。その翌年には3号店。周囲からは「すごいですね」と言われ続けていた。でも、Aさんの手元に残るお金は1号店だけのときより、明らかに少なかった。
なぜか。理由はシンプルでした。
グルメサイトへの掲載料と送客手数料が、3店舗ぶん積み上がっていたのです。1店舗では許容範囲だったコストが、3店舗になると3倍。しかも売上が3倍になるわけではない。利益は比例して増えない一方で、費用は比例して増える——この構造に、Aさんは気づいていませんでした。
「店舗数を増やすことと、利益を増やすことは、まったく別の話です。依存している構造を直さないまま店を増やすことは、赤字を複製しているのと同じです」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・利益倍増アドバイザー)
Aさんが私のところに相談に来たとき、最初の言葉が印象的でした。「先生、もう拡大はしなくていいかもしれない」。そう言いながら、どこか安堵したような顔をしていました。
何が利益を食いつぶしていたのか——課題の構造
まず、Aさんの3店舗の予約・集客状況を整理しました。すると、問題点が4つ浮かび上がりました。
チェックポイント1:グルメサイト依存度
3店舗合計の予約のうち、グルメサイト経由が約75%。残りの25%が電話(直接)と自社ホームページ。自社サイトには予約フォームがあるのに、ほとんど使われていませんでした。
✅ ポイント:「1予約あたりいくら払っているか」を媒体別に算出することから始める。実質手数料が見えると、次の打ち手が決まる。
チェックポイント2:電話不応答率
ピーク時間帯に電話が取れていない。確認したところ、3店舗合計で月間の電話不応答率は約22%。飲食店の平均(約20%)とほぼ同水準でしたが、3店舗あると取りこぼしの絶対数が大きく膨らみます。月間機会損失額を試算すると、3店舗合計で相当の金額になっていました。
✅ ポイント:月間入電数 × 不応答率 × 予約電話割合 × グループサイズ × 客単価で機会損失額を数字にする。感覚ではなく、金額で見ることで優先順位が変わる。
チェックポイント3:在庫の分割管理
複数のグルメサイトでダブルブッキングを防ぐため、席在庫をサイトごとに分割していました。その結果、どのサイトでも「残席わずか」に見え、当然ながら自社フォームには最小限の枠しか割り当てられていない。機会損失を生む原因がここにありました。
✅ ポイント:在庫の分割こそが機会損失の正体。統合すれば、自社フォームもグルメサイトと同じ在庫で戦える。
チェックポイント4:顧客情報の属人化
1号店の常連客の情報は、Aさんの頭の中だけにありました。3店舗目には引き継ぎようがない。「うちのスタッフは接客が雑」という悩みの正体は、スタッフの問題ではなく、情報が渡っていないことでした。
✅ ポイント:来店履歴・好み・アレルギーを顧客台帳に蓄積し、誰でも呼び出せる状態にする。属人化した接客は、店舗が増えた瞬間に破綻する。
✓ ここまでのポイント
- グルメサイト依存は「1店舗なら許容範囲」でも、多店舗になると比例して費用だけが膨らむ構造になる
- 電話不応答・在庫分割・顧客情報の属人化という3つの穴が、利益を静かに漏らし続けていた
- 問題は経営者の能力ではなく、「仕組みが言語化・標準化されていなかった」こと
実施した施策——「止める」前に「整える」
Aさんは4号店の出店準備を進めていましたが、私からの提案は「出す前に、今ある3店舗の仕組みを整えましょう」でした。出店を「やめた」のではなく、「後回しにした」というのが正確です。
多店舗立て直し STEP 1
予約の一元管理と在庫の統合
まず予約管理システム「ebica」を3店舗に導入し、複数のグルメサイトの在庫を一つのプールに統合しました。ダブルブッキングはシステムが防ぐので、店舗ごとに在庫を分割する必要がなくなります。自社サイトの予約フォームにもフル在庫を開放し、手数料ゼロの予約導線を初めてまともに機能させました。
⚠️ よくある失敗:「どれかのサイトに多めに在庫を入れれば解決する」と思いがちですが、根本的な解決にはなりません。在庫を統合する仕組みが先です。
多店舗立て直し STEP 2
電話不応答をAIで補完する
ピーク時間帯の電話対応をebicaのAIレセプション機能に移行。当日予約・翌日以降の予約・キャンセルまでをAIが応対し、遅刻連絡やその他の問い合わせのみ店舗に転送する形にしました。スタッフが目の前のお客様に集中できる時間が増えました。
⚠️ よくある失敗:「うちのお客様はAIでは嫌がる」と思い込んで導入を見送るケース。実際には「24時間いつでも予約できる」ことを喜ぶお客様が多い。
多店舗立て直し STEP 3
顧客台帳の整備と引き継ぎルールの標準化
Aさんの頭の中にあった常連客の情報を、顧客台帳として記録・運用できる形にしました。電話予約時に顧客情報を自動で呼び出し、スタッフが接客に活かせるようにする。「オーナーがいないと接客の質が落ちる」状態から抜け出す第一歩です。
⚠️ よくある失敗:情報を記録するルールを決めても、現場が入力しなければ意味がない。入力が「作業」ではなく「接客の一部」になる設計にすることが大切です。
多店舗立て直し STEP 4
媒体の見直し——数字が出てから切る
在庫統合後、媒体ごとの予約流入比率を3ヶ月間測定しました。「切ったら客が消える」という恐怖の正体は、判断材料がないことです。数字が出てから、比率の低い媒体から順に見直しを始めました。
⚠️ よくある失敗:数字を見る前に「あの媒体は効果がある気がする」という感覚で判断してしまう。感覚と数字が逆のケースは珍しくありません。
Aさんが取り戻したもの——数字と、それ以外
施策開始から約8ヶ月後。3店舗の合計売上はほぼ横ばいでしたが、グルメサイトへの支払いが大幅に減り、手元に残る利益が明確に増えていました。「売上は同じなのに、なんか楽になった」というのがAさんの感想でした。
数字の変化だけではありませんでした。
Aさんが「取り戻した」と口にしたのは、週末に子どもの試合を見に行ける時間でした。以前は土日こそ一番忙しく、家族行事をずっと後回しにしていた。仕組みを整えることで現場への依存が減り、スマートフォンで各店の予約状況を確認しながら、自分がいなくても回る体制ができてきた。
「拡大の目的を『店舗数』に置くのか、『利益と時間』に置くのか——そこを整理するだけで、やるべきことが180度変わります。どちらが正解というわけではない。ただ、目的を曖昧にしたまま走り続けると、増やすことが目的になってしまう」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・利益倍増アドバイザー)
その後、Aさんは「仕組みが整ったら4号店に挑戦する」と言っています。止めたのではなく、順番を変えた。それだけの話でした。
「1号店の成功を仕組み化してから展開することで、2号店・3号店でも再現できるようになりました。以前は自分の勘だけで動いていたので、どこで何が起きているか把握できていなかったんです」
焼肉店オーナー・40代男性
再現性のあるポイント——「1店舗で勝てる構造」を先に作る
Aさんの事例から取り出せる、汎用性のある考え方があります。
❌ よくあるパターン:「まず出店して、走りながら整える」
- 1号店の成功要因が言語化されていないため、2号店は再現できない
- グルメサイト依存の構造を複製するため、手数料だけが積み上がる
- オーナーの「勘」に依存した接客は、新店舗に持ち込めない
✅ 推奨アプローチ:「1店舗の仕組みを整えてから、コピーする」
- 予約の流入経路・在庫管理・顧客台帳を標準化することで、新店がスタートから同じ品質で運営できる
- 自社集客率という指標を持つことで、媒体依存度を客観的に把握・改善できる
- 電話不応答・ダブルブッキングリスクをシステムで解決してから出店するため、人手不足でも拡大できる構造になる
増益繁盛クラブの会員さんの中には、月商300万円からスタートして、年商2億5,000万円規模まで成長した方もいます。ただ、そういった方々に共通しているのは「いきなり店を増やした」のではなく、1店舗で再現性のある仕組みを作ってから展開したという点です。
まとめ——「やめた」ではなく「順番を変えた」
多店舗展開を止めたAさんが取り戻したのは、利益と時間でした。そして「仕組みが整ったら、また出す」という選択肢も取り戻した。
拡大自体が間違いだったわけではありません。順番が逆だっただけです。
「売上は伸びているのに手元にお金が残らない」「店舗を増やしても自分の時間が減るだけ」——そう感じているなら、今の予約・集客の構造を一度外側から見てみることをおすすめします。
当社では、グルメサイト依存度・電話不応答率・自社集客率・Google予約導線の有無を4つの指標で可視化する無料診断をご用意しています。「今、どこから手をつければ利益が残るか」を、数字を見ながら一緒に整理させてください。
ご相談はお気軽にどうぞ。あなたのお店の状況を聞かせてください。