「今月も売上は過去最高なのに、なぜか手元に金が残らない。」
そういう電話が事務所に入るのは、決まって月初の数日間です。前月の売上を締めて、帳簿をざっくり見た後。着信音が鳴るたびに、受話器の向こうで声のトーンが少し落ちているのがわかります。
こんにちは、ハワードジョイマンです。静岡市清水区の有限会社繁盛店研究所で、飲食店をはじめとする店舗経営者のコンサルティングをしています。今日は私の一日の動きを追いながら、「グルメサイトの集客が落ちてきた」と感じているオーナーの方に向けて、市場で今何が起きているのかをお伝えしたいと思います。
こんな方におすすめ
- ✅ 売上は伸びているのに利益が残らないと感じている飲食店オーナー
- ✅ 2店舗目・3店舗目を出したが、思うように利益が出ていない方
- ✅ グルメサイトの手数料負担が重くなってきたと感じている方
- ✅ グルメサイトへの依存を減らしたいが、何から手をつければよいかわからない方
- ✅ 「自社集客率」という考え方を初めて知りたい方
📋 この記事でわかること
- なぜ「売上増・利益減」という現象が起きるのか、その構造的な原因
- グルメサイト市場で今起きていること、そして依存から抜け出すタイミング
- 「自社集客率」の測り方と、月次で追うべき理由
- 集客構造を作り直す具体的なステップ

朝8時。今日もまず「利益の現場」を確認するところから始まる
静鉄新清水駅から歩いて1分の事務所に着くのは、たいてい朝8時前後です。コーヒーを入れながら、まず前日に届いたメール相談に目を通す。そこに今日も一通、こんな内容がありました。
「2店舗目を出して1年が経ちました。合計売上は1号店のときの2倍になったのに、なぜか毎月の手取りが増えていないんです。食べログとホットペッパーの両方に出しているので、お客様は来ているはずなのですが……」
読みながら、7〜8年前に同じ内容の相談を受けたことを思い出しました。あのときの焼肉店のオーナーも、同じ言い方をしていた。「お客様は来ているはずなのに」という言葉の裏には、「来ているのになぜ」という、問いの立て方そのものに少しズレがあるんです。
問題は「客が来ているかどうか」ではなく、「その客を誰が連れてきたか」にある。
グルメサイトの送客手数料は、店舗数に比例して増える
グルメサイトの掲載料は固定費ですが、送客手数料は予約1件ごとに発生する変動費です。1店舗でその構造を抱えているうちは、ある程度コントロールできる。問題は、2店舗目・3店舗目を出したときです。
送客手数料は店舗数に比例して増えますが、集客力は比例しません。1号店で「食べログからの予約が月100件」だったとしても、2号店が同じ商圏の近くにあれば、パイを食い合うだけです。それでも手数料は2店舗分かかる。
結論から言うと、依存構造を直さずに店を増やすことは、赤字の仕組みをそのままコピーすることと同じです。
「売上が2倍になっても、利益が2倍にならないのは当たり前です。集客のコストが先に2倍になっているんだから。大事なのは、何を使って客を集めているかの構造を変えることです」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・経営コンサルタント)
私が飲食店の支援を始めて21年になりますが、「店を増やしたのに手元に残らない」という相談は、この10年で明らかに増えています。それはグルメサイトへの依存度が高い経営者ほど、出店のたびにコスト構造が悪化しやすいからです。
チェックポイント1:1予約あたりの実質コストを計算したことがあるか
掲載料(月額固定)÷ 媒体経由の月間予約件数 + 送客手数料単価 = 1予約あたりの実質コスト。この数字を出したことがないオーナーは、まず今日計算してみてください。1組3,000円台の客単価の店で、1予約あたり500〜800円以上払っているケースは珍しくありません。
✅ ポイント:計算してみると「高い・安い」の感覚論から、「この媒体は続けるべきか否か」の判断論に変わります。数字が出れば、動けます。
チェックポイント2:自社集客率(手数料のかからない予約の比率)を測っているか
全予約のうち、グルメサイトを経由していない予約の割合を「自社集客率」と呼んでいます。自社ホームページ・Google・LINE・電話(媒体経由でない直接電話)からの予約がこれに当たります。この比率を月次で追っている店は、媒体の見直しに踏み切れます。追っていない店は、切るに切れない。
✅ ポイント:「どの媒体を止めても大丈夫か」は感覚では判断できません。自社集客率という指標を持つことが、依存脱却の第一歩です。
✓ ここまでのポイント
- 送客手数料は店舗数に比例して増えるが、集客力は比例しない。出店が赤字を複製するリスクがある
- 1予約あたりの実質コストを算出することで、媒体の継続・停止の判断が数字でできるようになる
- 「自社集客率」を月次で追うことが、グルメサイト依存脱却の具体的なスタートライン
午後1時。会員さんとのオンライン面談で「市場の変化」の話になった
昼過ぎからはオンライン面談が2件入っていました。1件目は、関東で居酒屋を3店舗展開しているオーナー。開口一番、「最近、食べログからの予約が減ってきた気がする」という話になりました。
これは感覚ではなく、実際にデータで見えてきていることです。グルメサイトへのアクセスが横ばいから微減に転じている媒体がある一方、Google検索経由の「店名直接検索」や「エリア+ジャンル検索」は増えています。スマートフォンでの検索行動が変わり、地図アプリやGoogle検索から直接予約導線に入るユーザーが増えている。
市場が動いているんです。お客様の「予約経路」が静かに変化している。
❌ 今もグルメサイト頼みのままでいる(よくあるパターン)
- 掲載料・送客手数料が固定費として積み上がり続ける
- 媒体のアルゴリズム変更や競合店の増加に業績が左右される
- 自社には顧客データが残らず、次の一手が打てない
✅ 自社集客の受け皿を整える(推奨アプローチ)
- Googleビジネスプロフィール・自社サイト・LINEに予約導線を設置し、手数料ゼロの予約を受け取れる状態をつくる
- 予約データが自社に蓄積され、顧客台帳として活用できるようになる
- 自社集客率が上がった媒体から順に見直し、広告費が利益に変わっていく
この話をすると、オーナーから必ず出てくる質問があります。「媒体を止めたら、その分の予約が消えませんか」と。
消えることもあります。でも、消えるのは「媒体の客」です。あなたの店に惚れて来ている客は、あなたの店を直接探してくれます。そのための受け皿が整っていれば、媒体の客を失っても、自分の客は守れる。
午後3時。「リピート率38%から71%」になった会員さんの話
2件目の面談は、カフェを1店舗経営している女性オーナーでした。1年ほど前から増益繁盛クラブに入会いただいていて、この方が実践したのが「自社集客率の改善」です。
「リピート率が38%から71%になりました。グルメサイトからの新規客を減らしたわけじゃなく、一度来てくれた方が直接予約してくれる割合が増えたんです。」
増益繁盛クラブ会員・カフェ経営(40代・女性)
この方がやったことは、実はシンプルです。グルメサイト経由で来てくれたお客様に、次回から直接予約できる導線(自社サイトとLINE)を丁寧に案内した。それだけです。2回目以降の予約に手数料がかからなくなったことで、客単価はほぼ変わらないのに手元に残る利益が変わった。
「集客を増やす」のではなく、「集客の構造を変える」。この発想の転換が、利益を変えます。
夜9時。今日1日で見えてきたこと
事務所を出る前に、今日届いた相談メールの返信を書き終えました。朝の相談者——2店舗経営のオーナー——に向けて、こう書きました。
「まず1号店の自社集客率を計測してください。全予約のうち、グルメサイトを経由していないものが何件あるかを数えるだけです。その比率が20%を超えていれば、2号店の集客構造を作り直す素地があります。20%未満なら、2号店の出店より先に、1号店の構造を直すことが優先です」
飲食店の支援実績610件を重ねてきて確信しているのは、「出店の順番」を間違えると取り返しがつきにくいということです。1号店の勝ちパターンが言語化されていないまま、2号店に旗を立てても、赤字構造をそのままコピーするだけになる。
集客構造を作り直す STEP 1
現状の予約流入経路を「媒体別」に数える
まず1か月分の予約台帳を開き、「食べログ経由」「ホットペッパー経由」「自社サイト経由」「電話(直接)」「Google経由」などに仕分けてみてください。手書き台帳でも構いません。この仕分けが、自社集客率の原点です。
⚠️ よくある失敗:「システムを入れてから計測しよう」と先送りにしてしまい、何ヶ月も現状が見えないままになる。ツールがなくても手作業で計測できます。まず数えることを先にしてください。
集客構造を作り直す STEP 2
自社予約の「受け皿」を一か所だけ整える
Googleビジネスプロフィールに予約ボタンが設置されているか確認してください。設置されていない、またはグルメサイトに飛ぶ設定になっている場合、最も予約意欲の高い「店名検索」からの流入を、手数料のかかる媒体に渡し続けていることになります。
⚠️ よくある失敗:「受け皿」をあれもこれもと一気に作ろうとして、どれも中途半端になる。まず1か所だけ、確実に機能する導線を作ることが先です。
集客構造を作り直す STEP 3
自社集客率を月次の指標として追い始める
全予約件数のうち、自社経由の件数÷全体×100が「自社集客率(%)」です。この数字を毎月1回記録するだけで、媒体の見直し判断が数字でできるようになります。目標は最初から高く設定しなくていい。現状を把握することが目的です。
⚠️ よくある失敗:自社集客率が上がっても、媒体を止めるタイミングを逃し続ける。「少し増えたら見直す」という基準を、あらかじめ自分で決めておくことが重要です。
まとめ——「市場が動いている」今こそ、構造を見直すタイミング
グルメサイトの集客が落ちてきた、という感覚は間違っていません。実際に、お客様の予約経路は静かに変わっています。問題は、市場の変化に気づきながら、依存構造はそのままにしているケースが多いことです。
売上が伸びているのに手元に残らないなら、それは集客の量の問題ではなく、集客のコスト構造の問題です。出店の前に、1店舗の構造を直す。自社集客率という指標を持ち、月次で追う。それだけで、同じ売上から残る利益が変わり始めます。
私自身、独立直後に全財産が底をついた経験があります。あのとき一番つらかったのは、どこに問題があるかがわからなかったことでした。だからこそ、「まず現状を数字で見る」ことの価値を、21年間言い続けています。
今すぐ全部やり直す必要はありません。でも、今日から「自社集客率」という言葉を頭の片隅に置いておいてください。その小さな意識の変化が、半年後・1年後の利益を変えます。
グルメサイト依存の現状を一度整理してみたい、という方は、まず無料の現状診断からお気軽にどうぞ。どの媒体に、毎月いくら払っていて、どのくらい取りこぼしているかを一緒に確認することから始めます。