「売上は前年比105%なのに、通帳の残高が全然増えない……」
そんな経験、ありませんか?
この状況に陥っているオーナーさんのほとんどが、FLコストの管理を「なんとなく」でやっています。月次の試算表が翌月中旬に届いて、「あ、また原価率が上がってる」と気づく。でも、どのメニューが原因か特定できない。人件費も感覚でしか把握していない。
こんにちは、ハワードジョイマンです。静岡市清水区を拠点に、飲食店の利益構造改善を専門とする中小企業診断士として、21年・610件以上の飲食店支援に携わってきました。
今回は「FLコストの適正値」と「改善の具体的な手順」を、順を追って解説します。数字が苦手な方でも動けるように、ステップ形式でまとめましたので、ぜひ最後まで読んでみてください。
こんな方におすすめ
- ✅ 売上は伸びているのに利益が手元に残らないと感じている方
- ✅ FLコストという言葉は知っているが、正確な計算方法が分からない方
- ✅ 原価率や人件費を「月次」ではなく「日次」で管理したい方
- ✅ 複数店舗を運営していて、店舗ごとの数字のばらつきが気になる方
- ✅ 過去にITツールを導入したが定着しなかった経験がある方
📋 この記事でわかること
- FLコストとは何か、適正値の目安
- F(食材原価)とL(人件費)それぞれの改善ポイント
- 日次でFLコストを可視化するための仕組みづくりの手順
- 改善効果を定着させるためのPDCAの回し方

FLコストとは何か、まず「定義」を揃える
FLコストとは、F(Food Cost=食材原価)とL(Labor Cost=人件費)を合わせたコストのことです。飲食店の経営において、最も大きな変動費のかたまりがこの2つです。
FL比率は次の計算式で求められます。
FL比率 =(食材原価 + 人件費)÷ 売上高 × 100
一般的に、飲食店のFL比率の目安は55〜60%以下とされています。業態によって若干異なりますが、この水準を超えると家賃・光熱費・リース料・広告費などの固定費を吸収できず、営業利益が残りにくくなります。
チェックポイント①:自店のFL比率を今すぐ計算できるか
先月のデータで「食材原価÷売上」「人件費÷売上」をそれぞれ出してみてください。電卓1つあれば5分でできます。F単独で30%台後半、L単独で25%前後に収まっているかが最初の確認点です。
✅ ポイント:データがすぐに出てこない場合、それ自体が問題の入口です。「月次の試算表が来るまで分からない」という状態では、コストが悪化してから手を打つことになります。
チェックポイント②:F・Lを別々に管理しているか
FLをまとめて見るだけでは、「どちらが悪化しているのか」が見えません。今月はFが改善してLが悪化したのか、両方が少しずつ膨らんでいるのか。分解して追うことが改善の前提です。
✅ ポイント:原価率とシフト工数を別々のシートで管理し、毎週集計する習慣をつけることが第一歩です。
F(食材原価)を改善する手順
F改善 STEP 1
メニューごとの粗利を「見える化」する
売上が高いメニューが、必ずしも利益が高いわけではありません。よく出るのに原価率40%超のメニューがある一方、出数は少なくても原価率25%のメニューが存在することがよくあります。まず全メニューの「出数・売上・原価額・粗利」を一覧化することから始めてください。
⚠️ よくある失敗:人気メニューを値上げして客離れを恐れ、高原価メニューを温存し続けること。値上げではなく「売るメニューの優先順位を変える」という発想が有効です。
F改善 STEP 2
ABC分析で「儲け筋」と「コスト食い」を仕分ける
出数・売上・粗利・リピート率の4軸でメニューをA・B・Cにランク分けします。AランクはそのままPRし、Cランクは改廃か仕入れ価格の見直しを検討します。増益繁盛クラブの会員さんの中には、このABC分析でメニュー数を絞った結果、原価率が3ポイント以上改善したケースも複数あります。
⚠️ よくある失敗:分析を一度やって終わりにすること。仕入れ価格は市況で変動するため、季節ごとに見直す仕組みが必要です。
F改善 STEP 3
発注量・廃棄・仕込みロスを数値で追う
帳簿上の原価率だけでなく、「実際に使った食材」と「理論原価」のズレを測ります。このズレが大きい場合、廃棄ロスか盛り付けのブレが疑われます。週次でキッチンリーダーと数字を確認するだけで、意識が変わり改善に向かうことが多いです。
⚠️ よくある失敗:スタッフへの指摘が感情論になること。「先週より廃棄が〇%増えた」と数字で話すことで、建設的な議論になります。
L(人件費)を改善する手順
L改善 STEP 1
時間帯別の売上と投入人員を突き合わせる
ランチの売上が夜の半分なのに、投入人員がほぼ同じ——という状況は珍しくありません。まず時間帯別の売上と人時売上(売上÷労働時間)を出してみてください。どの時間帯がコスト過多かが見えてきます。
⚠️ よくある失敗:シフトを「慣例」で組むこと。「いつもこの時間はこのメンバー」が積み重なると、需要と供給のミスマッチが固定化します。
L改善 STEP 2
「採用で解決」の発想を手放す
地方・郊外では有効求人倍率が高く、募集をかけても応募がゼロというケースが増えています。人が採れない前提で、オーダーテイクや会計業務の一部を「仕組み」に置き換える発想が有効です。ホール1名分の業務を省力化できれば、その原資を既存スタッフへの待遇改善に回せます。
⚠️ よくある失敗:省人化イコール接客の質を下げると思い込むこと。注文を取る時間を削り、お客さまとの会話に時間を使う方が、スタッフの満足度も上がることが多いです。
✓ ここまでのポイント
- FL比率は55〜60%以下が目安。FとLを分解して別々に管理することが前提
- F改善はメニューの粗利可視化→ABC分析→ロス管理の順に進める
- L改善は「人を増やす」ではなく「業務を仕組みに置き換える」発想が鍵
「売上が増えているのに利益が残らないオーナーさんの多くは、FLコストを月1回しか見ていません。問題は月末に発覚するのではなく、毎日少しずつ積み上がっているんです。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所)
日次でFLコストを可視化する仕組みをつくる
F改善・L改善を手順通りに進めても、データが月末にしか見えなければ、打ち手はいつも後手になります。「先月何を間違えたか」を翌月中旬に知る——多くのオーナーさんが同じ状況です。
仕組み化 STEP 1
POS・原価管理・勤怠を1つのデータ基盤につなぐ
売上はPOS、原価はExcel、勤怠は別会社のシステム——という状態では、担当者が突合するだけで数日かかります。この3つを統合することで、日次での利益概算が自動で出るようになります。
⚠️ よくある失敗:システムを導入して終わりにすること。現場スタッフが正しく入力しないと、データ自体が信用できなくなります。定着支援がセットでなければ意味がありません。
仕組み化 STEP 2
「今月の着地」を週次で予測する習慣をつくる
日次データが揃えば、月末着地の予測が週次でできるようになります。「このペースで行くと原価率が2ポイント悪化する」と10日前に分かれば、仕入れ量の調整やメニューのプッシュ切り替えで手が打てます。
⚠️ よくある失敗:予測データが出ても「確認だけ」で終わること。数字を見た翌日に1つアクションを決める、というルールを店長レベルで共有することが重要です。
「モバイルオーダーの導入により、注文点数がアップしました。スタッフが注文を取りに回る回数が減り、その分テーブルへの声かけに時間を使えるようになったのが大きかったです。」
居酒屋オーナー(40代・男性)
モバイルオーダーはオーダーテイクの省力化だけでなく、データの蓄積という面でもFL管理に直結します。何時に何が何皿出たかがリアルタイムで記録されるため、時間帯別の原価分析が格段に精度を上げます。弊社はDiniiの正規代理店として、システムの導入から現場定着まで一体で支援していますが、「ツールを入れる」ことよりも「FLが日次で見える状態をつくる」ことを目的に据えています。
改善を「一度で終わらせない」PDCAの回し方
PDCA STEP 1:週次レビューを15分で定例化する
毎週同じ曜日・同じ時間に、オーナーまたは店長が「先週のFL比率」「着地予測との乖離」「改善アクションの実行状況」を確認します。15分で終わる形式にすることが継続のコツです。
⚠️ よくある失敗:店長任せにして、オーナーがレビューに参加しなくなること。「任せる」と「管理をやめる」は違います。
PDCA STEP 2:店舗間で数字を比較し、差の原因を言語化する
同じ業態なのに店舗間でFL比率が3ポイント以上違う場合、その差は「店長の頑張り」ではなくオペレーションの差異から来ていることがほとんどです。数字が違う理由を精神論ではなく、データで説明できる状態にすることが多店舗展開の基礎になります。
⚠️ よくある失敗:優秀な店長のやり方を「属人化」させたまま放置すること。判断のロジックを標準化し、他店にも再現できる形にすることが重要です。
「LINE友だちが増えて、再来店客数も含めた来店者総数が伸びました。新規集客だけに頼らなくてよくなったのが、コスト面でも精神的にも楽になりました。」
ダイニング経営者(50代・男性)
まとめ:FLコスト改善は「見える化」から始まる
FLコストの改善は、難しいことをやる必要はありません。順番は明確です。
- まず自店のFL比率を計算し、FとLを分解して把握する
- Fはメニュー別粗利の可視化→ABC分析→ロス管理の順で手を入れる
- Lは採用に頼る発想を見直し、業務の一部を仕組みに置き換える
- POS・原価・勤怠を統合して日次でデータが見える環境をつくる
- 週次レビューを定例化し、PDCAを回し続ける
結論から言うと、FL比率が改善しない店の共通点は「データが遅くて見えない」か「見えているが打ち手につながっていない」かのどちらかです。どちらの問題も、仕組みと習慣で解決できます。
弊社では、利益構造の診断から日次管理の仕組み構築まで、21年・飲食店610件以上の支援経験をもとに伴走型でサポートしています。「自分の店のFL比率を正確に把握できていない」「どこから手をつければいいか分からない」という段階からでも、一緒に整理しますので、まずはお気軽にご相談ください。