こんにちは、ハワードジョイマンです。
先日、静岡市内のある居酒屋オーナーとZoomで話していたとき、こんな言葉が出てきました。
「ジョイマンさん、もう求人広告に疲れました。出しても応募がない。面接まで来ても採用基準に届かない。やっと採れたと思ったら3ヶ月で辞める。これ、何度繰り返せばいいんですか」
その声のトーンが、忘れられません。疲弊というより、もう戦い方そのものを見失っている感じでした。
地方の飲食店経営者なら、この感覚に共感する方は多いと思います。努力の問題ではないんです。地方ほど有効求人倍率は高く、そもそも応募が来ない構造になっています。
だから今日は、採用をがんばる話はしません。代わりに、「ホールスタッフ1名分の人件費は月いくらか」を一緒に計算してみて、その数字が何を意味するかを考えてほしいんです。
こんな方におすすめ
- ✅ 求人広告を出しても応募がこない状況に疲れている方
- ✅ ホールスタッフが1名欠けたまま数ヶ月が経過している方
- ✅ 人件費の実態コストをきちんと把握したい方
- ✅ 採用に頼らずオペレーションを回す仕組みに興味がある方
- ✅ 既存スタッフをもっと大切にしたいと考えている方
📋 この記事でわかること
- ホールスタッフ1名あたりの「本当の月額コスト」の計算方法
- 採用費・教育コストまで含めた「1人採用するとかかる総額」
- 省人化の仕組みで人件費を構造から変える考え方
- 浮いた原資を既存スタッフへ還元する方法

ホールスタッフ1名分、正直に計算してみた
まずここを、曖昧にしないでください。「時給1,100円で週5日入ってもらってるから……」で終わっていませんか?
たとえば、こんな条件を想定してみましょう。
- 時給:1,150円(地方の相場感)
- 週5日・1日6時間勤務
- 月の労働時間:約130時間
これだけで月の賃金は約149,500円。
でも、ここで終わらないのが経営の現実です。社会保険(雇用保険・健康保険・厚生年金)の会社負担分が賃金の約14〜15%乗ってきます。つまり月額で約170,000〜175,000円。
さらに、採用にかかった費用を在籍期間で割った月次換算額があります。たとえばIndeedやタウンワークに3万円の広告費を出し、面接を3回して、ようやく1人採用できたとしたら——その人が6ヶ月で辞めた場合、採用コストは月5,000円以上になります。離職のたびにこのコストはリセットされます。
加えて、既存スタッフが新人教育に割く時間。この間、本来の接客が手薄になる機会損失まで含めると、ホールスタッフ1名を「採って、育てて、維持する」コストは月20万円を超えることも珍しくありません。
「そんなにかかってるとは思ってなかった」というオーナーが、実際に多いんです。
「採れない」のは努力不足じゃない。構造の問題です
地方の飲食店では、ここ数年で状況が大きく変わりました。求人媒体の掲載費は上がり、応募数は下がる一方。面接のドタキャンも増えています。
これは、あなたの店の魅力が足りないわけでも、時給が低すぎるわけでもありません。そもそも働き手の数が減っている地域では、どれだけ条件を整えても応募が来ないことがある。これは構造の問題です。
「採用に悩む経営者の方に、私がまず伝えることがあります。それは『採用をゴールにしない』ということです。人が来ないなら、来なくても回る仕組みに変える。これが地方の飲食店が生き残るための、唯一現実的な答えだと思っています」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所)
静岡県内の飲食店はもちろん、北海道から沖縄まで、私が支援してきた610件以上の飲食店に共通していたのは、「採用をがんばるほどに疲弊していく」というサイクルでした。
発想を逆転させる必要があります。「どうすれば人を採れるか」ではなく、「どうすれば今いる人数で、あるいは1人少なくても、同じ売上を出せるか」という問い方に変える。
✓ ここまでのポイント
- ホールスタッフ1名の「本当のコスト」は採用費・社保含めて月20万円超になるケースも多い
- 地方の人手不足は努力でカバーできる限界を超えており、構造問題として捉える必要がある
- 「採れない前提」でオペレーションを設計し直すことが、地方飲食店の現実的な生存戦略になっている
ホール1名分の業務を「仕組み」に置き換える
では、具体的にどうするか。
ホールスタッフが担っている業務を分解してみてください。大きくはこの3つです。
- 注文を取る(オーダーテイク)
- 料理・ドリンクを運ぶ(デリバリー)
- 会計をする(キャッシュアウト)
このうち「注文を取る」と「会計をする」は、お客さまのスマホに移管できます。モバイルオーダーシステムの導入によって、スタッフが席に行かなくても注文が入り、会計もセルフで完結する。
残るのは「運ぶ」と、もっと大事な「会話・気配り・ホスピタリティ」です。これは仕組みで代替できないし、すべきでもない。でも、注文業務がなくなればその分だけ、スタッフはお客さまと向き合う時間が増えます。
ここで重要なのは、「省人化=スタッフを減らす」ではないということです。1名少なくても回る仕組みを作り、「採用しなくてよくなった分のコスト」を既存スタッフへ還元する。時給に上乗せしてもいいし、インセンティブ設計でもいい。
「ホールが1名欠けたまま数ヶ月」という状態のまま疲弊し続けるより、この方が現実的です。
チェックポイント1:注文を取る業務にスタッフは何分使っているか
1テーブルあたりの注文受付〜入力に平均2〜3分かかるとして、1日50テーブル回転する店なら、注文業務だけで毎日約100〜150分がスタッフの稼働に消えている計算になります。
✅ ポイント:この時間を接客・ホスピタリティに転換できれば、客単価と再来店率の両方に好影響が出ます。
チェックポイント2:採用活動にかけているコストと時間を把握しているか
求人広告費・面接対応の時間・既存スタッフの教育負荷を合計すると、採用1名あたりの実質コストが想像以上に大きいことに気づきます。
✅ ポイント:その原資を「省人化への投資」に振り向けたほうが、中長期で利益に残る可能性が高まります。
実際に導入した飲食店の現場から
増益繁盛クラブの会員さんの中には、モバイルオーダーを導入してから現場の空気が変わったという声が複数届いています。
「モバイルオーダーの導入により注文点数がアップした」
増益繁盛クラブ会員(飲食店経営者)
これ、聞いたときに「なぜ?」と思いませんでしたか?
理由はシンプルで、お客さまは「スタッフを呼ぶタイミング」を気にせず、自分のペースで追加注文できるからです。「もう一杯頼もうか」と思ったとき、スタッフの目を探す手間がない。タブレットやスマホで即時に注文できる。これが注文点数の増加につながります。
つまり、省人化の仕組みは「人を減らすためのツール」ではなく、「お客さまの体験を良くしながら、スタッフの負荷も下げる」ための設計です。
「モバイルオーダーを導入するとき、よくこう聞かれます。『機械的になりませんか』と。でも現場を見ていると、逆なんです。注文の取りこぼしがなくなり、スタッフが余裕を持って動けるようになると、接客の質が上がる。笑顔が増える。お客さまとの会話が増える。仕組みが整うほど、人間らしい接客ができるようになるんです」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所)
省人化で生まれた原資を、既存スタッフへ
最後に、一番大事な話をします。
省人化によって「ホールスタッフを1名採らなくてよくなった」とします。月換算で20万円前後のコストが浮く可能性があります。この原資をどこへ回しますか?
答えは、今いるスタッフです。
時給を上げるだけでは辞め止まらない、という話は別の機会にしますが、「自分たちが頑張った結果が還元されている」という実感は、定着率に直結します。採用を繰り返すより、今いる人を大切にする方が、経営としてはずっと合理的です。
採用広告費・面接時間・教育コスト・離職によるロス——これらすべてを合計したとき、「省人化への投資」は決して高い買い物ではありません。
まずは現状の人件費と採用コストを正確に計算することから始めてみてください。数字が見えると、次の打ち手が見えてきます。
まとめ:採用をあきらめるのではなく、採用に頼らない設計へ
「求人広告を出したくない」という気持ち、私は否定しません。むしろ、そこまで追い詰められた経営者の正直な感覚だと受け止めています。
ホールスタッフ1名分の月額コストを計算すると、多くの場合20万円前後になります。その数字を前にして、「どうやって採るか」より「どうやってその業務を仕組みに変えるか」を考える方が、今の時代の飲食店経営には合っています。
モバイルオーダーの導入をきっかけに、省人化オペレーションを設計し、浮いたコストを既存スタッフへ——このサイクルを回せれば、採用に振り回されない経営に近づけます。
もしこの方向に興味があれば、まず現状の仕組みを一緒に整理するところから始めましょう。具体的なシステムの話や、導入後の定着支援まで含めてご相談に乗っています。お気軽にどうぞ。