飲食店経営者の方にまず聞いてほしいデータがあります。厚生労働省の調査によれば、飲食サービス業の有効求人倍率は全産業平均の約2〜3倍で推移しており、地方・郊外エリアではさらに高い傾向にあります。つまり、募集をかけても人が来ないのは、あなたの店の問題ではなく、構造的な問題です。
こんにちは、ハワードジョイマンです。静岡県清水区を拠点に、飲食店経営者の方の利益改善と仕組みづくりを21年支援してきました。今回は「もう採用活動に疲れた」という方へ向けて、人を増やさずに店を回す現実的な選択肢をお伝えします。
📋 この記事でわかること
- なぜ求人を出しても飲食店に応募が来ないのか、その構造的な理由
- 「採用しない」という経営判断が成り立つ条件と考え方
- ホール1名分の業務を仕組みに置き換える具体的な方法
- 省人化と既存スタッフの定着をセットで実現するアプローチ
こんな方におすすめ
- ✅ 求人広告を出し続けているが応募がゼロに近い方
- ✅ ホールが1名欠けたまま数ヶ月が経過している方
- ✅ 時給を上げてもスタッフが定着しないと感じている方
- ✅ 3〜30店舗規模で、多店舗展開を見据えている飲食店経営者の方
- ✅ 過去にITツールを導入したが使いこなせなかった経験がある方

なぜ飲食店だけ人が集まらないのか?
結論から言うと、飲食業は「求人市場で最も不利な業種」のひとつです。理由は単純で、労働条件の厳しさと賃金水準のギャップが他業種より大きいからです。
接客・調理・清掃・レジ・在庫管理——飲食店のアルバイトは、実は業務の幅が非常に広い。それでも時給はコンビニや倉庫作業と大差ない、あるいは下回るケースさえある。求職者側から見れば「割に合わない」と映るのは当然です。
さらに地方・郊外の場合、そもそもの求職者数が少ない。有効求人倍率が高いエリアでは、募集手法を工夫しても、母数が足りないのです。「求人の見せ方が悪いのでは」と自分を責める経営者の方を何人も見てきましたが、それは違います。構造の問題です。
「採用で悩んでいる経営者の方に最初に伝えることがあります。それは『あなたの店が嫌われているわけではない』ということです。問題は市場にあります。だから解くべき問いは『どう募集するか』ではなく、『採用しなくて済む仕組みをどう作るか』です。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所)
「採用しない」という選択肢は本当に成り立つのか?
「人を雇わずに店が回るわけがない」——そう思う気持ちはわかります。でも少し立ち止まって考えてほしいのです。ホールスタッフが1日に行う業務のうち、「お客様に直接価値を届けている時間」はどのくらいでしょうか。
実は多くの飲食店で、ホールスタッフの業務時間の4〜6割はオーダーテイク・伝票管理・会計対応に使われています。これらは「接客」ではなく「情報の運搬」です。お客様と会話する時間、追加の一品を勧める時間、顔を覚えてもらう時間——本当の意味での接客は、残りの時間にしか存在しません。
では、その「情報の運搬」をお客様のスマホに移管したらどうなるか。オーダーテイクはモバイルオーダーへ。会計は事前決済または精算機へ。そうすることでホール1名分の動線を大幅に圧縮できます。
❌ よくあるパターン:採用問題を採用で解こうとする
- 求人広告費を増やすが応募が来ない
- 来ても採用基準を下げざるを得ない
- すぐ辞めてまた募集、のループが続く
- 採用コストと教育コストが積み重なり、利益を圧迫する
✅ 推奨アプローチ:オペレーションを再設計して「採用の必要量」を減らす
- オーダーテイクと会計を仕組みに置き換える
- 既存スタッフの業務密度を下げ、定着率が上がる
- 削減できた人件費原資を時給アップや評価制度に回せる
- 結果として「採用しなくてもいい状態」に近づく
✓ ここまでのポイント
- 飲食業の人手不足は構造的問題であり、募集方法の改善だけでは解決しにくい
- ホール業務の4〜6割は「情報の運搬」であり、仕組みへの置き換えが可能
- 「採用量を減らす」という発想の転換が、根本的な解決への第一歩になる
ホール1名分の業務を仕組みに置き換えるにはどうすればいい?
具体的な話をします。省人化オペレーションの核になるのは、モバイルオーダーシステムの導入です。ただし、ツールを入れるだけでは意味がありません。重要なのはオペレーション全体を再設計することです。
省人化オペレーション設計 STEP 1
現状の業務棚卸し:「誰が何に時間を使っているか」を可視化する
まず今のホールスタッフが1時間でどんな動きをしているかを書き出します。オーダーテイク・料理の提供・追加注文・会計・テーブルリセット——これを時間配分で把握します。多くの場合、ここで「接客に使えている時間の少なさ」に気づきます。
⚠️ よくある失敗:感覚で「忙しい」「足りない」と判断し、実際の時間配分を把握しないまま人を増やそうとする。
省人化オペレーション設計 STEP 2
置き換え可能な業務を特定し、ツールに移管する
オーダーテイクはモバイルオーダーへ。追加注文の声かけはシステムの自動提案へ。会計はQRコード決済や事前精算へ移管します。このステップで、ホール1名分の動線を実質的に削減できるかを試算します。
⚠️ よくある失敗:ツールを導入しただけで現場のオペレーションを変えず、スタッフが従来の動きをしながらシステムも使うという「二重作業」が生まれる。
省人化オペレーション設計 STEP 3
削減した原資を既存スタッフへ再配分する
省人化で削減できた人件費の一部を、残ったスタッフの時給アップや評価制度に充てます。ここが最も重要なステップです。「人を減らしたいだけ」という経営姿勢では、残ったスタッフのモチベーションが下がります。「あなたに長く働いてほしいから、その原資を作った」という姿勢が定着率に直結します。
⚠️ よくある失敗:省人化のメリットをコスト削減だけで終わらせ、スタッフへのフィードバックがない。結果として「自分たちの仕事を機械に置き換えられた」という不満が残る。
「モバイルオーダーを入れたら楽になると思っていたのですが、本当に変わったのはスタッフの表情でした。注文を取る動き回りがなくなったぶん、お客様とちゃんと話せるようになって、『楽しくなった』と言ってくれたんです。」
モバイルオーダー導入後のお客様(飲食店オーナー・40代)
モバイルオーダー導入で客単価も上がるって本当?
省人化の話をすると、「売上への影響は?」と聞かれます。これは正直なところ、導入の仕方によります。ただ、増益繁盛クラブの会員さんの中には、モバイルオーダー導入後に客単価が明確に上がったというケースが複数あります。
理由は2つです。ひとつは、画像や動画つきのメニュー表示でサイドメニューや追加ドリンクが頼まれやすくなること。もうひとつは、スタッフの手が空いた分、タイミングよく追加提案ができるようになること。スタッフがオーダー票を持って走り回っている状態では、追加注文の声かけなど物理的に難しいのです。
「モバイルオーダーの導入により注文点数がアップした」
導入店舗オーナー様
人が減っても売上が下がらない——むしろ客単価が上がるケースがある——というのが、うまくいった省人化の実態です。
過去にITを入れて失敗した経験がある場合はどうすればいい?
「タブレット注文を入れたけど、誰も使わなくなって解約した」という話はよく聞きます。失敗の理由はほぼ共通しています。導入がゴールになっていて、現場への定着支援がなかったのです。
システムは入れた翌日から完璧には動きません。スタッフが慣れる時間、お客様が使い方を覚える時間、オーナーが数字の読み方を覚える時間——この3つの「慣れる時間」を伴走してくれるパートナーがいるかどうかが、成否を分けます。
チェックポイント1:過去のIT導入が失敗した原因はどこにあったか
「使いにくかった」「スタッフが覚えなかった」「効果が見えなかった」——これらはすべて定着支援の欠如が原因である場合がほとんどです。ツール自体の問題ではないことが多い。
✅ ポイント:次の導入では「初期設定を誰がやるか」「現場定着まで誰が伴走するか」を契約前に確認する。この2点を明確にできないベンダーとは組まないことをおすすめします。
チェックポイント2:現在のシステム費用の総額を即答できるか
POS・勤怠・予約・販促・決済——後付けで増えたシステムの月額合計を即答できる経営者の方は、意外に少ないです。まず棚卸しをして、統合できる領域を一本化するだけで、月額固定費を下げられるケースがあります。
✅ ポイント:導入を検討する前に、現在の月額コスト一覧を紙に書き出してみてください。「いくら払っているか」が見えると、投資判断の基準ができます。
まとめ:「採用できない」は終わりではなく、仕組みを変えるサインです
人手不足に悩む飲食店経営者の方に伝えたいのは、「募集をかけない」という選択肢は逃げではないということです。構造的に採用が難しい環境の中で、採用に依存したオペレーションを続けることの方が、経営リスクとして大きい。
省人化は、人を大切にしないための選択ではありません。今いるスタッフに長く、気持ちよく働いてもらうための選択です。その原資を作るための手段として、オペレーションの再設計とモバイルオーダーの活用があります。
支援実績610件以上の飲食店を見てきた経験から言えば、省人化がうまくいった店舗に共通しているのは、「ツールを入れた」ことではなく「仕組み全体を見直した」ことです。
もし「自分の店でどこから手をつければいいか分からない」という状態であれば、まず現状を一緒に整理するところから始めましょう。お気軽にご相談ください。