こんにちは、ハワードジョイマンです。
「求人を出しても応募がゼロ。もうアルバイトを採ることを前提にした店の作り方を、根本から見直したい。でも、どこから手をつければいいのか」——こう考えている飲食店オーナーの方は少なくないと思います。
この問い、実は非常に的を射ています。「採れないから困る」ではなく、「採らなくても回る店にする」という発想の転換。これが飲食店の業務効率化を考える上で、最初に持つべき視点だと私は思っています。
地方や郊外のロードサイドで店を構えている経営者の方は特に実感していると思いますが、人が採れない原因は努力不足ではありません。労働市場の構造的な問題です。だとすれば、「採用」という入口を広げようとするより、「必要な人数を減らす」という出口を設計する方がずっと現実的です。
この記事では、削るべき業務の見つけ方を数字とプロセスで整理しながら、ホール1名分の業務を仕組みに置き換えるための具体的な道筋をお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 「削れる業務」がどこに隠れているかを見つけるための視点と数字の読み方
- ホール1名分の業務量を仕組みで代替するための具体的なアプローチ
- 省人化によって生まれた原資を、既存スタッフへ還元する方法
- モバイルオーダー導入が「注文点数アップ」につながるメカニズム
こんな方におすすめ
- ✅ 求人広告を出しても応募がゼロで、採用に疲弊している飲食店オーナーの方
- ✅ スタッフが少ない中でも売上を落とさない運営の仕組みを知りたい方
- ✅ ホールの人員を減らしても、お客様の満足度を下げたくない方
- ✅ 省人化によって浮いたコストを、既存スタッフの待遇改善に使いたい方
- ✅ 過去にITツールを導入したが使いこなせず、次の手を探している方

「削れる業務」は、時間で測れば見えてくる
業務効率化という言葉は抽象的に聞こえますが、実際にやることはシンプルです。「スタッフが1日に何に何分使っているか」を書き出すだけです。
私がコンサルに入るとき、まず聞くのは「ランチのピーク1時間に、ホールスタッフは何をしていましたか?」という問いです。オーナーが答えられない場合、現場スタッフに直接確認します。たとえば、こんな内訳だったとします。
- 口頭での注文受け:15〜20分
- 伝票をキッチンへ届ける往復:10分
- 「すみません!」への対応(呼ばれて席へ):15〜20分
- レジ精算:10〜15分
- その他(水の補充・テーブルセッティング):10分
この例で合計すると、1時間のピーク帯の中で60〜75分ぶんの業務がホールスタッフ1名に集中していることになります。つまり、1名では回らないように見えて、実はその業務の多くは「仕組みで代替できるもの」です。
注文受け・伝票伝達・精算——この3つは、モバイルオーダーシステムで一括して代替できます。お客様がスマートフォンやテーブル端末から注文すれば、スタッフへの呼びかけが激減し、注文内容はリアルタイムでキッチンへ飛びます。
飲食店の省人化とは何か・省力化との違いについても詳しく解説していますので、「省人化」という言葉が初めての方はあわせて読んでみてください。
「削れる業務がどこにあるか、自分の店ではまだ整理できていない」という方も多いと思います。無料登録で使えるレシピ原価管理ツールや、増益繁盛プランナー(AI対話で店の課題を5ステップで整理)が、業務と数字の棚卸しに役立ちます。メールアドレスだけで登録でき、無料です。
「削れない業務」と「削れる業務」を分ける基準
すべての業務が削れるわけではありません。ここで重要な分け方があります。
❌ 削ってはいけない業務(お客様体験に直結)
- 料理を笑顔で届ける
- 初来店のお客様への案内・説明
- クレームや要望への対応
- テーブルの状況を観察し、先読みして動く
✅ 仕組みに置き換えられる業務(情報の受け渡しと処理)
- 注文を口頭で聞いて伝票に書く
- 伝票をキッチンへ持っていく
- 呼び出しベルや「すみません!」への反応
- 会計の計算・レジ操作
- 追加注文の取り次ぎ
「削れない業務」はホスピタリティそのもの。「削れる業務」は情報の受け渡しと処理です。スタッフの動きを観察していると、この2種類が混在していることに気づきます。仕組みへ置き換えるべきは後者だけです。
「業務効率化というと、スタッフを減らすことだと誤解されがちです。でも私が目指しているのは、スタッフが本来やるべき仕事——お客様との接点——に集中できる環境を作ることです。削るのは業務であって、人ではありません」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・飲食店経営コンサルタント)
✓ ここまでのポイント
- 「削れる業務」は時間で測ることで可視化できる。ピーク1時間の業務内訳を書き出すことから始める
- 削るべきは「情報の受け渡し・処理」系の業務。ホスピタリティ業務は削ってはいけない
- 注文受け・伝票伝達・精算の3点は、モバイルオーダーで一括代替できる
「注文点数がアップした」という声のように、モバイルオーダーは省人化と売上改善を同時に狙える手段です。ただ、どの店にも合うとは限りません。モバイルオーダーなどの導入支援をしている当事務所では、導入前に再来店率や現状オペレーションを確認した上で、効果が見込める構成をご提案しています。
省人化で浮いた原資は、どこへ回すべきか
ここが多くの経営者が見落としている部分です。ホール1名分の人件費が浮いたとき、その原資をどこへ向けるかで、店の未来が変わります。
チェックポイント1:省人化の目的を「コスト削減」だけにしていないか
省人化によって浮いた人件費を単純にP&Lの利益に落とし込んで終わりにしているケースが多いですが、それだと既存スタッフのモチベーションが下がります。「自分たちがシステムに仕事を取られた」という感覚を生みやすい。
✅ ポイント:浮いた原資の一部(例:時給換算で月3〜5万円分)を既存スタッフの時給アップや賞与へ還元する設計を最初から組み込むこと。省人化が「みんなの待遇改善につながる」と伝えると、スタッフの協力を得やすくなります。
チェックポイント2:削減できた人件費を正確に計算しているか
「ホール1名分」といっても、アルバイト1名の月間コストは時給・時間数・社会保険の有無によって変わります。時給1,000円・週4日・5時間勤務のスタッフ1名なら、月間で約80,000〜90,000円。これが実質的に浮く原資です。
✅ ポイント:削減できた金額を数字で確認してから、還元の設計をすること。感覚でなく、FLコスト(人件費+食材費)の比率で前後を比較する。
チェックポイント3:モバイルオーダー導入後の客単価・注文点数を計測しているか
省人化の効果は人件費だけではありません。モバイルオーダーの導入を支援したお店からは、注文点数がアップしたという声をいただいています。
✅ ポイント:口頭注文では「おすすめを聞きにいく」タイミングが限られますが、モバイルオーダーではサイドメニュー・ドリンクの追加提案を画面上で自動的に行えます。「もう1品頼みやすい」という環境が客単価と注文点数の両方を押し上げます。
ホール1名分を仕組みに置き換える、具体的なステップ
省人化設計 STEP 1
現状の業務を「ピーク帯の15分単位」で書き出す
スタッフが何に時間を使っているか、ランチ・ディナーそれぞれのピーク帯を15分単位で記録します。1週間分のデータがあれば十分です。「なんとなく忙しい」ではなく、「何に何分使われているか」が見えると、どこを削れるかが明確になります。
⚠️ よくある失敗:記録をオーナーだけがつけようとするケース。スタッフ本人に「今日の動きを振り返ってもらう」形にした方が、現場の実態に近いデータが取れます。
省人化設計 STEP 2
「仕組みに置き換えられる業務」を3つだけ選ぶ
STEP1で書き出した業務の中から、「情報の受け渡し・処理」にあたるものを3つ選びます。最初から全部を変えようとしないこと。注文受け・精算・呼び出し対応の3点を選べば、ホール1名分に近い業務量を圧縮できる見込みが立ちます。
⚠️ よくある失敗:「全部DX化しよう」と一気に変えて現場が混乱するケース。3点に絞り、1カ月かけて定着させてから次へ進む方が結果として早いです。
省人化設計 STEP 3
省人化した原資の「使い道」を先に設計する
浮いた人件費をどこへ回すかを、システム導入と同時に決めておきます。既存スタッフへの時給還元、店長への手当、設備投資——どれでも構いませんが、「浮いた分をどう使うか」を先に設計しておくことで、省人化が店全体のモチベーションアップにつながります。
⚠️ よくある失敗:省人化の「効果が出てから考える」にすると、原資の使い道が曖昧になり、スタッフへの還元が後回しになりがちです。
飲食店のIT化を最初の1歩から始める手順も合わせて参考にしてください。モバイルオーダーを「最初の一手」として選ぶ理由も詳しく解説しています。
省人化の設計を間違えると、スタッフが辞めていく
業務効率化に失敗する店に共通しているのは、「システムを入れた後」の設計がないことです。
モバイルオーダーを導入した翌月から、スタッフが暇になる時間が生まれます。この「暇」をどう使わせるかを決めていない場合、スタッフは「自分は必要とされていないのか」と感じ始めます。
省人化によって生まれた時間は、「お客様との接点を増やす時間」として再定義するのが正解です。料理の説明をていねいにする、テーブルの様子を観察してタイミングよく声をかける、リピーターのお客様の顔を覚えて会話する——こういった「人にしかできない仕事」に振り向けることで、スタッフの存在意義が高まり、定着率にもつながります。
飲食店DXとは何か・何から始めるべきかという記事では、ツール選定より先に「何を目的にするか」を整理する方法を解説しています。省人化の目的を明確にしてから道具を選ぶ、という順序の大切さについて書いていますので、参考にしてみてください。
まとめ:削るべき業務は「業務のどこ」にあるか
結論から言うと、削るべき業務は「ホスピタリティ」ではなく「情報の受け渡しと処理」です。そしてその業務は、ピーク帯の動きを時間で記録するだけで見えてきます。
地方・郊外で飲食店を経営している方にとって、採用難は努力でどうにかなる問題ではありません。それならば、「採らなくても回る店」を設計する方が、経営者としての時間と資金の使い方として正直です。
ホール1名分の業務を仕組みに置き換える。浮いた原資を既存スタッフへ還元する。スタッフが本来やるべき「人との接点」に集中できる環境を作る。この3点を順番に設計すれば、採用広告に頼らない店の土台ができあがります。
飲食店の業務効率化は、削ることが目的ではありません。「人がいなくても回る仕組み」を作ることで、いる人がより生き生き働ける環境を作ることが本当のゴールです。私はそう考えています。
支援実績飲食店を中心に833件以上、業界経験21年。有限会社繁盛店研究所では、システム導入と経営の仕組みづくりを一体で支援しています。「まず何から手をつけるか」を整理したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
ホール1名分の業務を仕組みに置き換える設計は、ツールを入れるだけでは完成しません。導入・初期設定から90日間の定着支援まで、一体で並走するのが繁盛店研究所のスタイルです。「過去にIT導入で失敗した」という経験がある方ほど、一度話を聞いてみる価値があります。