こんにちは、ハワードジョイマンです。
「宿泊のPMS(ホテル管理システム)、レストランのPOS、予約サイト、勤怠管理がそれぞれ別会社で、月額いくらになっているか即答できない」——ホテルのレストラン部門では、こうした状況がよく見られます。
この状況、ホテルレストランに限った話ではないんですが、ホテルの場合は特に深刻です。宿泊部門と飲食部門でシステムが完全に分離していることが多くて、「なんとなく使い続けている」ツールが積み上がりやすい。季節需要の変動が大きいホテル業態で、コストの全体像が見えていないのは、かなりリスクが高い状態です。
今回は、ホテルレストランがモバイルオーダーを導入する際の手順を、「システムが散らかった状態の整理」という切り口から解説します。ツールを追加するより先に、今あるものを棚卸しする——この順番を間違えると、また同じ繰り返しになります。
📋 この記事でわかること
- ホテルレストランでシステムがバラバラになりやすい構造的な理由
- モバイルオーダー導入前に必要な「システム棚卸し」の具体的な手順
- ベンダーを集約しながらモバイルオーダーを立ち上げるステップ
- 導入後に客単価・注文点数を伸ばすための運用設計のポイント
こんな方におすすめ
- ✅ ホテルのレストラン・ラウンジ部門でシステム費用の全体像を把握できていない方
- ✅ POS・予約・勤怠・販促が別ベンダーになっていて、管理が煩雑になっている方
- ✅ モバイルオーダーを検討しているが、既存システムとの兼ね合いで動けない方
- ✅ 人員に余裕がなく、フロアオペレーションをもう少し効率化したい方
- ✅ 過去にITツールを導入したが、現場に定着せず解約した経験がある方

なぜホテルレストランはシステムが散らかりやすいのか
ホテルレストランのシステム問題を紐解くと、ほぼ共通して同じ構造が見えてきます。「そのとき必要なものを、そのとき入れた」という後付けの積み重ねです。
宿泊部門は宿泊部門で、PMSを先に入れている。飲食部門は飲食部門で、別のPOSを後から導入する。予約は楽天トラベルやじゃらんと直接契約していて、飲食の予約はホットペッパーグルメ。勤怠管理はさらに別のSaaS。販促のLINEはフロントが個人アカウントで運用していたりする。
こうなると、月末に各担当が請求書を集めて初めて「今月の総額」が判明する状態になります。しかも連携がないので、宿泊客がレストランで飲食した売上と客室売上が別々に計上され、「宿泊客がどれだけ追加消費しているか」すら見えない。
全体最適の視点がなく、部分最適のシステムが並んでいる——これがホテルレストランにモバイルオーダーを導入する際に、最初に直面する現実です。
「ツールを増やす前に、今何にいくら払っているかを全部並べてみてください。そこに答えが隠れていることが多い。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・飲食店経営コンサルタント)
「月額総額を即答できない」という状態のまま、さらにシステムを追加しようとしていませんか。棚卸しの前に動くと、また同じ繰り返しになります。無料アカウントを作成すると、レシピ原価管理ツールや増益繁盛プランナーで、今の自店の数字を整理するところから始められます。メールアドレスだけで登録でき、無料です。
STEP 1:導入前のシステム棚卸しから始める
モバイルオーダー導入 STEP 1
現在稼働しているシステムをすべて書き出す
まず、今使っているシステムを一覧化します。POS・PMSとの連携状況・予約管理・勤怠・販促ツール・決済端末・レシートプリンターなど、月額費用・契約期間・ベンダー名を1枚のスプレッドシートにまとめてください。「なんとなく使っている」ものも含めて全部です。
ここで初めて「月額総額」が出ます。棚卸しをしてみると、使っていないのに払い続けている「知らなかったコスト」が見つかることも珍しくありません。
⚠️ よくある失敗:フロント担当・調理部門・経営者がそれぞれ別のシステムを把握していて、誰も全体像を知らないケースがあります。必ず全部門横断で情報を集めること。
モバイルオーダー導入 STEP 2
「廃止できるもの」と「残すもの」を仕分けする
一覧化したシステムを、次の3つに分類します。①モバイルオーダー導入で代替できるもの、②PMSとの連携が必須で残すもの、③どちらでもなく惰性で使っているもの。
ホテルレストランの場合、テーブルオーダー用のタブレット端末・紙の注文票・ハンディ端末は、モバイルオーダーで代替できるケースが多い。一方、PMSとの連携は慎重に扱う必要があります。宿泊客の部屋付けシステムとの接続が必要な場合、モバイルオーダー側がAPIで対応できるかを事前に確認しておくことが必須です。
⚠️ よくある失敗:「とりあえずモバイルオーダーを追加導入する」という選択をしてしまうと、既存POSとの二重管理が発生し、現場の混乱が増します。何かを入れるなら何かを出す、というセットで考えてください。
✓ ここまでのポイント
- ホテルレストランは部門ごとの後付けでシステムが散らかりやすく、月額総額を誰も把握できていないケースが多い
- モバイルオーダー導入前に「今何にいくら払っているか」を全部書き出す棚卸しが最初のステップ
- 廃止できるシステムと残すシステムを先に仕分けしないと、また別のツールが積み上がるだけで終わる
ベンダー集約とモバイルオーダーの導入設計を「自分たちで進める」のが難しいと感じたなら、それは設計の問題ではなく伴走者がいないことが原因かもしれません。モバイルオーダーなどの導入支援をしている当事務所では、初期設定代行から90日間の定着支援まで一体で提供しています。ホテルレストランのシステム構成や既存POSとの兼ね合いも含めて、個別に相談できます。
STEP 2:ベンダー集約とモバイルオーダーの立ち上げ
モバイルオーダー導入 STEP 3
集約できるベンダーをまとめ、月次コストを再計算する
棚卸しが終わったら、「1つのシステムで複数の機能をカバーできるか」という視点でベンダーを絞り込みます。POS・モバイルオーダー・CRM・決済・予約・経営管理が一体になっているオールインワン型のシステムであれば、複数の契約を1本に集約できる可能性があります。
集約後の月額と現在の月額を比較したとき、差額がそのまま利益に乗ってきます。「削減した固定費は、売上を増やすより確実に手元に残る」——これは飲食店の利益構造改善において、最も再現性の高い打ち手のひとつです。
⚠️ よくある失敗:既存ベンダーとの解約タイミング(違約金・契約終了月)を確認せずに新システムを先に契約してしまい、二重払いが発生するケースがあります。契約書の解約条項を先に確認してから進めてください。
モバイルオーダー導入 STEP 4
メニューデータの整備とテーブル設定を行う
モバイルオーダーを実際に動かすには、メニューデータの登録が必要です。ホテルレストランの場合、朝食・ランチ・ディナーでメニューが切り替わることが多く、時間帯別の表示設定を最初から正しく組んでおくことが重要です。
また、テーブルごとのQRコードの配置設計も、この段階で決めます。宿泊客向けのルームサービスにも対応するか、レストラン内のみで使うかによって、設定の範囲が変わります。この部分は導入支援の担当者と一緒に設計するのが現実的です。
⚠️ よくある失敗:メニューデータの移行を現場スタッフ任せにしてしまい、登録ミス・抜け漏れが発生して開店直後に混乱するケースがあります。初期設定は必ず専門の担当者に代行依頼するか、ダブルチェックの体制を作ること。
なお、カフェとレストランではモバイルオーダーの向き不向きに違いがある点は、ホテルレストランを検討する際にも参考になります。滞在時間・客層・注文頻度の特性がレストランとカフェで異なるように、ホテルレストランにも固有の設計上の注意点があります。
STEP 3:導入後の運用設計で客単価を動かす
モバイルオーダー導入 STEP 5
写真・オプション設定・おすすめ表示で単価設計を行う
モバイルオーダーを「注文を受けるだけのツール」として使うのでは、もったいない。メニュー画面の設計次第で、客単価は明確に変わります。
具体的には、次の3点を設定してください。①高粗利メニューをトップ表示・写真付きで掲載する、②ドリンク追加・サイドメニューのオプション設定を入れる、③追加注文を促すバナーや「もう一杯いかがですか」系の表示を設定する。スタッフが口頭で声をかけるより、視覚的に選べる状態の方が注文につながりやすくなります。
当事務所がモバイルオーダーの導入をお手伝いしたお店からも、「客単価がアップした」という声をいただいています。メニュー画面の設計を丁寧に行うことが、その前提になります。
ホテルレストランの場合、宿泊客は「せっかくだから」という心理が働きやすく、追加注文に対して比較的ポジティブです。このお客様の心理に合わせたメニュー導線を設計することで、客単価向上の効果が出やすい業態のひとつとも言えます。
⚠️ よくある失敗:システムを入れただけで、メニュー画面をデフォルトのまま放置してしまうケース。見た目が整っていないと、お客様はそもそもスクロールしてくれません。導入後の最初の2週間でメニュー画面の見直しを必ず行うことをおすすめします。
モバイルオーダー導入 STEP 6
90日間の定着フェーズで数字を確認しながら調整する
モバイルオーダーは、入れた瞬間より「使い続けた後」の方が価値が出ます。注文データが蓄積されることで、何が売れているか・どの時間帯に追加注文が多いか・どのテーブルの回転が遅いかが見えてくるからです。
導入から90日間は、週に一度でもデータを確認して、メニュー表示の順番・オプションの内容・おすすめ表示のタイミングを調整する習慣を作ってください。この期間に調整を怠ると、せっかく入れたシステムが「使われているだけ」の状態に固定化してしまいます。
また、居酒屋でモバイルオーダーの効果が出やすい理由でも触れていますが、滞在時間が長い業態ほど、追加注文のチャンスが多い。ホテルレストランはコース料理やゆったりした食事が中心のことも多く、その分だけドリンク追加・デザート追加の設計が重要になります。
⚠️ よくある失敗:「導入したので現場に任せます」という撤退をしてしまうケース。過去にITツールを入れて誰も使わず解約した店舗では、定着支援がなかったことが原因になっている場合が多いものです。誰がデータを見て、誰が調整を判断するか——この役割を最初に決めておくことが、定着の鍵になります。
まとめ:ツールを増やす前に、今あるものを整理する
ホテルレストランへのモバイルオーダー導入を成功させるための手順を、改めて整理します。
①今使っているシステムをすべて書き出し、月額総額を把握する→②廃止できるものと残すものを仕分けし、ベンダーを集約する→③メニューデータを整備し、テーブル設計を行う→④写真・オプション・おすすめ表示で単価設計をする→⑤90日間データを見ながら調整し、定着させる。
この順番を守ることで、「また別のツールが増えた」という状態を避けられます。そして、システムが集約されてはじめて、モバイルオーダーのデータが経営判断に使えるようになります。
「ベンダーが複数あって管理が煩雑」「以前タブレットを入れたが誰も使わなかった」という状況から始めた経営者の方でも、整理する順番さえ間違えなければ、仕組みとして機能するようになります。
静岡をベースに全国の店舗経営者の方を21年支援し、飲食店を中心に833件以上に関わってきた経験から言えるのは、システムの数より「つながり方」が利益に直結するということです。バラバラなままで頑張るより、整理してから動く方が、結果として早い。
この記事を最後まで読んだということは、「また同じ失敗を繰り返したくない」という気持ちが少なからずあるはずです。システム棚卸しからメニュー設計・定着支援まで、有限会社繁盛店研究所が一貫して対応します。まず現状のシステム構成を話してもらうだけでも、整理の糸口が見えてきます。