こんにちは、ハワードジョイマンです。
突然ですが、ひとつ数字をお伝えします。
厚生労働省「令和7年雇用動向調査」によると、「宿泊業,飲食サービス業」の一般労働者の離職率は21.5%で、全産業で最も高くなっています(宿泊業と合算の数字)。
これを聞いて、「うちはもっとひどい」と感じたオーナーさんも少なくないはずです。採用コストと研修コストが積み上がり、時給を上げるたびに人件費率が予算を超える——この悪循環にはまっている飲食店は、少なくありません。
でも、結論から言うと、人件費率が膨らむ本当の原因は「時給の水準」ではありません。今回の記事では、その本質と、人件費率を予算内に収めるための4つのポイントを具体的にお伝えします。
こんな方におすすめ
- ✅ 時給を上げてもスタッフが定着せず、採用コストがかさんでいる方
- ✅ 人件費率が予算の30〜35%を慢性的にオーバーしている方
- ✅ 育てたスタッフが1〜2年で辞めていく状況が続いている方
- ✅ 「辞めないチーム」を作りたいと本気で考えている飲食店経営者の方
- ✅ 人手不足でも売上・利益を維持する仕組みを探している方
📋 この記事でわかること
- 人件費率が予算を超える「本当の原因」——時給ではなく離職コストにある理由
- 時給を上げても辞めるスタッフ問題の構造と、感情的報酬の重要性
- 人件費率を適正化しながらスタッフ定着率を高める4つの実践ポイント
- モバイルオーダー導入で人件費と客単価を同時に改善する考え方

人件費率が予算を超える「本当の原因」は離職コストにある
多くの飲食店経営者の方が「時給を上げたから人件費率が悪化した」と感じています。確かに時給の上昇は人件費率に直接影響します。しかしもう一つ、見落とされがちなコストがあります。それが「離職コスト」です。
求人広告費・面接にかける時間・採用後の研修期間・その間の生産性低下——これらを積み上げると、アルバイト1人を採用して戦力化するまでには、決して小さくないコストがかかります。
仮に1人あたり30万円かかるとすると、年間で3〜4人入れ替わる店なら、それだけで90〜120万円が毎年消えている計算です。これは月次のP/Lには「広告費」「研修費」として分散して計上されるため、経営者が気づきにくい。
つまり、人件費率を予算内に収めたいなら、「時給をどう設定するか」よりも「どうすれば辞めずに働き続けてくれるか」を先に解決しなければなりません。
チェックポイント①:採用・離職コストを正確に把握しているか
求人広告費だけでなく、面接対応・教育研修・OJT期間中の生産性低下も含めた「1人あたりの採用コスト」を計算してみてください。
✅ ポイント:離職コストを「見えないコスト」のまま放置しない。月次の利益計算に組み込んで可視化することが第一歩です。
チェックポイント②:年間の離職人数と離職理由を記録しているか
「なんとなく辞めていく」ではなく、誰がいつ・どんな理由で辞めたかをデータとして残しておくことが、改善の出発点になります。
✅ ポイント:退職面談を形式化し、「賃金・労働時間・人間関係・やりがいの欠如」のどれが主因かを分類する習慣をつけましょう。
✓ ここまでのポイント
- 「宿泊業,飲食サービス業」の離職率は全産業で最も高い(厚生労働省「令和7年雇用動向調査」)。採用コストが人件費率を圧迫している
- アルバイト1名の採用〜戦力化には、P/Lに見えにくいコストがかかっている
- 人件費率改善の本質は「時給設定」ではなく「定着率向上」にある
時給を上げても辞める理由——「報われている実感」の正体
時給を地域の相場より高く設定しているのに、入って半年以内に辞めていくスタッフが後を絶たない——そんな悩みを抱えるオーナーさんは少なくありません。
私がそういった方に必ず聞くのは、「スタッフは、自分が感謝されていると感じていますか?」という質問です。
賃金は「最低限の条件を満たす要素」(ハーズバーグの衛生要因)です。これが低ければ不満になりますが、高くしても「満足」には直結しません。人が仕事にやりがいを感じるのは、「自分の行動がお客さまや仲間の役に立った」という実感があるときです。
ホールスタッフが懸命に接客しても、そのお客さまが「美味しかったよ、ありがとう」と言ってくれる声が、当の本人に届いていなければ意味がありません。お客さまの感謝が「店長の報告」という形で翌日以降に伝わるのでは、感動が薄れてしまいます。
「時給を上げることは、スタッフを引き止める理由にはなりません。でも、お客さまから名指しで感謝された翌日は、誰でも笑顔で出勤してきます。私はそれを、独立してから21年間、現場で見てきました。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所)
人件費率を予算内に収める4つのポイント
人件費改善 STEP 1
「離職コスト」を月次数字に組み込み、経営判断の材料にする
まず、採用広告費・研修にかかる時間・OJT期間中の生産性低下を試算して、「1名離職すると月の利益がいくら減るか」を数字で持ちましょう。この数字があると、時給を少し上げてでも定着させる判断の根拠になります。
⚠️ よくある失敗:求人広告費だけを「採用コスト」と考え、教育・機会損失のコストを計算せずに「採用の方が安い」と判断してしまう。
人件費改善 STEP 2
お客さまの「ありがとう」を、名指しで本人に届ける仕組みを作る
モバイルオーダーやQRコードアンケートを使って、来店後のフィードバックをスタッフ名単位で収集する。「田中さんの説明がわかりやすかった」「鈴木さんの笑顔が良かった」という声が、当日中に本人に届く環境を作ることで、承認欲求という感情的報酬を設計できます。モバイルオーダーの中には、お客さまがスタッフを応援できる投げ銭のような機能を持つものもあり、この目的に使えます。
⚠️ よくある失敗:アンケートを集めても集計が遅く、スタッフへのフィードバックが1〜2週間後になってしまう。リアルタイム性が命です。
人件費改善 STEP 3
ホールの「作業負荷」を減らし、接客に集中できる時間を増やす
注文を取る・伝票を持って走る・会計をさばく——これらは「接客業なのに接客できない」状況を生み出します。モバイルオーダーでオーダーテイクを自動化すると、スタッフはお客さまとの会話に時間を使えるようになります。仕事の「やりがい」が増えると同時に、1人あたりの対応テーブル数が増えれば、人件費率を下げることにもつながります。
⚠️ よくある失敗:「機械っぽくなる」という懸念で導入をためらい、結果として人手不足とスタッフ疲弊が続く。モバイルオーダーは接客を「なくす」のではなく「質を上げる」ツールです。
人件費改善 STEP 4
スタッフ評価の基準を「見える化」して、納得感のある報酬設計にする
「なぜAさんは時給が高くてBさんは低いのか」が説明できない店では、不満が生まれやすい。QSCスコアやお客さまアンケートの評価点数を時給・昇給の判断基準に組み込むことで、「頑張れば報われる」という納得感を設計できます。
⚠️ よくある失敗:評価制度を作っても「店長の主観」で運用され、数字の裏付けがないまま昇給が決まる。スタッフは不公平感を敏感に察知します。
❌ よくあるパターン:時給アップ → 人件費率悪化 → 採用絞る → 既存スタッフ疲弊 → 離職増加 → また採用コスト発生
- コストが増え続けるのに、定着率は改善しない
- 「お金で解決しようとする」ループから抜け出せない
✅ 推奨アプローチ:感情的報酬の設計 → スタッフの定着 → 採用コスト削減 → その原資を時給・評価制度に還元
- 人件費率は下がりながら、スタッフの満足度は上がる
- お客さまへの接客品質が上がり、客単価・リピート率も改善する
支援先からも「モバイルオーダーの導入により客単価がアップした」という声をいただいています。理由は、単純に「注文しやすくなった」だけではありません。スタッフが注文取りから解放されると、おすすめメニューの説明やお客さまとの会話に時間を使えるようになる——これも客単価が上がる理由の一つです。人件費率の最適化と売上改善が、同時に起きている構造です。
数字で見る「定着率改善」の考え方
人件費率の数ポイントの差は、一見地味に見えるかもしれません。しかし仮に月商2,200万円の店で人件費率が3.4ポイント下がれば、月74.8万円・年間約900万円の差になります(2,200万円×3.4%=74.8万円、×12ヶ月=約898万円)。これを時給の引き上げ原資として既存スタッフに還元できれば、さらに定着率が改善するという好循環も期待できます。
飲食店を中心に支援実績833件以上、業界歴21年の経験から言えることは、人件費率の問題は「採用と離職の構造」を変えなければ、根本的には解決しないということです。
まとめ:「辞めないチーム」が、最強のコスト削減策
人件費率を予算内に収める4つのポイントを振り返ります。
- 離職コストを月次数字に組み込み、「採用より定着」の判断基準を持つ
- お客さまの「ありがとう」を名指しで本人に届ける仕組みを作る
- モバイルオーダーでホールの作業負荷を下げ、接客に集中できる環境を作る
- QSCスコアとアンケート評価を人事評価の基準に組み込む
時給を上げることは「入口」でしかありません。定着するかどうかは、「この店で働くことが自分の成長と承認につながっている」という実感があるかどうかで決まります。
育てた人に長く働き続けてもらいたいなら、まず「お客さまの声を、スタッフ本人に届ける仕組み」を作るところから始めてみてください。それが人件費率を予算内に収める、最も持続可能なアプローチです。
モバイルオーダーの導入や、スタッフ定着・人件費率改善についてご相談がある方は、以下からお気軽にご連絡ください。現状の数字をお聞きした上で、どこから手をつけるべきかを一緒に整理します。
まずは情報収集だけという方は、こちらから無料でモバイルオーダーの活用方法をご確認いただけます。お気軽にどうぞ。