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飲食店の損益分岐点の計算方法入門|「何人来れば黒字か」を数字で把握する

この仕事を長く続けてきて、つくづく感じることがあります。飲食店経営者の方の多くは、「売上が上がれば何とかなる」という感覚で日々の経営をされているということです。もちろん売上は大切ですが、そこだけを見ていると「なぜか手元にお金が残らない」という状況から抜け出せない。

こんにちは、ハワードジョイマンです。

損益分岐点、という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。でも「実際に自分の店で計算したことがある」という方は、意外と少ないんですよね。計算方法がよくわからない、あるいは「わかったとして何に使えばいいのか」がイメージできない。そういう声をよくいただきます。

この記事では、損益分岐点の計算方法を基礎から丁寧に説明します。「何人来れば黒字になるか」が自分の数字で答えられるようになると、毎月の経営判断がまるで変わります。

📋 この記事でわかること

  1. 損益分岐点とは何か、飲食店における基本的な考え方
  2. 固定費・変動費の分け方と、損益分岐点売上高の計算手順
  3. 「何人来れば黒字か」を客数ベースで把握する方法
  4. システムのコスト把握が損益分岐点の精度に直結する理由

こんな方におすすめ

  • ✅ 損益分岐点という言葉は知っているが、計算したことがない方
  • ✅ 毎月の数字が翌月中旬にしか出ず、打ち手が後手に回っていると感じている方
  • ✅ 「売上は落ちていないのに利益が残らない」状況が続いている方
  • ✅ POS・勤怠・予約など複数のシステムを使っているが、月額の総コストを把握できていない方
  • ✅ 多店舗展開を検討しており、各店舗の収益構造を数字で理解したい方
飲食店の損益分岐点の計算方法入門|「何人来れば黒字か」を数字で把握する | 有限会社繁盛店研究所

損益分岐点とは「赤字と黒字の境界線」のこと

まずシンプルに定義しておきます。損益分岐点とは、「売上がこの金額を下回ると赤字になる」という境界線のことです。言い換えれば、「最低限これだけ売らないと費用をまかなえない」という数字です。

飲食店に置き換えると、「何人お客様が来れば、今月の費用をすべてまかなえるか」という問いに答えてくれる数字になります。

なぜこれが大事かというと、この数字がわかっていないと、月の途中での判断ができないからです。月次の数字が翌月中旬に出るお店では、すでに赤字が確定した後に気づくことになる。損益分岐点を把握していれば、月の途中で「今月はあと何組来れば黒字に乗るか」が見えてきます。

また、売上より先に見直すべき数字として利益構造を理解することが、飲食店の経営改善の第一歩です。損益分岐点はその起点となる数字です。

損益分岐点を計算しようとして、固定費を書き出してみたら「システムの月額費用の合計が把握できていない」という状況に気づく方が少なくありません。無料の飲食店コストダウンガイド(63ページ)では、固定費・変動費の整理から利益構造の見直し方を体系的に解説しています。メールアドレスだけで無料で受け取れます。

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計算の前に:費用を「固定費」と「変動費」に分ける

損益分岐点を計算するには、まずお店の費用を2種類に分ける必要があります。

チェックポイント①:固定費とは何か

固定費とは、売上がゼロでもかかり続けるコストのことです。家賃、正社員の人件費、リース料、システムの月額費用などがこれにあたります。「お客様が来なくても出ていくお金」と覚えておくと分かりやすい。

✅ ポイント:ここで重要なのが、システムの月額費用を正確に把握できているかという点です。POS・勤怠・予約・販促のツールを別々の会社から導入している場合、合計の月額コストが把握できていないケースが非常に多い。固定費の計算が曖昧になり、損益分岐点の精度が落ちます。

チェックポイント②:変動費とは何か

変動費とは、売上に連動して増減するコストです。食材費(原価)、アルバイトの人件費の一部、消耗品などがこれにあたります。「お客様が増えると増え、減ると減るお金」です。

✅ ポイント:変動費の中で最も大きいのは食材費です。FLコストがどこで崩れているかを把握しておくことが、変動費を正確に見積もるための前提になります。FL比率(食材費+人件費の合計÷売上)が60〜65%を超えているお店は、変動費率が高い状態です。

損益分岐点売上高の計算式

費用の分類ができたら、実際に計算します。計算式は次のとおりです。

まず「限界利益率」を出します。

限界利益率 = 1 − 変動費率

変動費率は「変動費 ÷ 売上高」で求めます。たとえば売上100万円に対して変動費(食材費+変動人件費)が60万円なら、変動費率は60%。限界利益率は40%になります。

次に損益分岐点売上高を計算します。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率

たとえば固定費(家賃・正社員給与・システム費用など)が月40万円で、限界利益率が40%なら:

40万円 ÷ 0.4 = 100万円

つまり月に100万円の売上がなければ赤字になる、ということです。

✓ ここまでのポイント

  • 損益分岐点とは「赤字と黒字の境界線」。月の途中で経営判断するための基準になる
  • 計算には固定費と変動費の分類が必要。システムの月額費用が固定費に含まれていないケースに注意
  • 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率(1 − 変動費率)で求められる

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「何人来れば黒字か」を客数で把握する

売上高で損益分岐点を出したら、次は「客数ベース」に変換しましょう。経営の現場では「売上100万円」より「1日〇組」のほうが直感的につかみやすいからです。

計算は単純です。

損益分岐点客数 = 損益分岐点売上高 ÷ 客単価

先ほどの例で客単価が2,500円なら:

100万円 ÷ 2,500円 = 400人(組ではなく人数ベース)

月の営業日数が25日なら、1日あたり16人来れば黒字、ということになります。席数や回転率と照らし合わせると、現実的に達成できる数字かどうかの判断もできます。

「損益分岐点を出してみると、『意外と少ない客数で黒字になる』と気づく方もいれば、『この集客では構造的に厳しい』と気づく方もいます。どちらも正しい気づきで、数字を見る前と後では判断の質がまるで変わります」

ハワードジョイマン(中小企業診断士 / 飲食店経営コンサルタント)

また、ここで考えてほしいのが「新規客だけで黒字にしようとしていないか」という点です。損益分岐点の客数を毎月新規客で埋めようとすると、集客コストがかさみます。再来店客(リピーター)の比率を上げることで、同じ黒字ラインをより低いコストで達成できます。

「LINE友だちが増えて再来店客数も含めた来店者総数が伸びた」

(増益繁盛クラブ 会員)

この声が示すのは、集客の仕組みをリピーター軸に切り替えることで、損益分岐点を「超えやすい構造」を作れるということです。客数が伸びただけでなく、来店者の内訳が変わることで広告コスト(変動費)が抑えられ、限界利益率も改善していきます。

計算の精度を下げる「見えていないコスト」に気をつける

損益分岐点の計算でよくある落とし穴が、固定費の計上漏れです。中でも見落とされやすいのが、複数のシステムの月額費用です。

❌ よくあるパターン

  • POSシステム・勤怠管理・予約システム・販促ツールをそれぞれ別の会社から導入している
  • どれも「必要だから」と後付けで入れてきたため、合計の月額費用を把握していない
  • 固定費の計算に含まれておらず、損益分岐点が実態より低く見えてしまっている

✅ 推奨アプローチ

  • まず「システム棚卸し」として、現在契約しているすべてのツールと月額費用を一覧化する
  • 重複機能・使っていない機能があれば解約・統合を検討し、固定費を実態に合わせる
  • ベンダーを集約することで月額コストを削減し、損益分岐点そのものを下げる

実際に、POS・勤怠・予約・販促のツールを別々に使っていたお店が、月額コストを洗い出してみると「思っていたより毎月多くの固定費がかかっていた」ということはよくあります。これが損益分岐点の計算精度に直接影響します。

固定費を正確に把握するための第一歩として、原価率改善を相談する前に自店の数字を整理する手順も参考にしてみてください。システムコストの整理も、この「数字の整理」の一部です。

「ツールは1つ増えるたびに固定費が上がります。『月3,000円だから』と感じても、5つ重なれば月1万5,000円。年間にすると18万円です。損益分岐点を正確に把握したいなら、まずシステムの月額費用を全部書き出してみてください」

ハワードジョイマン(中小企業診断士 / 飲食店経営コンサルタント)

まとめ:損益分岐点は「経営の地図」になる

損益分岐点の計算は、難しい数学の話ではありません。固定費と変動費を分けて、決まった計算式に当てはめるだけです。でもその数字が出た瞬間、経営の見え方が変わります。

「今月は何人来れば黒字になる」「このシステム費用は損益分岐点にどう影響する」「リピーターが増えると変動費率はどう変わる」——こうした問いに、感覚ではなく数字で答えられるようになる。それが損益分岐点を把握することの本質的な価値です。

計算してみると、意外なことに気づくことがあります。固定費の中にシステムの月額費用が思ったより積み上がっていた、というケースも珍しくありません。まずは現在使っているツールの月額費用を全部書き出すところから始めてみてください。

私たちは飲食店833件以上の支援実績の中で、損益分岐点の把握から始めて利益構造を改善してきた事例を数多く見てきました。「数字で判断できる店づくり」は、決して難しいことではありません。一緒に整理しながら進めましょう。

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