モバイルオーダー活用事例

回転重視の業態でモバイルオーダーが効かない理由

こんにちは、ハワードジョイマンです。

結論から言うと、モバイルオーダーを入れても客単価が動きにくいのは、回転率を最優先に設計された業態です。

「うちはランチの回転で稼ぐ店だから、モバイルオーダーなんて逆効果じゃないか」——そう判断して導入を見送っているオーナーさんも多いと思います。その判断、半分は正しい。でも、残り半分には大事な見落としがあります。

今回は、回転重視の業態でモバイルオーダーが期待外れに終わりやすい理由と、使い方を変えれば粗利の改善に役立てられる考え方をお話しします。あわせて、回転重視業態が見落としがちな「原価率悪化の本当の原因」についても掘り下げます。

📋 この記事でわかること

  1. 回転重視の業態でモバイルオーダーが効果を出しにくい構造的な理由
  2. 「売れ筋=儲け筋」という思い込みが原価率を悪化させるメカニズム
  3. ABC分析で儲け筋メニューを特定する具体的な手順
  4. モバイルオーダーを「単価向上の道具」として機能させるための設計の違い

こんな方におすすめ

  • ✅ ランチや時間制コースなど、回転率で売上を作っている業態のオーナー
  • ✅ 売上は前年並みなのに、なぜか手元に利益が残らないと感じている方
  • ✅ 原価率が上がっているが、どのメニューが原因なのか特定できていない方
  • ✅ モバイルオーダーを検討したが「うちには向かない」と判断して止まっている方
  • ✅ 3〜10店舗規模で、店舗間の原価率の差を説明できていない経営者の方

「回転で稼ぐ」業態でモバイルオーダーが機能しない理由

まず、構造的な話をさせてください。

ランチ専門店、定食屋、うどん・そば・ラーメン系の業態が「モバイルオーダーに向かない」と言われるのには、理由があります。これらの業態では、客単価の上限がほぼ決まっています。800円のランチを頼んでいる人が、モバイルオーダーの画面で追加注文するかといえば——しません。

モバイルオーダーが客単価を上げる仕組みは、「追加注文のしやすさ」にあります。居酒屋やダイニングバーなら、テーブルにいる間にもう1杯、もう1品を気軽に頼める。その繰り返しが客単価を押し上げる。居酒屋がモバイルオーダーに向いている理由はここにあります。

一方、回転重視の業態では、お客さまが席にいる時間が短い。注文は入店時に1回だけで完結することがほとんどです。モバイルオーダーを入れても、追加注文が生まれる設計になっていないので、単価は動かない。

では、回転重視の業態はモバイルオーダーで得るものが何もないのか?——いいえ、そこが「残り半分の見落とし」です。

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「原価率が上がっている」本当の原因は売れ筋メニューにある

ここからが、今回の記事の核心です。

「売上は前年並みなのに、利益が出ない。原価率が悪化しているが、どこで上がっているのか分からない」——回転重視の業態でよくあるご相談です。

最初に確認したいのは、POSデータと仕入れ伝票の突合です。メニューごとの原価率を出してみると、思い込みと違う数字が出てくることがあります。

たとえば、こんな定食屋があったとします。一番出数が多いのは「日替わり定食(680円)」で、オーナーは「これが看板メニューで、一番利益を稼いでいるはずだ」と信じている。ところが仮に原価率が42%だとすると、1食あたりの粗利は約394円です。

一方、出数は少ない「揚げ物セット(980円)」の原価率が仮に28%なら、1食あたりの粗利は約706円。1食出るごとに、日替わり定食より約312円多く粗利が残る計算です。出数の多さだけを見ていると、こうした「儲け筋」を見落としてしまいます。

「売れ筋と儲け筋は、必ずしも一致しません。むしろ、回転重視の業態ほど『たくさん売れているから大丈夫』という思い込みが、原価率悪化の温床になりやすい。数字を複数の軸で見ないと、本当の儲け筋は見えてこないんです。」

ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所)

ABC分析で「儲け筋」を特定する手順

おすすめしたいのは、POSや注文システムの商品分析機能を使ったABC分析です。評価軸は「出数・売上・粗利・リピート率」の4つ。単純に売上金額だけでランキングする従来の方法とは、まったく違う景色が見えてきます。

チェックポイント①:出数だけで「売れ筋」を判断していないか

「日替わり定食が一番出る=これが主力」という判断は、出数という1軸しか見ていません。粗利額で並べ直すと、主力だと思っていたメニューが下位に並ぶことがあります。

✅ ポイント:出数・粗利額・粗利率の3つを同時に確認し、「出て、かつ残る」メニューを探すこと。

チェックポイント②:リピート率をメニュー別に見ているか

たとえば原価率が高めのメニューでも、それを目当てに再来店しているお客さまが多いなら、リピーターを生む集客力という観点では「戦略的に残すべきメニュー」と判断できます。

✅ ポイント:粗利率が低くても、リピート率が高いメニューは単純に削らない。集客コストとのトレードオフで評価する。

チェックポイント③:メニュー表の設計と注文の実態が一致しているか

よくあるのが、儲け筋のメニューがメニュー表の端に小さく載っているケースです。目立たないから頼まれない。頼まれないから「売れていない」と判断して、さらに隅に追いやられる——この悪循環が起きやすいのです。

✅ ポイント:儲け筋メニューは、モバイルオーダーの画面設計で「最初に目に入る場所」に配置する。

✓ ここまでのポイント

  • 回転重視の業態でモバイルオーダーが「単価を上げる道具」として機能しにくいのは、追加注文が生まれる設計になっていないから
  • 原価率悪化の原因は「売れ筋=高原価メニュー」にあることが多く、出数の多さが問題を見えにくくする
  • ABC分析を4軸(出数・売上・粗利・リピート率)で行うと、「削るべき」「残すべき」「育てるべき」メニューが明確に分類できる

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モバイルオーダーを「単価向上」ではなく「メニュー誘導」に使う

では、回転重視の業態ではモバイルオーダーをどう活用すればいいのか。

ポイントは、「追加注文を増やす」ではなく、「最初の注文を儲け筋に誘導する」という使い方です。

具体的には、モバイルオーダーのトップ画面に「本日のおすすめ」として儲け筋のメニューを大きく掲載し、写真と一言コメントを添えます。出数の多い定番メニューは「定番メニュー」として別カテゴリに整理。お客さまが画面を開いたとき、最初に目に入るのが粗利の高いメニューになる設計にするのです。

滞在時間が長い業態ほど効果が出ると言われるモバイルオーダーですが、回転重視の業態でも「初回注文の誘導」という使い方なら、粗利の改善に役立てられます。効果は、導入前後で儲け筋メニューの出数と1組あたりの粗利額を比べて確かめてください。

回転業態でも「数字で判断できる店」に変われる

回転重視の業態のオーナーが「うちにはモバイルオーダーは向かない」と考えるのは、無理もないことです。使い方の設計が間違っていれば、どんな道具も効かない。問題は、ツールではなく使い方の設計にあります。

そして、もう一点。原価率悪化の原因を「食材の高騰」だけに求めていると、打ち手が値上げかコスト削減しかなくなります。でも、ABC分析で儲け筋を特定し、メニュー設計と注文動線を変えることで、価格を上げずに粗利構造を改善できる可能性があります。

個々のメニューの原価率を下げなくても、儲け筋の売上比率が上がれば、結果的に全体の原価率は改善します。数字の動かし方が変わると、見える景色も変わります。

「回転で稼ぐ業態だからDXは関係ない」と思っていた方に、今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。自店の原価率悪化の原因がどこにあるのか、一度数字で確認してみてください。

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