こんにちは、ハワードジョイマンです。
「もう求人広告に疲れました。出しても応募がない。面接まで来ても採用基準に届かない。やっと採れたと思ったらすぐ辞める。これ、何度繰り返せばいいんですか」
飲食店経営者なら、この感覚に共感する方は多いと思います。努力の問題ではないんです。厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」では、有効求人倍率は飲食物調理従事者が2.21倍、接客・給仕職業従事者が2.31倍で、職業計の1.06倍を大きく上回っています。そもそも応募が来にくい構造になっているのです。
だから今日は、採用をがんばる話はしません。代わりに、「ホールスタッフ1名分の人件費は月いくらか」を一緒に計算してみて、その数字が何を意味するかを考えてほしいんです。
こんな方におすすめ
- ✅ 求人広告を出しても応募がこない状況に疲れている方
- ✅ ホールスタッフが1名欠けたまま数ヶ月が経過している方
- ✅ 人件費の実態コストをきちんと把握したい方
- ✅ 採用に頼らずオペレーションを回す仕組みに興味がある方
- ✅ 既存スタッフをもっと大切にしたいと考えている方
📋 この記事でわかること
- ホールスタッフ1名あたりの「本当の月額コスト」の計算方法
- 採用費・教育コストまで含めた「1人採用するとかかる総額」
- 省人化の仕組みで人件費を構造から変える考え方
- 浮いた原資を既存スタッフへ還元する方法

ホールスタッフ1名分、正直に計算してみる
まずここを、曖昧にしないでください。「時給いくらで週5日入ってもらってるから……」で終わっていませんか?
たとえば、こんな条件を想定してみましょう。
- 時給:1,200円(令和8年度の最低賃金の全国加重平均1,177円を少し上回る水準)
- 週5日・1日6時間勤務
- 月の労働時間:約130時間
これだけで月の賃金は約156,000円。
でも、ここで終わらないのが経営の現実です。社会保険の加入対象になる働き方なら、雇用保険・健康保険・厚生年金などの会社負担分が賃金のおよそ14〜15%乗ってきます。つまり月額で約178,000〜180,000円。
さらに、採用にかかった費用を在籍期間で割った月次換算額があります。たとえば求人広告に3万円をかけ、面接を3回して、ようやく1人採用できたとしたら——その人が6ヶ月で辞めた場合、広告費だけで月5,000円、面接の手間も含めればそれ以上になります。離職のたびにこのコストはリセットされます。
加えて、既存スタッフが新人教育に割く時間。この間、本来の接客が手薄になる機会損失まで含めると、ホールスタッフ1名を「採って、育てて、維持する」コストは月20万円を超えることも珍しくありません。
「そんなにかかってるとは思ってなかった」と感じた方も多いのではないでしょうか。
「採れない」のは努力不足じゃない。構造の問題です
飲食店の人手不足は、数字にもはっきり表れています。厚生労働省の「令和7年上半期雇用動向調査」では、「宿泊業,飲食サービス業」の欠員率は4.8%で、産業別で最も高くなっています(宿泊業と合算の数字)。
これは、あなたの店の魅力が足りないわけでも、時給が低すぎるわけでもありません。そもそも働き手の数が減っている地域では、どれだけ条件を整えても応募が来ないことがある。これは構造の問題です。
「採用に悩む経営者の方に、私がまず伝えることがあります。それは『採用をゴールにしない』ということです。人が来ないなら、来なくても回る仕組みに変える。これが今の飲食店にとって、現実的な答えの一つだと思っています」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所)
静岡県内はもちろん、北海道から沖縄まで、私が支援してきた飲食店を中心に833件以上のお店でよく見られたのは、「採用をがんばるほどに疲弊していく」というサイクルでした。
発想を逆転させる必要があります。「どうすれば人を採れるか」ではなく、「どうすれば今いる人数で、あるいは1人少なくても、同じ売上を出せるか」という問い方に変える。
✓ ここまでのポイント
- ホールスタッフ1名の「本当のコスト」は採用費・社保含めて月20万円近く、あるいはそれ以上になることもある
- 地方の人手不足は努力でカバーできる限界を超えており、構造問題として捉える必要がある
- 「採れない前提」でオペレーションを設計し直すことが、地方飲食店の現実的な生存戦略になっている
ホール1名分の業務を「仕組み」に置き換える
では、具体的にどうするか。
ホールスタッフが担っている業務を分解してみてください。大きくはこの3つです。
- 注文を取る(オーダーテイク)
- 料理・ドリンクを運ぶ(デリバリー)
- 会計をする(キャッシュアウト)
このうち「注文を取る」と「会計をする」は、お客さまのスマホに移管できます。モバイルオーダーシステムの導入によって、スタッフが席に行かなくても注文が入り、会計もセルフで完結する。
残るのは「運ぶ」と、もっと大事な「会話・気配り・ホスピタリティ」です。これは仕組みで代替できないし、すべきでもない。でも、注文業務がなくなればその分だけ、スタッフはお客さまと向き合う時間が増えます。
ここで重要なのは、「省人化=スタッフを減らす」ではないということです。1名少なくても回る仕組みを作り、「採用しなくてよくなった分のコスト」を既存スタッフへ還元する。時給に上乗せしてもいいし、インセンティブ設計でもいい。
「ホールが1名欠けたまま数ヶ月」という状態のまま疲弊し続けるより、この方が現実的です。
チェックポイント1:注文を取る業務にスタッフは何分使っているか
仮に1テーブルあたりの注文受付〜入力に2〜3分かかるとして、1日50テーブル回転する店なら、注文業務だけで毎日約100〜150分がスタッフの稼働に消えている計算になります。
✅ ポイント:この時間を接客・ホスピタリティに転換できれば、客単価と再来店率の両方に好影響が期待できます。
チェックポイント2:採用活動にかけているコストと時間を把握しているか
求人広告費・面接対応の時間・既存スタッフの教育負荷を合計すると、採用1名あたりの実質コストが想像以上に大きいことに気づきます。
✅ ポイント:その原資を「省人化への投資」に振り向けたほうが、中長期で利益に残る可能性が高まります。
モバイルオーダーを導入した現場から
モバイルオーダーの導入支援をしたお店からは、「注文点数がアップした」という声をいただいています。
これ、聞いたときに「なぜ?」と思いませんでしたか?
理由はシンプルで、お客さまは「スタッフを呼ぶタイミング」を気にせず、自分のペースで追加注文できるからです。「もう一杯頼もうか」と思ったとき、スタッフの目を探す手間がない。タブレットやスマホで即時に注文できる。これが注文点数の増加につながります。
つまり、省人化の仕組みは「人を減らすためのツール」ではなく、「お客さまの体験を良くしながら、スタッフの負荷も下げる」ための設計です。
「モバイルオーダーを導入するとき、よくこう聞かれます。『機械的になりませんか』と。でも現場を見ていると、逆なんです。注文の取りこぼしがなくなり、スタッフが余裕を持って動けるようになると、接客の質が上がる。笑顔が増える。お客さまとの会話が増える。仕組みが整うほど、人間らしい接客ができるようになるんです」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所)
省人化で生まれた原資を、既存スタッフへ
最後に、一番大事な話をします。
省人化によって「ホールスタッフを1名採らなくてよくなった」とします。月換算で20万円前後のコストが浮く可能性があります。この原資をどこへ回しますか?
答えは、今いるスタッフです。
時給を上げるだけでは辞め止まらない、という話は別の機会にしますが、「自分たちが頑張った結果が還元されている」という実感は、定着率に直結します。採用を繰り返すより、今いる人を大切にする方が、経営としてはずっと合理的です。
採用広告費・面接時間・教育コスト・離職によるロス——これらすべてを合計したとき、「省人化への投資」は決して高い買い物ではありません。
まずは現状の人件費と採用コストを正確に計算することから始めてみてください。数字が見えると、次の打ち手が見えてきます。
まとめ:採用をあきらめるのではなく、採用に頼らない設計へ
「求人広告を出したくない」という気持ち、私は否定しません。むしろ、そこまで追い詰められた経営者の正直な感覚だと受け止めています。
ホールスタッフ1名分の月額コストを計算すると、今回の試算では20万円前後になりました。その数字を前にして、「どうやって採るか」より「どうやってその業務を仕組みに変えるか」を考える方が、今の時代の飲食店経営には合っています。
モバイルオーダーの導入をきっかけに、省人化オペレーションを設計し、浮いたコストを既存スタッフへ——このサイクルを回せれば、採用に振り回されない経営に近づけます。
もしこの方向に興味があれば、まず現状の仕組みを一緒に整理するところから始めましょう。具体的なシステムの話や、導入後の定着支援まで含めてご相談に乗っています。お気軽にどうぞ。